東海道新幹線の架線切断は長いハンガが遠因…共振による金属疲労で折れる

約7割の区間が高速ヘビーシンプル架線となっている東海道新幹線。
約7割の区間が高速ヘビーシンプル架線となっている東海道新幹線。全 7 枚

JR東海は2月22日、東海道新幹線・豊橋~三河安城間の下り線(愛知県安城市古井町内)で2022年12月18日に発生した架線断線事故の原因と事故防止対策を明らかにした。

東海道新幹線の架線は、車両に電力を供給する「トロリ線」、トロリ線を吊る「吊(ちょう)架線」、トロリ線を吊るための「ハンガ」と呼ばれる金具から構成されている。

従来は「補助吊(ちょう)架線」がある3架線の「ヘビーコンパウンド架線」が使われていたが、部品点数やコスト削減を図るため、補助ちょう架線を省略して2本の架線とする「高速ヘビーシンプル架線」が2014年から曲線半径2500m以上の明かり区間(トンネルとトンネルの間の区間)へ順次導入されてきた。

高速ヘビーシンプル架線と従来の架線(ヘビーコンパウンド架線)の違い。高速ヘビーシンプル架線では架線1本分が省略されるため、トロリ線を吊るハンガ(縦線の部分)が長くなる傾向があり、それが共振現象により折損に繋がり、ちょう架線の断線を招いたとされている。高速ヘビーシンプル架線と従来の架線(ヘビーコンパウンド架線)の違い。高速ヘビーシンプル架線では架線1本分が省略されるため、トロリ線を吊るハンガ(縦線の部分)が長くなる傾向があり、それが共振現象により折損に繋がり、ちょう架線の断線を招いたとされている。

JR東海では今回の事故原因を、この高速ヘビーシンプル架線において「トロリ線を吊るための金具であるハンガの下部が折損し、エアセクション(架線を電気的に区分する箇所)内でトロリ線とちょう架線が短絡し、ちょう架線が断線したため」として、遠因となったハンガの折損原因を調査してきた。

断線の概要。断線の概要。推定されたハンガの折損により停電に至ったメカニズム。推定されたハンガの折損により停電に至ったメカニズム。断線したちょう架線(左)。右は通常の状態。断線したちょう架線(左)。右は通常の状態。

その結果、高速ヘビーシンプル架線では、ちょう架線・トロリ線間のハンガが長くなり、その吊上げ力が小さくなった場合に振動の振幅が大きくなる「共振」と呼ばれる現象が発生。それが列車通過のたびに10数秒程度続いた結果、金属疲労が促進され折損に繋がったとしている。

ハンガ折損のメカニズム。ハンガ折損のメカニズム。

これを受け、暫定対策としてハンガのすべてが新品に交換されており、ほかにハンガ径を太くしたものへの順次置換え、10日に1回の巡視点検による列車通過時の振動状況確認が行なわれる。

また恒久的な対策としては、ハンガの長さを短縮して共振を抑えるよう改修される。

ハンガ折損回避の恒久対策として長さを短縮する方法が採られる。ハンガ折損回避の恒久対策として長さを短縮する方法が採られる。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ベントレーの超高級住宅、最上階は「55億円」 クルマで61階の自宅まで
  2. BEVを2年間所有した、“リアルな”ランニングコストを大公開
  3. 日産の新型セダン『N7』、発売50日で受注2万台を突破
  4. 【ダイハツ ムーヴ 新型】「ポッキー入れ」にイルミネーション、軽自動車でも質感を“あきらめさせない”インテリアとは
  5. トヨタ RAV4 新型、PHEVのEV航続は150km
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  2. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  5. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
ランキングをもっと見る