【トヨタ RAV4 PHEV 新型試乗】PHEVはEVよりも高級になりうる、ということを証明した…南陽一浩

トヨタ RAV4 PHEV GRスポーツ
トヨタ RAV4 PHEV GRスポーツ全 23 枚

PHEVの性能を語る上で電気モーター駆動、つまりEVモードの自律走行距離がどのぐらいあるかは、よく取り沙汰されるスペックのひとつ。WLTCモードで151kmと聞くと、感覚的には日本なら北海道の一部を除いて、隣街どころか向こう隣りの街まで範囲内に収まってしまうのではないか。

【画像】トヨタ RAV4 PHEV「GRスポーツ」と「Zグレード」

今回、トヨタ『RAV4 PHEV』の「Z」と「GRスポーツ」の2グレードを試してみて、都内での短い試乗ルートという限られた条件下とはいえ、エンジンの出番がほとんど無いほどの電気の猛烈な仕事ぶりが、強烈に印象に残った。もっといえば、トータルで知能化されたパワートレインの「賢さ」だ。

もちろん必要に応じて2.5リットルダイナミック フォースエンジンが目覚めはする。だが、バッテリー容量や出力を増した電気モードでの走行が、そもそもひと回り以上も力強くなっていること、さらにA25A-FXSという型式こそ同じながらシリンダーブロックごと別物のエンジンが作動/停止する境目というか、過渡期特性が恐ろしく滑らかで静かで、ほとんどドライバーに意識させないレベルにまで磨き上げられている。

要は、ただトルクやパワーを積み増して制御が賢くなった、という話ではない。ギアの噛み合いみたいなレベルまで、メカニカル面でもカイゼンで高効率を追求し、前世代のPHEVからことごとく全方位的に刷新された。それゆえ、どこから説明したらいいのか迷う、そんな話だ。それでいてハンドリングやシャシーまで素晴らしく進化している。

◆RAV4 PHEVのパワートレイン、3つのポイント

トヨタ RAV4 PHEV Zグレードトヨタ RAV4 PHEV Zグレード

HEVもそうだが、6世代目RAV4 PHEVは5世代目から、全長4600×全幅1855×全高1860mmという外寸をそのまま受け継いでいる。2690mmというホイールベースも一緒なので、パッケージングは不動のように見えるが、中味はまったく別物だ。そもそもパワートレインのシステムもレイアウトも、細かにあれこれ異なっている。

重要な点は3つ。まず、PCU(パワーコントロールユニット)を低背化しながらも、従来はリアシート下に配していたDC/DCコンバーターを一体化させることに成功した。いわばエンジンの上に載せられるTHS II自体が最新世代にしてぐっとコンパクト化されて、軽く低くなったため、ボンネットラインが少し下げられ、パワートレイン自体が18%軽く、重心は15%下げられたという。かくして充電器を入れるスペースを稼ぎ出してDC充電、つまり急速充電にも対応し、空力と歩行者保護機能の両立をも改善させている。それでいてパワー半導体にSiC(シリコンカーバイド)を採用したことで電気損失を約70%も削減しているのだ。

2つ目は伝達周り。eアクスルも体積的に従来比ー15%を達成しているが、こちらはトランスアクスルと一体化された。しかもトランスアクスル内のギアや軸受けの構造を見直し、ギアの噛み合いや伝達効率を改善しつつ4ベアリングから3ベアリング化して摩擦を軽減するなど、小型化と高効率化を同時に果たしている。

さらに3つ目はリチウムイオンバッテリーだが、EV用のセルをベースにPHEV用の新構成とし、従来はフロア下に縦置きで96セル・49Ah容量だったものが、横置きで104セル・58Ahに。容量や出力が増しているのはもちろん、バッテリーパック自体の剛性が1.5倍にまで高められているのだ。

◆乾いた雑巾をさらに絞るような進化

トヨタ RAV4 PHEV GRスポーツトヨタ RAV4 PHEV GRスポーツ

パワーユニット自体にも手が入れられている。電気モーターはステーター内の動線密度を増やしつつ、ローター側のマグネット配置をより磁界線に近づけることで出力密度を約20%も向上させた。具体的にフロントモーターのアウトプットは旧134kW(約182ps)/270Nmから新151.4kW(約205ps)/272Nmに高められているが、リアモーターは旧40kW(約54.4ps)/121Nmから新40.7kW(約55.3ps)/123Nmと、控えめな向上にとどまる点は興味深い。一方で2.5リットルエンジンについても、シリンダーブロック本体のeアクスルとの結合側の部分に新たな補強と締結ポイントを設け、連結剛性を高めてノイズや振動を抑えているという。

加えてモーターの冷却とトランスアクスルの潤滑回路はひとつに統合され、ローターに直接オイルをかけて油冷する方式はTHSとして初採用となった。他にもバッテリーやAC&DCチャージャーは水冷式で、パワートレイン、バッテリー、エアコンの各回路を4ウェイバルブによってキメ細かに冷熱管理するサーマルマネージメントシステムをも備え、充放電の最適化やEV/HEV走行の切替、ドライビングコントロールまで、統合的な制御を可能にしている。ちなみに各ユニットを統合することは、高圧ケーブルの削減にも繋がり、銅線の使用量は従来比でー20%低減し、パワートレイン全体の重量は2%ほど軽量化されてもいる。バッテリー容量は2割近くも増しているにも関わらず、だ。

乾いた雑巾を絞るように、質量もコストも際々まで突き詰めた様子が端々からうかがえるが、驚くべきは新しいパワトレ仕様のポテンシャルから効率を絞り出す運用、つまり制御だ。トヨタの開発陣によれば、パワートレイン全体の損失は前世代より何と35%も抑えられているとか。逆にいえば、35%もの高効率化をベースに、WLTCモードで151kmもの走行レンジは確保されたということだ。

◆EV航続151kmの余裕が生み出す走り

トヨタ RAV4 PHEV Zグレードトヨタ RAV4 PHEV Zグレード

今回は水道橋からお台場への往路で「GRスポーツ」に、復路で「Z」に試乗したが、ベースとして後者の印象から語っていきたい。

外装は「アヴァンギャルドブロンズメタリック」と名づけられたベージュゴールド気味のオプションボディ色に、ピアノブラックの艶ありホイールアーチや前後バンパーが組み合わせられている。そして内装に目を移せば、前席シートはHEVのZグレードよりスポーティな、『プリウス』などと共通する形状で、グレーの起毛素材×人工皮革コンビに青いパイピングが走る仕様だ。

肩周りまで包み込み感のあるサポート性が、HEV仕様の大らかなホールド感のシートと明らかに違っていて、ワイワイ系のあちらに対しドライバーズカー寄りのPHEVという、キャラクターの違いを如実に示す。「アイランドコクピット」と呼ばれる物理的スイッチ集中型のセンタコンソール周りに、握り込むシフトレバーではなく、指先ちょいちょい式の小さなスティックでDレンジに入れ、いざ走り出す。

トヨタ RAV4 PHEV GRスポーツトヨタ RAV4 PHEV GRスポーツ

ふたつ目の赤信号までは確かに「EVモード」で走っていた。ひと昔前の、電気によるゼロ発進時にありがちな、急激なトルク立ち上がりは巧みに抑えられているのに、加速感はEVさながらで、グイグイとリニアに伸びる。交通の流れを楽々とリードするのを補って余りある、そんな力強さだ。

ところが「HVモード」に切り替えて、オルガン式アクセルペダルをそこそこ強く踏み込んでも、なかなかエンジンが目覚める気配がない。正確にいえば、都内を走る程度の速度域ならほぼ100%、電気の駆動力だけで済んでしまうのだ。首都高の合流路も、よほど右足に力を込めない限り、モーターだけで余裕でこなせる。それほどのゆとりに加え、室内の静粛性の高さにも驚かされる。さらに負荷をかけてトルクを求めると、リアモーター付近からキーンという高周波音が聞こえてきて、ほとんど無振動でスムーズに、ようやくエンジンが仕事を引き継いでくれる。だがエンジンの回転数が低く保たれるため、静粛性の質が持続する。

◆これほどエンジンの存在感が希薄なPHEVは未経験

トヨタ RAV4 PHEV Zグレードトヨタ RAV4 PHEV Zグレード

もちろんE-FOURによる4駆なので、氷雪路や悪路では対角線上に駆動力を配分する制御もするが、ごく日常域を走っている間でさえ、その統合制御の破綻の無さはほとんど交響楽的でさえある。

RAV4 PHEVも、トヨタ初のSDVモデルとしてソフトウェア開発プラットフォーム「アリーン(Arene)」を搭載していて、後からOTAによるアップデートも可能となっているが、これほどまでにエンジンの存在感が希薄なPHEVの制御と走りは経験したことがない。

かといってそれは、欧州メーカーが示してきたような、「純BEVへの橋渡しにして、一歩手前のソリューションとしてのPHEV」ではない。統合制御すべきパーツ点数が多く、ICE(エンジン)と電気モータ
ーという2WAYの動力源が保証されたより高度なシステムであり、何なら経由地での急速充電も可能だが、してもしなくても走り続けられるレンジの長さとは、つまるところ時間の使い方の自由さでもある。だからこそPHEVはBEVよりも高級モデルとして成立しうると、トヨタの開発エンジニアたちは異口同音に述べる。

実際、RAV4 PHEVのZグレードはシャシー能力やハンドリングといった動的質感の残りの部分でも、及第点を超えたポテンシャルを見せつける。車両重量1980kgとギリギリ2トンを切ってはいるが、突っ張り感のない乗り心地はサスペンションの設定もさることながら、フロア剛性の高さと高減衰接着剤の効きによるものだろう。国産のDに近いCセグひいては電動車離れした、しなやかさすら感じらせる。

◆注目の「GRスポーツ」の走りは

トヨタ RAV4 PHEV GRスポーツトヨタ RAV4 PHEV GRスポーツ

もう一台のGRスポーツにも触れておこう。「エモーショナルレッドII」というオプション外装色に、Zと同じく艶ありブラックのトリムカラーは同じだが、専用フロントバンパー&グリルにリップスポイラー、リアウイングスポイラーやディフューザーで武装している。内装もスポーツシートの形状はZと同じくだが、こちらは地色ブラックにレッドのパイピングという仕様で、ドライバーズシートは静電気を帯電させない除電機能付き。ペダルもアルミプレート張りとなる。余談ながらラゲッジルームのマットも、毛足が長いタイプだったりする。

しかし本命といえるメニューは、下山のテストコースで匠ドライバーによる走り込みによって設定された、GRスポーツ専用チューニングのサスペンションにある。専用ダンパーに加え、コイルのスプリングレートがZ比でフロント+25%/リア+24%増しされただけでなく、トレッドも前後それぞれ+25mmと+20mm拡げられており、リアのダブルウィッシュボーンサスのメンバーは一部ながら、閉じ断面化することで捻じれ剛性を向上。さらにフロント側にはボディの捻じれや振動を減衰するパフォーマンスダンパーまで備えるという、相当なこだわりを感じさせる仕様設定となっている。

トヨタ RAV4 PHEV GRスポーツトヨタ RAV4 PHEV GRスポーツ

果たして走り出してみると、確かに引き締まった脚であることは即、感じられるが、微低速の初期からよく動くダンパーで、意外なほどZで感じられた乗り心地のしなやかさが損なわれていない。だがコーナーを曲がる際には、ステアリング微舵を当ててからパタンと片側に傾く初期ストロークの後、つまりワンテンポあってから踏ん張りが効き始めて、その先はリニアな感触だったZとは明確に異なる。GRスポーツの方はステアリングの切り始め、中立付近からスッと減衰力が立ち上がっては、路面のインフォメーションと応力をキチンと手元に伝えて来る。速度域に比例してその手応えも増す、そんな質のいいプログレッシブ特性なのだ。

GRスポーツの動的質感をさらに高めるのは、バイワイヤのブレーキペダルのタッチだ。Zも同じブレーキシステムのはずだが、ちょっとした荷重コントロールのしやすい足まわりゆえ、制動力を抜くときの姿勢の造り易さが、GRスポーツの方でとくに印象に残った。実際、新しいRAV4の販売台数の5台に1台がPHEVで、PHEVの5台中4台はGRスポーツだそうで、トヨタが想定していた以上にGRスポーツが強い状況だとか。

◆排気量を思い切って下げる選択肢は?

トヨタ RAV4 PHEV Zグレードトヨタ RAV4 PHEV Zグレード

ただし、するとここまで完全無欠に見えた新型RAV4 PHEVの、完成度の高さゆえの弱点も見えてくる。スポーティ・エレガントな都会派SUVとして、かくも走りがパワフルで乗り心地よく静かだと、同じ2.5リットルエンジンのPHEVとして『ハリアー』や『クラウンスポーツ』に対して下剋上の気がもたげてくるのだ。

もちろんリアルレザーを含む内装トリムの仕上げや質感など、差別化が図られているポイントは多々ある。他社競合モデルといえる三菱『アウトランダーPHEV』が2.4リットルエンジン、マツダ『CX-60 PHEV』が2.5リットルエンジンを積んでいることも前提としてある。だがモーターの仕事ぶりがあれだけ優秀で、エンジンの存在感は欠かせないけれどもアクセサリー的でもあるからこそ、排気量を思い切って下げる選択肢もありえたのではないか? するとさらにストローク感があって元気なシャシーをも、期待できそうな気もする。

今は明らかに排気量で車格を語る時代ではないが、600万円超の車両価格を正当化するには、未だ排気量とカンロクが求められる矛盾も確かにある。だからこそRAV4 PHEVには、重量感よりも軽快でカジュアル、かつソバーキュリアス(※)な電動SUVであって欲しいのだ。

※あえてお酒を飲まない、という選択をする概念やライフスタイルのこと。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

《南陽一浩》

南陽一浩

南陽一浩|モータージャーナリスト 1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

レスポンス公式TikTok

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. トヨタ『ライズ』がRAV4デザインに!? 次期型が驚きの進化、国内トップSUVの最新情報
  2. レクサス『ES』新型、ハイブリッド・EVともに790万円から…EVの航続は最大670km
  3. 三菱が新型EV『エクリプス スポーツバック』発表、日産『リーフ』のOEM…北米投入へ
  4. 次期「TT」なのか!? ポルシェ『ボクスター』の皮を被ったアウディ…共同開発スポーツカーをスクープ
  5. ACコブラ GT クーペ、市販モデル発表…730馬力のV8スーパーチャージャー搭載
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. ホンダ「2026ビジネスアップデート」…次世代HV15車種投入、2029年度営業利益1兆4000億円
  2. NEC、3D点群データを90%軽量化する世界初のAI変換技術を開発…2027年度実用化へ
  3. 英Parkopedia、新APIでEVの「充電不安」解消へ…公共充電器の最大43%が実質利用不可という業界課題に対応
  4. 【世界主要自動車xEV市場 リスキリング講座】中国編
  5. メンテナンスパック「SUBARU Care Passport」、13項目選べる付帯サービス…7万8144円から
ランキングをもっと見る