【マツダ CX-60 新型試乗】「e-SKYACTIV D 3.3」は、価格だけの価値があるのか…岩貞るみこ

マツダ CX-60 XD-HYBRID Premium Sports
マツダ CX-60 XD-HYBRID Premium Sports全 12 枚

今回のワンポイント確認は、「ディーゼルエンジンとハイブリッド(以下HV)という価格が高いものを組み合わせたe-SKYACTIV D 3.3は、価格だけの価値があるのか」である。

価格表を見る。

ガソリンエンジンが搭載された「SKYACTIV-G」の最安値は299万2000円。一方、「e-SKYACTIV D 3.3」は、505万4500円である。その差、200万円以上。駆動方式や装備等々の違いもあるので一概には言えないが、同じクルマでありながら完全にユーザー層を分断するグレード設定である。

ディーゼルエンジンもHVシステムも、高い機能である。燃費のいいこのふたつを組み合わせたら当然、燃費はよくなるけれど、車両本体価格も上がるのだ。それでもユーザーは買うのか? それだけ魅力的な商品に仕立てることはできるのか。

マツダ CX-60 XD-HYBRID Premium Sportsマツダ CX-60 XD-HYBRID Premium Sports

◆運転開始直後から突きつけられる骨太感!

いざ、実食! じゃなかった、実乗!

面のひとつひとつが堂々としているため、全高1685mmよりも大柄に見える。ちょっと気後れしつつ開けたドアはずっしりと重く、閉じたときの音にも高級感がある。今回、試乗したグレードの、「XD-HYBRID Premium Sports」は、カタログに「タンカラーとスウェード調の素材によって全体の質感を濃厚に表現」とあるインテリアで(児童書なら絶対に校閲さんが「濃厚に」にダメ出ししてくるけれど、大人ならしっくりくる表現)、明るい色と素材の良さでおもてなし感がハンパない。そして運転席に座ったときの、シートが作り出す運転姿勢のとりやすさといったら。背中をそっと包み込み、上半身の動きをとりやすくしてくれる。

ドア~インテリア~シートという通過儀式を終え、三段構えのおもてなしで上機嫌になったところで運転開始である。すると、そこからは一気に、骨太感を突き付けられる。

マツダ CX-60 XD-HYBRID Premium Sportsマツダ CX-60 XD-HYBRID Premium Sports

まず、アクセルが重い。ここまで重くしなくてもというくらい、ずっしりとした足応えである。HVといえば走り始めをモーターがアシストするので、飛ぶように軽い瞬発力というイメージがあるものの、CX-60の場合はアクセルペダルをぐっと、本気で踏み込まないと前に進まないのである。

そして、ハンドルも重い。びっくりするくらい重い。マジか。腕力のない人だといやになっちゃうくらい重いと思う。こんなに重くして、どうするんだ、マツダ。

人馬一体を常に掲げるマツダとしては、操作している実感を大事にしているのは間違いない。なんでもかんでも単純に軽く乗りやすくでは、乗り味は薄まるばかりだからだ。運転姿勢が適切にとれるシート、及び、ハンドルやペダル位置のレイアウトがあるからこそ、この重さの決断ができたのだと思う。

◆ディーゼルエンジン+HVの真骨頂とは

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重いアクセルペダルではあるけれど、加速していく様は安定感があり頼もしい。モーターが上手にアシストして滑らかなのに、浮ついたところがないのだ。ペダルを踏んでも最初は自分の感覚の80~90%の加速感で進んでいく。そして、ここぞというときにぐっと踏み込むと、120%でぐおーっと前に出る。ドライバーの意思を余裕を持って受けとめて表現していく様にはちょっとうっとりである。

気になる燃費は、渋滞2:市街地2:郊外4:高速2で、18.3km/リットル(高低差や乗員数等によっても違います、念為)。軽油なので燃料代がかからずお財布にやさしくて嬉しいというよりは、燃料タンクが58リットルなので、走っても走っても燃料系の針が減らない嬉しさのほうが大きい。つまり、ロングドライブに行くときの安心感、ちょいちょいスタンドによらなくていいストレスのなさこそが、ディーゼルエンジン+HVの真骨頂なのだ。

ちなみに私はブレーキも気に入っていて、これまたちょいと踏んで反応しすぎることなく、踏み始めからさらに踏んだあたりから減速がぐっと高まっていく。さらに急制動をすべく踏み込んだときの止まりっぷりは、キレがよくて不安を微塵も感じさせない。頼もしい。

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◆結論。

「ディーゼルエンジンとハイブリッド(以下HV)という高いものを組み合わせたe-SKYACTIV D 3.3は、価格だけの価値があるのか」は、高級感と重厚感のある乗り心地と、給油を気にせずに走りまわれる楽しさで、選んで損なしなのであった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「ハチ公物語」「しっぽをなくしたイルカ」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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