マツダ『CX-5』は存続するのか? 『CX-60』登場で揺らぐラインアップを考察

ベストセラーカーをいきなりやめるのは考えられない

あらゆる点で『CX-60』を凌駕している『CX-5』

価格帯はオーバーラップしているが

マツダの結論はもう出ている?

マツダ CX-5 XD フィールドジャーニー
マツダ CX-5 XD フィールドジャーニー全 48 枚

縦置きエンジンのラージプラットフォーム群が誕生し、その第1弾としてSUVの『CX-60』がデビューした。マツダのSUV『CX-5』は果たしてCX-60に取って代わられてしまうのか?そんな疑問というかある意味不安あるいは心配をしているユーザーがいるのではないだろうか。

そんなわけで少しマツダの将来的なラインナップを考察しつつ、メーカーの話を聞いたうえで独自の考察をしてみた。

◆ベストセラーカーをいきなりやめるのは考えられない

マツダ CX-5 XD フィールドジャーニーマツダ CX-5 XD フィールドジャーニー

CX-5は昨年、アメリカ市場で15万1594台を販売したという(Automotive Sales Data&Intelligence調べ)。アメリカ・マツダにとってはベストセラーである。そして日本はというと、販売の詳しいデータはわからないが、マツダのベストセラーは『マツダ2』。そしてそれに次ぐセールスを記録しているのがCX-5である。つまり、2012年に誕生し2017年にモデルチェンジされて2代目に移行したCX-5は、依然として極めて堅調に売れているのである。

一方でアメリカ市場では『CX-50』が誕生した。このクルマはCX-5と同じプラットフォームやメカニカルトレーンを用いたクルマだ。そして今、北米マツダのSUVラインナップは『CX-30』、CX-5、CX-50、『CX-9』と揃うが、間もなくCX-9に代わる『CX-90』が誕生し、さらに2023年中には『CX-70』もデビューする。このCX-70は日本のCX-60のアメリカ版ともいえるモデルと言われ、こうなると二桁車名、即ち30、50、70、90が出揃うことになる。

マツダ CX-50マツダ CX-50

日本はどうか。現在は『CX-3』、CX-30、CX-5、CX-60、『CX-8』というラインナップだ。つまり二桁ネームは今のことろCX-30とCX-60のみだが、こうしてみてくるとマツダが二桁ネームに置き換え始めているということがわかる。北米市場はCX-30の登場でCX-3の販売を取りやめた。そしてCX-90の登場でCX-9の販売が終了するといわれる。

となるとCX-50が昨年誕生したのでCX-5の役目は終了ということになるのだが、この辺りを広報に聞いてみるとCX-5とCX-50はアメリカにおいては使われ方が異なり、CX-5は主としてセクレタリーカー(直訳すると“秘書のクルマ”)的な需要が高いという。つまり当分は併売だそうだ。そりゃベストセラーカーをいきなりやめるのは考えられないし、日本でもCX-60が出たからと言って横置きFWDのCX-5に取って代わるとも思えない。

◆あらゆる点で『CX-60』を凌駕している『CX-5』

マツダ CX-5 XD フィールドジャーニーマツダ CX-5 XD フィールドジャーニー

そんなわけだから、当面CX-5の販売は維持される、とみるのが妥当なのだが、最も信頼度の高いアメリカのAutomotive Newsによれば、やはりCX-3同様CX-5の販売は2023年末もしくは2024年初頭に終了するとしている。まあ、あちらは代わりとなるCX-50がデビューしているから問題はないと思う。

では日本市場にCX-50の導入はあるのか?それについてはCX-50は車幅が日本市場には適さないサイズなので、これを導入することはない。そう広報は説明する。しかし、そうなると日本ではCX-5の代わりとなるモデルがない。アメリカのCX-9にあたるモデルは日本ではCX-8だ。そしてアメリカのCX-70は日本のCX-60だ。となれば新しいCX-90の日本版がCX-80と呼ばれる可能性が高いのは十分に想像がつく。

ズバリ、CX-5は傑作車だ。今回改めて試乗してみてその思いを強くした。まだ初期的な未成熟な部分がCX-60には残っていて、トータルなバランス、スムーズさや静粛性など、どれをとっても今のところCX-5はCX-60を凌駕している。勿論製品が安定してくる1年後くらいにはこの関係は逆転すると容易に考えられるのだが、CX-5の強みは何よりもコストパフォーマンスの高さだ。

◆価格帯はオーバーラップしているが

マツダ CX-60 XD Lパッケージ(左)とXD ハイブリッド プレミアムモダン(右)マツダ CX-60 XD Lパッケージ(左)とXD ハイブリッド プレミアムモダン(右)

今回試乗した「フィールドジャーニー」にしてもディーゼルで、4WDでありながら車両本体価格は355万3000円。メーカーのオプションを加えても365万2000円で、あとはディーラーオプションとしてETCやフロアマットなどが装備されていたのだが、それでも極めてバリューフォーマネーである。

ベース価格同士で比較するとCX-60はCX-5よりも20万円少々高い。そしてCX-60の最上級バーションは「PHEV プレミアムスポーツ」の626万4500円である。CX-5の最上級モデル417万100円とはだいぶ構成レンジが異なるが、とりあえずCX-5ユーザーはほぼ取り込める価格レンジとされている。

一方で確かに価格帯はオーバーラップしているが、サイズ的には全長で165mm長く、全幅で45mm広いCX-60には手が出せないユーザーが少なからずいそうだ。かといってCX-30に格下げすると、サイズではCX-5よりも180mm小さく全幅でも50mm小さいから、やはりそちらへの乗り換えは辛いだろう。

◆マツダの結論はもう出ている?

マツダ CX-5 XD フィールドジャーニーマツダ CX-5 XD フィールドジャーニー

というわけで結論はやはりCX-5存続、もしくはこれに代わる同サイズのニューモデルが必要だということになる。改めて試乗してその手ごろ感や扱いやすさなど、今のベストバイのSUVの1台であることは間違いないと感じた。それにほぼ毎年商品改良を繰り返しクルマの熟成度も極めて高いから、市場での競争力も十分にある。

果たしてマツダの結論は?まあ、もう出ているのだろうが。

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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