BYDを見ておいて損はない…東京オートサロン2023

BYD ATTO 3(東京オートサロン2023)
BYD ATTO 3(東京オートサロン2023)全 27 枚

千葉・幕張メッセで開催された東京オートサロン2023(会期1月13~15日)に、海外展開に意欲を燃やす中国の自動車メーカー、BYDが初めてブースを構えた。

ブースの主役は1月31日に発売されるコンパクトクロスオーバー『ATTO 3』。さらに今年中頃発売予定のサブコンパクトクラス『ドルフィン』、今年後半発売予定のDセグメントミッドサイズセダン『シール』も展示している。

「日本においては我々の認知度はほぼゼロ。何はともあれBYDというブランドそのものを多くの人たちに知っていただく機会を持ちたいというのが出展の動機でした。まずは見て、触れてもらうことでコミュニケーションを取ることが認知していただく第一歩と考えています」

とのBYD関係者の言葉どおり、3モデルはいずれも内外装を直にフルチェックできる状態で展示されていた。来場者の注目を最も集めていたのはすでに価格が公表されている(消費税込み440万円)ATTO3。最高出力150kWの電気モーター、総容量60.5kWh、使用範囲58.54kWhのバッテリーパック、ADAS(運転支援システム)標準装備というスペックは日産自動車『リーフe+』の好敵手。折しも日産は先般、リーフe+については100万円強の値上げを発表したばかりで、ATTO3とは約100万円の価格差が生まれている。コストパフォーマンス的には脅威だ。

が、クルマというものは価格だけで勝負できる商品ではなく、価値を認めてもらうには実使用時の使い勝手、保証、耐久性とリセールバリューなど、さまざまな要素が絡む。2025年までに販売拠点を100か所以上に拡充するというプランを発表していることからも、BYDにいつまでもマイノリティに甘んじている気はない。テスラでも苦戦する日本において3年間で顧客から普通に選ばれるブランドになるというのは新興メーカーとしてはかなりのチャレンジで、やれることは何でもやっていかなければならない状況。東京オートサロン出品もその一環と考えられる。

筆者が実物を目にするのはここが初めてだったが、これまで写真やムービーを見ることで抱いていた印象と実物とではかなり異なる。二次元で見た時は保守的でやや退屈なデザインのように感じられていたのだが、実物は非常にエモーショナルなデザインの質感を持っており、内外装を見ても遊びゴコロを素直に表に出した、新興メーカーらしいフレッシュさをたたえていた。最近、クルマのテールエンドの中央に車名を大書するのが流行っているが、ATTO3はじめBYD社のテールにはBYDのブランド名の由来である「BUILD YOUR DREAMS」のレターが装着されているのも新鮮に映った。

10年あまり前に北京モーターショーで同社の製品を見た時は性能、品質とも先進国の製品に遠く及ばない安物の半コピー車のようなクルマばかりという印象だったが、今回展示されている3モデルにその面影は皆無だ。BYD製品を魅力的なニューカマーと捉えるか、電気自動車としての長期使用の実績がまだない製品と捉えるか、はたまた昨今の世界情勢にかんがみて油断のならない国からの刺客と捉えるのか。受け取り方は人それぞれだろうが、会場で一瞥しても損はなかろうと思った次第だった。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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