全固体は?コストは?OEMの戦略は?バッテリーから考える自動車産業…エンビジョンAESC 野田常務執行役員[インタビュー]

全固体は?コストは?OEMの戦略は?バッテリーから考える自動車産業…エンビジョンAESC 野田常務執行役員[インタビュー]
全固体は?コストは?OEMの戦略は?バッテリーから考える自動車産業…エンビジョンAESC 野田常務執行役員[インタビュー]全 1 枚

リチウムイオンバッテリーに代表される高性能二次電池は、再エネや電力供給の安定化、エネルギーストレージとして注目される。EVにおいては性能を決める要であり、OEMのパワーバランスの鍵を握るとも言われている。

エンビジョンAESCはリチウムイオンバッテリーの研究開発・製造において国内屈指の企業だ。同社常務執行役員 経営企画担当 野田俊治氏がグローバルでのビジネスおよびR&D戦略について講演を行う。日本電動化研究所 和田憲一郎氏がモデレートする【EV海外OEM・部品メーカーセミナー】第3回 エンビジョンAESCの戦略にゲスト講師として登壇する。

セミナーに先立ち、その概要とみどころを野田氏に聞いた。リチウムイオンバッテリー市場では、CATLやBYDなど中国勢が圧倒的な存在感を示している中、10年以上重大な発火事故を起こしていない品質と信頼性を強みとするエンビジョンAESCの戦略を探る。

■バッテリーはカーボンニュートラルのキープレーヤー

課題や逆風がある中、EV市場、バッテリー市場は世界的な急成長を遂げている。背景には環境問題、カーボンニュートラルへの対応がある。脱炭素の道筋のひとつがEVにあることはいうまでもない。これは世界的な合意事項であり、国レベルでも企業レベルでも方針をだし、方策を進めているところだ。

グローバルのバッテリー市場について、野田氏は次のように見ている。

「EV市場で立ち上がりが早かったのは中国。脱炭素、脱内燃機関を経済発展、工業国化のドライバーとして国策で進めたこともあり、OEM、バッテリーメーカーともに成長している。EUもバッテリー産業の重要性は認識しており、域内での地産地消や環境政策についてのレギュレーションを整備しながら、産業育成とサプライチェーンの確保に動いている。EUもまた産業政策の中にバッテリー産業を含めている。北米はバイデン政権で進める環境政策が対中国政策に後押しされる形で進んでいる。結果としてEVおよびバッテリー市場の育成・拡大政策につながっている。日本は、経済産業省が各国のレギュレーションや動きを調査しながら、日本のサプライチェーン強化の方策を検討している。すでに補助金・助成金については手を打っており、人材育成プログラムもスタートした。2030年には国内のバッテリー製造を年150GWhまで拡大するプランを立てている。」

各国とも技術革新と政策面の整備の両輪でバッテリー市場を広げていく戦略だ。

■課題も多いバッテリー市場をどう育てていくか

市場は拡大傾向にあるが、リチウムイオンバッテリーについては課題や問題も指摘されている。まず、世界のバッテリー生産のおよそ7割が中国で行われていること。レアアースの資源確保の問題などがリスク要因として語られている。

じつは、バッテリー関連の資源は石油以上にやっかいな存在。バッテリー材料製造の工程は大きく2つに分けられる。資源の採掘と精錬だ。天然資源であるレアアースの産地は世界中に分散している。南米やオーストラリアのリチウム、アフリカコンゴのコバルトなど複数産地の確保が必要だ。精錬は大量の硫酸を使うなど環境負荷が大きい作業だ。これまで規制や法律の厳しい先進国より、規制や法整備が緩く、それを受け入れる余地がある国、新興国に集中しがちになる。現在、中国がバッテリー大国になれたのは、世界の精錬需要を受け入れられる国だったからという理由もある。」

だが、各国、各企業もこのような現状をよしとは考えていない。

「EUやアメリカはEU圏、北米に精錬工場の誘致を進めている。自国だけでなくFTAパートナーなど同一経済圏との連携もしている。バッテリーの地産地消は、単に生産拠点をつくるだけでなく環境負荷やカーボンニュートラルといった対策もセットとなる。資源枯渇や人権問題については、コバルトフリーや新素材開発によって、脱ニッケルリッチバッテリー、次世代バッテリーの研究も進めている。

日本は、バッテリー工場の国内誘致の動きは活発ではない。エンビジョンAESCは、新素材、新型バッテリーの研究に力を入れている。全固体電池や次世代バッテリーへの貢献、北米やEU他での生産拠点の増設・拡大も進めている。日本はリサイクル技術が高いので都市鉱山の活用という道もある。バッテリーが増えてくればパックやセルの再利用のみならず、リチウムなどのレアアースの再利用が進む可能性がある。」

■製造設備や実装技術が日本の強み

グローバルでの生産体制を整えるというのは、エンビジョンAESCの戦略の柱のひとつでもある。これは、世界で進む地産地消の流れを受けるものだが、産業が特定の国や資源に依存しすぎないようにする目的にもかなうものだ。自然災害、政情不安など地政学的なリスクが無視できない現在、はずせない戦略だ。

しかし、現地生産、現地工場が進むと輸出産業にとってはマイナス面もある。野田氏は、サプライチェーンとともに改革、ビジネスを進めることも重要だという。

「バッテリー製造のサプライチェーンは、素材メーカー、生産設備、加工技術、リサイクル技術など多岐にわたる。たとえば海外に工場を展開するとき、そのサプライチェーンは現地企業の他、日本のパートナー企業との連携も可能と考えている。バッテリーのセルやパックを作る製造設備技術、素材や部品の加工技術は日本企業が得意とするところだ。リサイクル技術にも定評がある。」

同社のバッテリーは、開発プランでは現在より2世代先までのロードマップを敷いているそうだ。また、これまで12年以上にわたって重大事故ゼロという信頼性を誇るなど、技術力も高い。セミナーでは、今後の技術や工場展開など自動車業界としてもはずせない情報が得られるはずだ。

野田氏が登壇する【EV海外OEM・部品メーカーセミナー】第3回 エンビジョンAESCの戦略は2月20日開催。
詳細・お申込はこちら。

《中尾真二》

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