SDVは当たり前になっていた「現実的な未来の車の発表と周辺要素技術」…日本アイ・ビー・エム 川島善之氏[インタビュー]

SDVは当たり前になっていた「現実的な未来の車の発表と周辺要素技術」…日本アイ・ビー・エム 川島善之氏[インタビュー]
SDVは当たり前になっていた「現実的な未来の車の発表と周辺要素技術」…日本アイ・ビー・エム 川島善之氏[インタビュー]全 1 枚

もはやSDV(ソフトウェアデファインドビークル)は未来の自動車として、進むべき方向性や概念ではなくなりつつある。だからこそCES2023では、「コンセプトや夢の技術ではなく、より現実的な発表がなされていたことが特徴的だった」と日本アイ・ビー・エムでIBMコンサルティング事業本部に籍を置き自動車産業担当CTOを務める川島善之氏はふり返る。

「今年のCESでSDVに関する重要な発表は10数本ほどあったと考えています。SDVとは何か?ではなく、もはや当たり前の存在になりつつある。実現に向けて具体的な周辺要素技術が出揃ってきました」(川島氏。以下同)

◆「ナノ衛星」を活用したダイナミックマップとSDV

CES2023ではソニー・ホンダの発表した「アフィーラ」が大きな注目を集めた一方で、ソニーには他にも見るべき重要な展示が多々あったという。その最たるもののひとつとして、川島氏が注視すべきと指摘するのが「ナノ衛星」だ。

「ざっと50センチ四方ほどに収まるほどの、コンパクトな衛星です。例えばですが、イーロン・マスクがスターリンクで、あるいはジーリー(吉利集団)が作ろうとしているネットワークに対抗することができます。この様な要素技術について、ユースケースとコストは明確にしていく必要はありますが、自前のネットワークで例えば一般道自動運転のための地図生成を実現していくことが、理論的には可能になります。

自動運転下では、車はLiDARなどでセンシングして状況を認識して車載判断して走るようになる。とはいえ地図は、重要で走行計画の前提を絞り込むことで計算量を削減し、また先の道路状況に応じた快適な運動量計算ができることになります。これに加えて、通信で従来通りの道路地図やルート情報をやりとりするだけでなく、一時的な標識や道路工事、前方の障害物といった動的状況を加えることで、より安全で安心で快適な走行ができるようになります。いわゆる「ダイナミックマップ」です。

「このダイナミックマップは、一般道地図生成という課題に加えて進んでいます。また、一般道地図生成について、TOMTOMのようにオープンソースの地図会社と連携して進めている新しい動きがあります。

一方、冒頭の当たり前になったSDVですが、SDVという定義はどうもOEM各社、パーツサプライヤー、半導体メーカー各自定義していて、明確にこれという固定された定義はないです。あえてSDVという手段がもたらす価値を集約すれば、ユーザー側にはアップデートを通じて車のライフサイクル中に継続して新しい価値を享受できること。またクラウドでできることが増え、車載ECUだけでは実現されなかった高度なサービスが提供されることが挙げられます。技術面では、クルマの電動化、機構の単純化との相乗効果で メーカーの側にはハードウェアの交換が容易で、開発効率も上がり、生産効率も利益率も向上が見込めることにつながります。最後にビジネス面では、ユーザーに車のライフサイクル中に継続して新しい価値を享受することから メーカーの側には、新たな収益機会が生み出せることになります」

◆SDVは各社が個別にやっていける時代ではない

川島氏は、逆に自動車産業界の各プレーヤーでSDVの捉え方が異なるからこそ、欧米ではSDVのソフトウェア・プラットフォームの標準化の動きが加速しており、実際にデータフォーマットとして実装される段階に入ってきたと指摘する。

「ブラックベリー社がIVYというデモを展示していました。これは、インカーコマースです。ここに、車両データフォーマットの標準化作業を進めているCOVESAのVSSフォーマットを採用していました。まだ、製品まで至っていないそうです。今回 VWグループやダイムラーやGM、ステランティス等が製品プロトタイプを発表しています。これらは、コンセプトではなく2026年頃の市販モデルと推察しています。これまで車載E/Eやコネクテッドサービスは、OEM各社が独自に進めていました。しかし、各社で莫大な投資を行なって各社固有のSDVを作ることには、無駄がありやっていけるような時代でなくなってきており、この危機感から欧米ではある種のコンセンサスがまとまりつつある様に見えます。この1例かと思います。」

加えて、注目すべき要素技術としてAR(拡張現実)技術が挙げられるという。

「バーチャルやメタバースといった仮想空間を、どう操作するか、というテクノロジーですね。ソニーはゲーム性のある展示でした。手首など関節に装着したセンサーを通じてアバターを操作するのですが、アバターが装着した人のダンスの動きをきわめて滑らかに再現していました。これらが車内検知に用いられてSDV時代の車内識別だけではなく 操作インターフェイスになる可能性もあります。」

◆現実的な未来のクルマの発表と周辺要素技術

無料オンラインセミナー「『CES 2023』テクノロジー・トレンドとモビリティーの未来」は2月16日に開催。川島善之氏は「現実的な未来のクルマの発表と周辺要素技術」をテーマに登壇する。SDVという近未来の存在だったものが、ひとつひとつの要素技術によって現実に肉づけされていくプロセスを推し量る上で、またとない機会といえるだろう。

セミナー申込締切は2月15日。詳細・お申込はこちらから。

《南陽一浩》

南陽一浩

南陽一浩|モータージャーナリスト 1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

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