【スズキ アルト 3600km試乗】リッター40kmも!? 経済性の高さは本物だ[後編]

スズキ アルト HYBRID Xのフロントビュー。桜島をバックに記念撮影。
スズキ アルト HYBRID Xのフロントビュー。桜島をバックに記念撮影。全 28 枚

スズキの軽ベーシックカー『アルト』での3600kmツーリング。前編「乗り心地に全振りした、軽ベーシックの新境地」では主にそのシャシー性能について語った。後編はパワートレイン、居住性、ユーティリティなどについて述べようと思う。

◆人知れず頑張っているISG

スズキ アルト HYBRID Xのリアビュー。周防灘をバックに記念撮影。スズキ アルト HYBRID Xのリアビュー。周防灘をバックに記念撮影。

アルトのエンジンは旧型の第8世代から継承した「R06A」型(46ps/5.6kgm)、2019年の現行第2世代『ハスラー』から展開が始まった新世代の「R06D」型(49ps/5.9kgm)の2種類。どちらもISG(エンジンスターターと発電機を統合したユニット)とリチウムイオン電池からなるエネルギー回生機構を持ち、前者はモーターアシスト機能のない「エネチャージ」、後者はISGが駆動力アシストも行うパラレルハイブリッドである。

まずは動力性能について。ロードテスト車「HYBRID X」FWD(前輪駆動)のエンジンはR06Dのほう。49psはトップランナーのホンダ「S07B」自然吸気(58ps)に比べると9ps、15.5%ものビハインドだが、車両重量が710kgと軽量で、パワーウェイトレシオはS07Bを積むホンダ『N-ONEオリジナル』(車両重量840kg)と奇しくも同数値の14.5kg/ps。実際に走っても低中速域においては大変活発な走りを見せた。

最も適合性が高かったのは市街地走行。車体の軽さがモロに奏功する感じで、ブレーキをリリースしてちょっとスロットルを踏むだけでふわっと走り出し、そのまま目標速度まで痛痒感なく到達する。加速が足りず踏み増して今度は逆にオーバーシュートといった軽自動車にありがちな動きが出にくく、ストレスフリーの気持ち良さがあった。このあたりは旧型第8世代の良さをそのまま引き継いでいるという印象だった。

バイパスや高速においても80km/hくらいまでの加速力はイメージよりずっと速い。軽く登り勾配がついた高速道路の本線車道への流入でも第1走行車線の速度くらいまで十分に加速し、無理なく合流できる。ただしそこから上の速度域では加速力はガックリと落ちる。クルーズをストレスなくこなせるのは100km/hくらいまでで、実測120km/h(メーター読み127km/h)近辺では相応に苦し気になる。

後席からダッシュボードまわりを撮影。シンプルで好感が持てた。後席からダッシュボードまわりを撮影。シンプルで好感が持てた。

GPSロガーで実速度ベースの加速タイムを計測してみたところ0-80km/h加速については計測値が10秒6。このタイムはかなり優秀で、58psエンジンを積むホンダ『N-ONE』の10秒8を上回り、筆者が過去に計測した自然吸気の軽自動車としては最速。妙に速い気がすると思っていたが、数字の裏付けを見て納得した次第だった。一方、エンジンパワーがモノを言う80-100km/hの加速タイムではN-ONEに大きく逆転を許した。こちらも体感とほぼ一致する納得の結果であった。

このパワートレインは前述のようにISGが減速エネルギー回生とモーターアシストを行うパラレルハイブリッド。ISGの能力は最高出力1.9kW(2.3ps)ときわめて小さく、普通に乗っているぶんには「あっ、ハイブリッドだな」と意識させられるような曲面は皆無である。が、ヘッドアップディスプレイにタコメーターを表示させておくと、緩加速やクルーズ時に体感よりエンジン回転数が低いことが頻々とあり、それによってアシストの存在を認知できる。

2.3psという数値だけを見るとモノの役に立たんだろうという印象が先に立つが、軽量で走行抵抗が小さいアルトが低中速での巡航に必要とする出力はせいぜい5ps程度と考えると、最大でその半分近くをISGが受け持つことになる。緩加速の10psでも4分の1近い――と思って耳をすますと、ISGがキュンキュンと小さくうなっている音が間断なく聞こえる。人知れず頑張っているのだ。エンジン回転数が低めに抑えられていることは、静粛性の向上にも寄与していた。

◆リッター40kmも!? 経済性の高さは本物

ドライブの最後の市街地走行の平均燃費計値。リッター200円時代を迎えても自由な旅を続ける気にさせられる経済性の高さだった。ドライブの最後の市街地走行の平均燃費計値。リッター200円時代を迎えても自由な旅を続ける気にさせられる経済性の高さだった。

燃費はロングラン、市街地ともライバルを寄せ付けない素晴らしさだった。まずは満タン法による実測燃費を列記してみよう。

■往路および鹿児島県内
1. 東京・葛飾~奈良・天理 (553.1km) 25.1km/リットル
  新東名の実速度120km/h(メーター読み127km/h)クルーズを挟む。平均車速高。
2. 奈良・天理~福岡・田川 (665.3km) 28.3km/リットル
  夜間走行。阪神高速、山陽道など約200kmの高速を含む。平均車速中庸。
3. 福岡・田川~鹿児島 (340.8km) 22.9km/リットル
  うち約100kmが九州北部の山岳路。約160kmが九州・南九州道。終始タフな走り。
4. 鹿児島市および鹿児島近郊 (504.6km) 21.9km/リットル
  市街地走行約250kmは平均車速15km/hと劣速。高速約100km、郊外路約150km。

■復路
5. 鹿児島市~福岡・小倉 (357.3km) 28.0km/リットル
  一般道比率8割、高速1割、山岳ルート1割。平均車速中庸。
6. 福岡・八幡~兵庫・豊岡 (524.2km) 26.6km/リットル
  夜間の山陰道を速い流れに乗って走った。平均車速高。
7. 兵庫・豊岡~福井・小浜 (133.1km) 29.2km/リットル
  すべて一般道。平均車速低。
8. 福井・小浜~愛知・西尾 (188.4km) 40.1km/リットル
  すべて一般道。国道23号線名古屋市区間は帰宅ラッシュ。
9. 愛知・西尾~神奈川・川崎 (320.2km) 30.9km/リットル
  静岡の袋井~清水間約70kmは東名高速。標高800mの箱根峠越えで関東平野へ。

ロングツーリングの場合、高速だろうが一般道だろうがチンタラ走っているといつまでもウェイポイントや目的地が近づいてこないので、燃費ばかりを気にしてはいられない。しっかりしたペースで走る必要がある。アルトはゆるいドライブフィールのため比較的のんびりとドライブしたほうではあったが、それを勘案しても過去にロングドライブを行った数々のクルマの中で燃費性能はブッチギリのトップという感があった。

区間燃費を見ればおわかりいただけるだろうが、とくに燃費値が上がったのは帰路の後半。第7レグ以降はそれまでと運転パターンが少々違っていた。前述のように第9世代アルトは車重が軽いため、中低速ではスロットルを薄踏みするだけですいすいとスピードが乗る。発進加速のさい、いきなりぐーんと飛び出そうとせずモーターアシストを生かしてゆるゆるとスピードを乗せると、20km/hあたりで変速機のロックアップクラッチが作動する軽いショックが感じられる。その時点からスロットルの踏み込みを深めるようにする。ツボがわかれば誰にでも実践可能なレベルの簡単なテクニックだが、それだけで燃費を大きく伸ばせることがわかったのだ。

第8レグはエコランの忍耐力を極度に欠く筆者にとってある程度まとまった距離を走った燃費として初めてのリッター40km超え。と言っても、エコランにシャカリキになって出した数値というわけではない。海沿いの福井・小浜から山を越えて琵琶湖畔に達し、そろそろ関ヶ原への長い下り坂に差し掛かろうかというところで平均燃費計が30km/リットルを大きく超えているのを見て、初めてエコランを意識。

とはいえ後続車の迷惑も顧みずトロい運転をしたわけではなく、やったのは関ヶ原から伊勢湾沿いの国道23号線まで信号の少ない揖斐川河川敷道路を走ったことと国道23号線バイパスにおいては普段と異なり遅い流れのほうに乗って走ったことくらい。名古屋の港湾部においては30分ほど夕刻ラッシュの渋滞に巻き込まれるといったアゲインストもあった。最初からエコを意識し、渋滞が発生する時間帯を避けたりしていればもっと良い数値を出すことも可能だっただろう。

西郷隆盛が愛した鹿児島・日当山温泉にて。西郷隆盛が愛した鹿児島・日当山温泉にて。

と言っても、さすがに最初は本当かと疑った。アルトの平均燃費計は確度が高めで、その表示値からも実測値は妥当なものではあったし、揺すっても揺すってもこれ以上入らないという状態までガソリンを入れもしたが、少量給油ゆえのエア抜けの甘さなどで水増しされているのかもしれない。ということで、次の区間で妥当な燃費を記録できるかどうかをみるまで判断を留保することにした。

エコランの緊迫感から開放されたドライブはさすがに気分がいい。静岡の袋井まではよく整備された国道23号線と1号線のバイパスを走り、静岡の袋井から清水までは東名高速。三島と神奈川の小田原間は標高約800mの箱根峠越え。小田原からは西湘バイパスと一般道を通って川崎で給油してみたところ、結構な平均車速であったにもかかわらず実測燃費は30.9km/リットルで、平均燃費計値とほぼ一致していた。過度にスローなドライブをせずとも、空いた郊外道ロングランであればリッター40kmも非現実的な数値ではないという確信を抱いた次第だった。

往路の九州路の燃費値が低いのは燃費値を落とすような走り方をわざとしてみたことによるもの。鹿児島エリアの燃費値が振るわないのは市心部は渋滞発生が全国主要都市ワーストの称号を頂戴したほどの平均車速の低さ、市心部を外れても海沿い以外は標高差100mから200mのアップダウンが連続するという鹿児島市の特殊事情によるところが大きい。ちなみにドライブの最後、川崎から東京・浜松町まで一般道を走ったときの平均燃費計値は27.5km/リットルだった。

ドライバビリティの面ではハイブリッドらしさを体感することは皆無に近いが、経済性の面では想像以上のメリットがあった。実はアルトのテストドライブから数か月を経たタイミングで同じパワートレインを積んだ『ワゴンRスマイル』でもロングドライブを行っているが、アルトのドライブでどう走れば効率がいいかを掴めていたことから、車重870kgのスライドドア装備トールワゴンとしてはこれまた望外に素晴らしい燃費値を記録した。R06Dハイブリッドの経済性の高さは本物と言っていいだろう。

◆シート、居住性、ユーティリティは

ドア開放の図。開口面積、開放角とも十分だ。ドア開放の図。開口面積、開放角とも十分だ。

新車としては最低価格帯のバジェットカーであるアルト。主用途はあくまでタウンユースであり、ロングランのために作られているわけではない。シートアレンジや室内装備もすべて近距離ドライブにターゲットを合わせたものとなっており、遠距離ドライブのことはほとんど考慮されていない。というか、そんなものを装備する余裕があるならそのコストをカットする、もしくは近距離の使い心地をより良くすることに振り向けるという開発ポリシーを貫いているように感じられた。

前席はシートバックとヘッドレストが分離していない、コスト的には最も安くすむ形式のものである。特徴としてまず印象的だったのは、座った時のファーストタッチが大変柔らかいこと。表皮の下のウレタンは低反発タイプで体をふわっと受け止めるような感触。スポーツシートのようにギプスで体を固定するようなゴツッとしたところは皆無だった。

ウレタンの支持の弱さがネガティブに作用する前に目的地に達してしまう短距離であればこのシート、ベーシックカーには十分すぎる心地良さだ。見た目は質素だが違和感が本当に少なく、体によくフィットする。では長距離ではどうか。連続運転時間が長くなるにつれ、体重が強くかかる大腿部を中心に血の流れが悪くなるような重々しさが生じてくるのはたしかにマイナス点だ。が、これをもって長距離はダメと断じられるかと言うと、そうでもないところがアルトの面白いところだ。

機能的には至ってシンプルだが座面、シートバックとも形状が良く、ホールド性に優れる点は設計者の良心を感じた部分だ。結果、クルーズ時の横揺れや山岳路のコーナリングなどで体に横Gがかかっても体を突っ張らせてその力に抵抗する必要がない。シートと体の接触面は長時間連続運転に弱いが、体全体の疲労蓄積は意外なくらいに少なくてすんだ。疲れてきたら道すがら面白そうなものをちょっと見物しつつ休憩するという旅のスタイルであれば、そのたびに血流が回復してリフレッシュできた。短距離用シートでありながら東京~鹿児島間の移動において疲れが案外少なくて済んだゆえんである。

フロントシート。柔らかいタッチが大変気持ち良かった。フロントシート。柔らかいタッチが大変気持ち良かった。

柔らかいシートの意外な効能として、車中泊への適性が高かったことが挙げられる。と言っても、ヘッドレスト一体型のシートゆえフルフラットにはできない。平らでなければ寝られないという人にはハナから向いていない。が、シートを倒せばそのままコロッと寝ることができてしまうラフなタイプであれば、このシートはとても寝やすい。柔らかい座面やシートバックは体重で自然と凸凹が浅くなるし、ヘッドレスト部がそのまま柔らかい枕のような機能を果たす。筆者が車中泊を試したときはスマホの目覚ましをかけておかないと寝過ごしそうになるくらいであった。

後席は座面、シートバックともに平板であるなど前席と比べてもさらに作りが簡素。こちらは名実ともに長距離には向いておらず、短距離専科という感が強い。ただ、前席とのシートピッチは非常に長く、膝元空間は文字通り広大。そんな着座姿勢を推奨するわけではないが、大人が足を組んでもスペース的に余裕があるくらいである。

後席の乗降性の良さもアルトの美点。近年はスライドドア車全盛でスイングドア車は脇役に追いやられているが、乗降性は一方的にスライドドア車が優れているというわけではなく、スイングドア車にもそれなりの良さというものがある。スライドドア車はいったん車内に乗り込んでからシートにお尻を向けて座るという2アクションが必要だが、ドア開口部にシートの座面がかかっているスイングドア車は着座しながら腰を回せばワンアクションでそのまま車内に収まる。

ドア開口部の前後長にゆとりがあるのもスイングドアの良い部分で、スライドドア車で最も間口が広い日産『ルークス』が65cmであるのに対し、アルトは実に80cmもある。心配なのは駐車場における隣のクルマとの干渉だが、車幅の狭い軽自動車はその度合いが小さいためドアを大きく開けやすい。鹿児島エリアでは筆者の親を含め何人もの高齢者を乗せる機会があったが、乗り降りのしやすさについてスイングドア車を見直す声が多々聞かれた。

リアドア開口部の上端は十分に高く、80㎝に及ぶ開口部の前後長とあわせて乗降性は非常によかった。リアドア開口部の上端は十分に高く、80㎝に及ぶ開口部の前後長とあわせて乗降性は非常によかった。

ゆとりある室内空間に圧迫される形で荷室は非常に狭く、奥行きは荷室フロアで42cmしかない。この点もタウンユース主体というコンセプトが貫かれた部分で、ロングランにおいては荷物の積載力不足を感じることも多いだろう。後席のシートバックを倒せば荷物はいくらでも載せられるが、左右分割可倒式でないため2名乗車or4名乗車の二者択一に迫られる。ただし後席のフロアの余裕にゆとりがあるため、安全性を考慮して固いものを荷室に、ボストンバッグのような柔らかいものを床や座席にという積み方をするなら3名乗車+大荷物という使い方も可能。このあたりは使い方の工夫次第といったところだろう。

◆パーソナルモビリティのセーフティネット的なクルマ

タウンユース専科という性格づけの超低価格車であるアルト。それであえてのロングドライブをやってみたところ、思いのほか気持ち良く走れてしまったという物語りであったが、それは高価なクルマと同等機能があるというわけではない。価格が安いのだから当然いろいろな制約がある。が、ユーザーが知恵を使えばその差を詰めることはできるし、タウンユースという枠を大きく超えて使い倒すこともできる。そのさいにユーザーのカーライフをよりよいもの、より低コストなものにするための資質、たとえば乗り心地、静粛性、燃費、整備・修理費用の低廉さといったものについては素晴らしいものを持ち合わせている、というのが率直な試乗後感だった。

軽自動車は日本独自規格であるが、運転の仕方によっては最新のフルハイブリッドにも勝てるくらいに卓越した燃費性能については世界に広めたいくらいのモノを感じた。今日、世界ではBEV(バッテリー式電気自動車)へのシフトの大合唱だが、走行時のCO2排出量削減とクルマの製造による環境負荷の低減を併せて考えた場合、アルトのようなクルマは現実的なエコソリューションとして絶大な価値があると思う。とりわけBEV原理主義を取っているヨーロッパのユーザーに対しては「BEVが真にアフォーダブルな存在になるのを待っていないで今すぐクソ重い大型SUVを捨て、このアルトに乗りなさい。それだけであなたがドライブ中に出すCO2排出量は数分の1になる」と言いたい。

気軽な一人旅は小さいクルマに限る。気軽な一人旅は小さいクルマに限る。

そんなアルトを買うとして、どのグレードを選べばいいのか。短距離専用であればそれこそどのグレードであってもOKだが、ある程度レジャーの足にも使いたいというのであれば選択肢はある程度限られてくる。圧倒的リコメンドナンバーワンは今回乗った「HYBRID X」。なぜならばチルトステアリング(ハンドルの上下角調整機構)とシートリフター(座席の高さ調節機構)の両方を備える唯一のグレードで、体に合ったシートポジションを取ることができるからだ。次点は旧型のパワートレインを継承する非ハイブリッドの「L」にアップグレードパッケージを装着したもの。こちらはチルトステアリングは付かないが、シートリフターが備わるため、HYBRID Xほどではないがちゃんとした運転姿勢を取りやすい。

競合モデルの圧倒的最右翼は筆者が過去に本サイトで4000km試乗記をお届けしたことがあるダイハツ『ミラトコット』の上位グレード「G」。このクルマがこれまた実に出来が良く、乗り心地、静粛性、燃費、室内の明るさなどではアルトが圧勝するが、シートの長距離運転耐性、山岳路でのハンドリングの良さ、フラット感、意匠性ではミラトコットが優位に立つなど魅力は互角。どちらを選んでも最小限の出費で思いっきりパーソナルモビリティライフを謳歌できることはウケアイである。

もう一台、これはコスト的にちょっと反則ではないかと思ったりもするのだが、スイングドア式トールワゴンのホンダ『N-WGN』の最低グレード「G」は強力な競合。シートリフター標準装備、ステアリングコラムには軽自動車で唯一、チルトに加えてテレスコピック(前後)調整機構も組み込まれる。後席は左右分割可倒式でスライド機構も装備。極めつけは前車追従クルーズコントロールをはじめとするADAS「ホンダセンシング」まで標準装備。それで価格はアルト、ミラトコットより4万円ほど高いにすぎない。

クルマの値段がうなぎ上りになるこのご時世、スズキ、ダイハツ、ホンダのこれらボトムエンダーがいつまでこのバジェット価格を維持できるかは未知数。だが、仮に今後値上げを余儀なくされる時代が来たとしてもこの種のモデルが相対的に安価であり続けてくれれば、パーソナルモビリティのセーフティネットは守られる。そういうクルマ作りを継続しているメーカーに心から敬意を表したい。そんな思いを抱いたりもしたテストドライブであった。

山口・北長門国定公園にて。山口・北長門国定公園にて。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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