【プジョー 308SW ハイブリッド 新型試乗】驚きの燃費、内外装、足回り。旨いとこをついてきた…中村孝仁

ディーゼルより240kgも重いのに驚きの燃費

内外装、足回りは良いところをついてきた

乗り出し約600万円はちょっと高いが…

プジョー 308SW GT ハイブリッド
プジョー 308SW GT ハイブリッド全 36 枚

システム自体は上級モデル『508ハイブリッド』と同じようだが搭載するバッテリーは508の11.8kwhに対して今回の『308SW GT ハイブリッド』の場合12.4kwhとほんの少しだけ大きい。

EV走行で到達できる距離は68kmとされていて、508の56kmよりはやはり長足を持つ。しかし、508ハイブリッドに乗った時も最大38kmしか走らなかったものが、今回は本来長足のはずが、満充電にしてもどうしても24km以上は出なかった(車載コンピューター上)。この辺りのからくりは正直言ってよく理解できない。まあ、68kmは電気だけで走れると思って購入すれば痛い目に合うかもしれない。

プジョー 308SW GT ハイブリッドプジョー 308SW GT ハイブリッド

とにかくプジョーのPHEVは今のところ、想像しているよりも電動での可能走行距離が短いということは確かである。ただ、今回びっくりさせられたのは燃費の良さだ。高速ばかり使えばすぐに電気を使い切って、ガソリンで動くから必然的に化石燃料の燃費としては悪くなる。逆にほとんど電気だけで走行を終了できる範囲内で走っていれば、抜群の値をたたき出すことができるということになってしまうので、ガソリンエンジンを搭載する電動車燃費は走る場所のさじ加減で如何様にも変えることができるということになるわけだ。

◆ディーゼルより240kgも重いのに驚きの燃費

プジョー 308SW GT ハイブリッドプジョー 308SW GT ハイブリッド

で、今回驚いたと書いたのは、借用している間に走った距離は約600km。そのうち半分は栃木県を往復した300km以上の高速区間があるからまあ5割を高速走行したと考えての燃費が、総平均で21.7km/リットルであった。因みに車両重量は1720kgあり、同じGTグレードのディーゼルと比較しても240kgも重い。ディーゼルのWLTC燃費が21.6km/リットルだから、ほぼそれに匹敵する。

そしてハイブリッドのWLTC燃費は17.5km/リットルだから楽々これを上回ったことになる。そして驚くのはここからで、市街地走行を中心に200km(正確には201km)走った結果の燃費は、何と30.3km/リットルに達した。というわけで、どちらに転んだところでガソリンの燃費は非常によろしいという結論になるのである。

とりたたて省燃費運転をしたつもりはない。そして前述したように電動走行可能範囲で帰宅して充電すれば凄まじく良い燃費をたたき出すことができるわけで、今回200km走った後にガソリンを満タンにしてもたったの7リットルしか入らなかった。つまり満タン方式で計算すると28.5km/リットルという燃費である。満タン方式と車載コンピューターの違いはあるけれど、やはり燃費は抜群だ。

いずれにせよディーゼルよりもさらに240kg重い原因は間違いなくバッテリーだから、この燃費をさらに良くしようと思えばより多くのバッテリーを積めばそれは実現できるが、正直あまり意味がないと思える。だからこの辺りが落としどころとしてはちょうど良いのではないかと思う。

◆内外装、足回りは良いところをついてきた

プジョー 308SW GT ハイブリッドプジョー 308SW GT ハイブリッド

次に内外装の作りだが、このところプジョーをはじめとしたかつてのPSA系のモデルは、俄然その内装のデザインセンスが良くなったと感じる。308でもアルカンタラ風のシートやインパネ素材など実に良いセンスだと思う。ひと頃自動車メーカーはパーツとパーツの隙間を極力小さくするいわゆるチリの減少に躍起になっていた時期があるが、今のプジョーはそうしたチリの大きさは特に内装ではそれなりにあるのだが、デザインセンスがそれを上回っていて、なかなか良いところをついてきていると思う。

足回りも同様だ。一時期はドイツ車の背中を追いかけて昔のフランス車が持っていたソフトな乗り味を捨て、ガチガチの足回りにした時期があったが、今はまたかつての猫足と言われたソフトな感覚がそこそこ残っているところに加えて、しっかり感というフレーバーが追加されている。これもなかなか旨い落としどころに落ち着かせている。これがプジョーの新たな足の方向性だとしたら、諸手を挙げて賛成できるものだ。

ただ、このクルマを手放しで褒めるつもりはまるでない。ダメなところは508でも体感した、回生ブレーキとメカニカルブレーキのやり取りが下手なところ。フットブレーキに足を載せて減速を始め、ほとんど停車の一歩手前までくると恐らくそこでメカニカルブレーキが選手交代するのだろうか、いきなりガツンと止まろうとする。この傾向は1年前に乗った508と何ら変わるところはなく、隣に運転にうるさいパッセンジャーが乗ろうものなら、「あんた運転下手ねぇ」と言われかねない。

プジョー 308SW GT ハイブリッドプジョー 308SW GT ハイブリッド

◆乗り出し約600万円はちょっと高いが…

このところ、モノの値段が上がり、ステランティスでは昨年1年で何度値上げしたかわからないほど値上げの連続。結果としてこの308SW GT ハイブリッドの値段は車両本体価格557万1000円。オプションはパールペイントとETCだけだから大したことはないが、それでも試乗車の車両価格は567万715円也。乗り出しは600万円の大台に突入するところまで来ている。受注生産だが、ガソリン仕様の一番安いアリュールの価格は341万6000円だから、200万円以上の差となる。ちょっと高い。

でも総じてこのクルマ、実に旨いところをついてきたモデルだと思う。

プジョー 308SW GT ハイブリッドプジョー 308SW GT ハイブリッド

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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