【ロイヤルエンフィールド スーパーメテオ650 試乗】こだわり続けた空冷の味わい、だがクラシカルなだけじゃない…小川勤

超巨大市場が生み出すイージークルーザー

空冷エンジンを育み続けるロイヤルエンフィールド

インドの悪路で鍛えられた、乗り心地と走破性が魅力

ロイヤルエンフィールド スーパーメテオ650に小川勤が試乗
ロイヤルエンフィールド スーパーメテオ650に小川勤が試乗全 33 枚

◆ 超巨大市場が生み出すイージークルーザー

1901年からバイクを生産するロイヤルエンフィールドは、現存するバイクメーカーの中では最古のブランド。当初はイギリスのメーカーだったが、現在はインドのアイシャーグループの傘下としてバイクを生産。良き時代の英国スタイルを感じさせるバイクを中心にラインナップを拡大している。

スクーターなどを除いた中型セグメントとしては世界一の生産量を誇り、インドには2019年に完成した本社の他に、2012年と2016年に完成した2か所の工場を持ち、最大で120万台の生産能力を持つ。

プレゼンの規模もとても大きい。初日はホテルに巨大なステージを設置。2日目は砂漠の中に巨大なステージを設置。こんな大規模な試乗会はこれまでに経験したことがないプレゼンの規模もとても大きい。初日はホテルに巨大なステージを設置。2日目は砂漠の中に巨大なステージを設置。こんな大規模な試乗会はこれまでに経験したことがない

2015年頃から自社内でのR&Dを強化し、イギリスとインドにテクニカルセンターを設置。それまで外注に出していた仕事を内製する改革を行い技術を培っていった。イギリスのテックセンターは4人からスタートしたが今は180人に、インドは50人だったのが250人になり、R&Dの内製化だけでなくニューモデルが出るたびに品質も向上させている。

そして2021年あたりから日本での販売も強化。PCIがディストリビューターとなり、2022年からは販売台数を飛躍的に伸ばしている。

そんなロイヤルエンフィールドが2022年のEICMAでクルーザーである『スーパーメテオ650』を発表。その2か月後にインド北部の街、ジャイサルメールで開催された試乗会へ参加してきた。

◆空冷エンジンを育み続けるロイヤルエンフィールド

空冷エンジンならではのシンプルな車体構成。全体的に丸みを帯びたディテールが多く、それがトラディショナルな雰囲気を高める空冷エンジンならではのシンプルな車体構成。全体的に丸みを帯びたディテールが多く、それがトラディショナルな雰囲気を高める

空冷エンジンのみをラインナップするロイヤルエンフィールドは、今となってはとても稀有なメーカーである。様々なメーカーが排ガスや騒音規制に対応できず、空冷エンジンをディスコンにする一方で、ロイヤルエンフィールドは最新技術を投入してエンジンを開発。見た目はクラシカルだが中身は最新で、そのフィーリングはとても味わい深い。

スーパーメテオ650は、カフェレーサーの『コンチネンタルGT』やネイキッドの『INT650』と同様の648ccSOHCパラレルツインエンジンを搭載。クルーザースタイルに合わせて、ローギヤード化し、エアボックスも容量を拡大。270度クランクを採用する不等間隔爆発で、どの回転からスロットルを開けても気持ちよさを約束してくれる。

クルーザーの本質はスーパーメテオ650ツアラーにあるが、もう少しロードスター的な楽しみ方をしたいのであればスタンダードのスーパーメテオ650がオススメだクルーザーの本質はスーパーメテオ650ツアラーにあるが、もう少しロードスター的な楽しみ方をしたいのであればスタンダードのスーパーメテオ650がオススメだ

装備重量は241kgと排気量の割に重め。取り回しにミドルクラス的な気軽さはなく、ビッグバイク並みのコツが必要だ。跨るとポジションは足を前に投げ出すクルーザースタイルで、身長165cmの僕には少し大柄に感じる。

しかし、走り出すとエンジンからは豊かなトルクが溢れ出し、大柄な車体を軽やかに加速させる。信じられないほどタッチ良いミッションに感動しながら、すぐに3速、4速までシフトアップ。スロットルを開けるとエンジンが明確なグリップを後輪に与え、それと同時に心地よい鼓動を伝えてくる。

空冷648ccSOHCパラレルツインエンジンは、47ps/7250rpmを発揮。270度クランクを採用する不等間隔爆発で、気持ちよさとトラクションの良さだけでなく、スペック以上の力強さを約束する空冷648ccSOHCパラレルツインエンジンは、47ps/7250rpmを発揮。270度クランクを採用する不等間隔爆発で、気持ちよさとトラクションの良さだけでなく、スペック以上の力強さを約束する

味わいや鼓動にフィーチャーしがちな空冷パラレルツインエンジンだが、高速道路では力強さを発揮。6速固定のまま、100km/h、120km/hと様々な速度からスロットルを全開にしてみたが、どの速度域からでも決して軽くない車体を力強く加速させていく。一般道において排気量による物足りなさを感じることは皆無。ライダーが欲しい加速を必ず提供してくれる。なんて頼もしいのだろう。

インドの路面は砂が浮いていたり、突然大きなギャップがあったりするのだが、そんなシーンでもサスペンションの路面追従性はとても良い。今回は2日間で370kmほど走行したが、肉厚なシートと合わせて乗り心地はとてもよく、お尻が痛くなることはなかった。

ブレーキは主にリヤで制動することが多く、その時のコントロール性はとても高い。急な動物の飛び出しや、砂の浮いた路面で介入してくるボッシュ製ABSの作動性も良好で、インドの過酷なシーンでしっかりと作り込まれているのが伝わってくる。

ロイヤルエンフィールド初の倒立フロントフォークを採用。ショーワ製のビッグピストンフォークで大きな路面のギャップを超えても底付きしたりしないのが良い。意外とスポーティな味付けが施されているロイヤルエンフィールド初の倒立フロントフォークを採用。ショーワ製のビッグピストンフォークで大きな路面のギャップを超えても底付きしたりしないのが良い。意外とスポーティな味付けが施されている

◆インドの悪路で鍛えられた、乗り心地と走破性が魅力

また、スーパーメテオ650のために作られたシアット製のタイヤも乗り心地とグリップを両立。さらにロイヤルエンフィールド傘下であるハリスパフォーマンス製のしなやかなフレームと併せて、クルーザーというよりはロードスター的なコーナリングを楽しむことができる。このあたりは長年フレームのスペシャリストと活動してきたハリスの上手さだ。

パワーや電子制御よりも昔ながらのバイクらしさを大切にするロイヤルエンフィールドのバイク作り。それはスーパーメテオ650でも同様だった。開発陣は皆「アクセッシブル」という言葉を多く使っていたのが印象的で、これはアクセスしやすい、利用しやすいという意味。

初めて乗るバイクなのに、どこにも違和感や不安がないのが近年のロイヤルエンフィールドの特徴だ。そんなバイク作りはクルーザーになっても変わらない。ライダーに身近に寄り添うスーパーメテオ650は、日本でも多くのライダーを笑顔にしてくれるに違いない。

◆長距離移動メインなら「ツアラー」がおすすめ

ウインドスクリーンとシーシーバー付きシートの付いたスーパーメテオ650ツアラー。長距離移動時やパッセンジャーの疲労を軽減してくれるウインドスクリーンとシーシーバー付きシートの付いたスーパーメテオ650ツアラー。長距離移動時やパッセンジャーの疲労を軽減してくれる

スーパーメテオ650はシンプルな「スタンダード」と「ツアラー」の2バリエーションを用意。スーパーメテオ650ツアラーは巨大なスクリーンとシーシーバー付きのシートを装備する。

シールドは80km/hを超えたあたりから確実に有効で、風圧の影響がなくなるため上半身と腕を常にリラックスしていられる。そのため自然と下半身でバイクをホールドすることができ、ライダーとバイクの一体感も高まり、さらに無駄な力が入らなくなるため疲労感が全然違ってくる。

シーシーバーも実用性に優れ、カメラマンを何度も乗せて走ったが、聞いてみるとかなり頼れるとのこと。高速道路の移動やタンデムツーリングを楽しみたいならツアラーを選ぶのが良いと思う。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★★

小川勤|モーターサイクルジャーナリスト
1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。

《小川勤》

モーターサイクルジャーナリスト 小川勤

モーターサイクルジャーナリスト。1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。

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