アウディ「e-tron」のバッテリー二次利用の課題とその先の未来

アウディ「e-tron」のバッテリー二次利用の課題とその先の未来
アウディ「e-tron」のバッテリー二次利用の課題とその先の未来全 1 枚

2021年は0.2%だったEV普及率は約1年余りで急速な立ち上がりを見せ、地場、中韓、欧州勢が相次いで参入するインド市場。2022年(暦年)インドのEV販売台数は100万台を超えた。インド政府が主導する国産化施策に基づいて、EVについてもリチウムイオン電池についても新規参入が相次ぎ、各所で試作や量産化を目指した活動が進められている。急拡大する市場機会に対してどのような新規性をもった製品でアピールしていくかに多くの事業者が注力する中、既に「その次の未来」に着目して活動を進めているスタートアップ・事業者も現れている。

3月28日に開催される「今のインド」モビリティの実態セミナーシリーズ(第4回)では「Audiの使用済みバッテリーを二次利用するNunam」と題して、ベンガルールを本拠とするディープテック・スタートアップを紹介する。

ここでは、本セミナーシリーズのモデレーターを務めるベンガルール在住のコンサルタントの筆者(大和合同会社代表 大和倫之)が、セミナー開催前にゲストに聞いた話の一部を紹介する。

■法人化後アウディの目に止まった

ゲストに迎えるのは、Second Life Battery= リチウムイオン電池の二次利用を主眼に活動するNunam Technologies India Pvt Ltd (以下、Nunam)の共同創業者として、ベンガルールでチームを率いるMr. Darshan Virupaksha。ドイツ・ベルリンを拠点に欧州での事業機会・業界動向を探るMr. ProdipChatterjeeと共に2019年に同社を設立、2023年初頭にはベンガルール市南部のElectronics Cityに拡張移転し、目下、3,000平米の工場の整備と更なる体制強化を図っている真っ最中だ。

サンスクリット語で「未来」を意味するNunamは、ベンガルール市を州都とするカルナタカ州の農村部で育ち、地域の名門大学で電気工学を専攻した後、インドの最高学府であるIISc (Indian Institute of Science,インド科学工科大学院)やシンガポールに新設された国立工科デザイン大学SUTD (Singapore University of Technology and Design)で研究員を務めたDarshanのふとした気付きがきっかけになっている。インドおよび周辺国には未だ系統電力が十分に行き渡らないエリアが多くある一方で、機械や照明等の電源として求められる電力量は極めてわずかな量でも足りる。現在は都市に住むデジタルネイティブ世代である彼ら自身は、ラップトップやモバイルを当たり前に活用しており、バッテリーを含む使用済み機器が大量の廃棄物として処理されているのも目の当たりにしている。これらのバッテリーも使いようによっては、まだ十分に活かせるのではないか、と。

実際に試作機を持って農村部に向かい、屋台の店主や女性の就業支援団体に提供すると好評を得て、事業化への手応えを感じたのが法人化のきっかけとなった。そんな活動が独・アウディの目にも止まり、電動車ラインナップであるe-tronの廃バッテリーを利用してインドのリキシャ(三輪タクシー)を走らせられないか、という企画に発展。ソーラーパネルによる給電装置と併せて試作に成功したことが同社の公式プレスリリースとして公開されている他、ドイツ国営放送DWにより取材・番組化されたものがYoutube上でも見られる。

Audi e-tronバッテリーの二次利用:使用済みバッテリーモジュール、インドのe-rickshawが搭載
(ドイツ本国発表資料)
https://www.audi-press.jp/press-releases/2022/b7rqqm000001lauz.html

From Audi To E-Rickshaws: Nunam Gives A Second Life To EV Batteries
https://www.youtube.com/watch?v=9XdsboJ6wTw

■日本市場・日系事業者との取り組み

以来、インド国内の新興EVメーカーや電池事業者のみならず、グローバル大手を含む多数の企業がその先端的な取り組みから何らかのヒントを得ようと同社にアプローチをしてきており、目下、インド政府が整備を進める各種政策や規格についても定期的に意見を求められている。2022年には日系電池素材メーカーとも提携し、インドのローカル事情に根差した研究開発活動を始めたNunamは、3月15-17日に開催されるバッテリー・ジャパン展の視察と併せて訪日する予定だ。既に多数の関連事業者と討議する機会もスケジュールされている。

3月28日に開催される「今のインド」モビリティの実態セミナーシリーズ(第4回)では、CTOであるMr.Sivaと共に初めての来日を通じて得た印象を踏まえて、Nunamの考える「電動化後の社会課題」や「二次利用に向けた現状と課題」についてDarshanに語ってもらう。今、EV化が世界でも最も早く進んでいる市場であるインドにおいて、更に「その次の未来」を見据えて活動を始めているNunam。彼らの目に日本市場・日系事業者の取り組みがどう映ったのか、も興味深いポイントだ。ディープテック・スタートアップを率いる経営者の生の声を聞き、また直接質問できる機会を是非活用頂きたい。

《大和 倫之》

大和 倫之

大和倫之|大和合同会社 代表 南インドを拠点に、日本の知恵や技術を「グローバル化」する事業・コンサルティングを展開。欧・米の戦略コンサル、日系大手4社の事業開発担当としての世界各地での多業種に渡る経験を踏まえ、シンガポールを経てベンガルール移住。大和合同会社は、インドと日本を中心に、国境を越えて文化を紡ぐイノベーションの実践機関。多業種で市場開拓の実務を率いた経験から「インドで試行錯誤するベースキャンプ」を提供。インドで事業を営む「外国人」として、政府・組織・個人への提言・助言をしている。

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