『モデルY』の“快適”航続可能距離はたった200km!?【テスラ モデルY 買いました 17】

快適に乗れるのはわずか200km??写真は筆者のモデルY
快適に乗れるのはわずか200km??写真は筆者のモデルY全 4 枚

テスラ『モデルY』が発売されたと同時にとっさにポチッてしまった一編集者である筆者。基本は自宅充電だというが、今回はあえて自宅充電せずにギリギリまで運用してみたところ、快適に走行できる距離はわずか200km程度となったという。その真相はいかに?

フル充電で航続可能距離430kmは本当?

ボクはいつもは自宅で充電している。ただし100V充電。ブレイカーが落ちないように10Aでやっている。だから1時間に約1kWの充電量だ。1日だいたい40km強走るボクのモデルYは、1日で7kW程度電気を消耗している。この程度であれば、7時間、つまり一晩でフル充電することができる。

モデルY RWDに搭載されているバッテリーは、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーだ。このバッテリーについてマニュアルには以下のように説明されている。

LFPバッテリー搭載車両の場合、通常走行であっても充電制限を100%に維持し、少なくとも週1回はフル充電して100%にしておくことを、Teslaでは推奨しています。

そうすれば「航続距離を最大限に伸ばし、充電状態と推定航続距離を判断する車両の能力を向上させることにつなが」るそうなので、スクリーンに表示される数値がより正確になるということなのだろう。

そうやって数か月。なんの問題もなく運用してきたのだが、あるとき、ふと「充電100%で、航続可能距離430kmと表示されるけれど、実際はどうなのだろうか?」と疑念が湧いてきた。テスラ系ユーチューバーの動画を見る限り、最大航続距離は400km程度だそう。ボクのモデルYはタイヤサイズが20インチと標準の19インチより大きいので、400kmは走らないのだろうと推測できる。

しかし、これらのテストはあくまで長距離を連続して走ったときの航続距離である。日常的なクルマ使いでは、日中乗って、夜は停めておくという使い方だ。そのような使い方で、毎日充電せずにいたらどの程度まで走れるのだろうか。

それは突然やってきた!

実験を始めたフル充電完了の日から、公私にわたって遠方への旅行や宴席などが入っており、結局次に充電した日までは半月。その間、モデルYに乗った日は6日間だったので15日間のうち半分も乗っていなかった。これは通常よりも少ない頻度で、そのぶん駐車時間が多くなってしまっている。

モデルYを利用する6日目の朝、航続可能距離は101km。その日の予定はいつもどおり帰宅までに40km強を走る予定だったので帰宅までの充電量としては十分である。しかし、走行中、航続可能距離が86kmになったとき、バッテリーマークが黄色になった。そのとき、その意味は単に「そろそろ充電したほうがいいよ」というお知らせ程度にしか思っていなかった。

バッテリー残量20%で黄色表示に。それまでの走行距離は203kmだバッテリー残量20%で黄色表示に。それまでの走行距離は203kmだ

が、影響はそんなものではなかった。目的地について駐車したときスクリーンに表示された「セントリーモード」が使えない、という警告を目にして、ことの重大さを認識したのである。その駐車場では通常両隣にも駐車できるのでドアバンなど、万一にもモデルYに傷がつくおそれがあるため、なにかあったときに自動的に動画を撮影してくれる「セントリーモード」は心のお守りだった。それが有効でないとなると不安しかない。仕方ない。諦めよう。

セントリーモードに入らないセントリーモードに入らない

そうしてモデルYを離れて数時間後、ふとアプリを見ると、なんと車内温度が45度になっているではないか。おかしい? 「オーバーヒートプロテクション(キャビン過熱保護)」をONにしているので車内温度が35度以上になるとエアコンが自動的に入って車内温度を下げてくれるはず。確認すると、バッテリー残量が20%以下なのでこれも作動しないことがわかった。

手動で、エアコンを入れて車内温度を下げようとすると「バッテリー残量が少ないがそれでもエアコンを入れるか?」とポップアップ画面が出て注意を促す。それでもOKにしてエアコンを入れて、車内温度を30度以下まで下げるが、エアコンを切ると1時間も経たないうちに再度45度以上に戻ってしまう。仕方ない。諦めよう。

そう。バッテリー残量が20%以下になるとテスラは“快適に”利用できないのだ。改めてマニュアルを確認すると…。

セントリーモードを使用するには、少なくともバッテリー残量が20%以上必要です。バッテリー残量が20%よりも低くなった場合、セントリーモードは無効となりモバイルアプリより通知されます。セントリーモードを有効にすると、バッテリー消費が増加します。

キャビン過熱保護は、ModelYを降りてから12時間経過またはバッテリー残量が20%を下回った時点のいずれか早い方の時点まで動作します。キャビン過熱保護を使用するにはバッテリーからのエネルギーが必要なので、航続距離が減少する可能性があります。

バッテリーの充電状態が低い場合、「エアコンをオンに保つ」、「ドッグ」、または「キャンプ」の使用を控えてください。バッテリーの充電レベルが20%未満に低下した場合、ModelY内に残したままにしたものがないか確認する通知をTeslaモバイルアプリが繰り返しドライバーに送信します。

その他、プレコンディショニングができないなど、とにかくバッテリーを使用することが制限されるのだ。これは辛い。想像以上に不便だ。EVだからバッテリー残量がなくなれば走れなくなることはわかっている。だが、残量が少なくなれば走ることが優先されて、それ以外の機能は制限されることまでは考えが至らなかった。

自宅充電が快適EVライフのカナメ!

帰宅途中、ほうほうの体で自宅近くのスーパーチャージャー(SC)に飛び込んだとき充電残量は9%だった。それまでの実走行距離は237km。バッテリー残量が20%になったときの実走行距離は203kmだったので、走行優先で走った距離は34km。この34kmのあいだは実に精神的負担が大きかった。

残り9%で走行距離は237km残り9%で走行距離は237km

SCのおかげでボクのモデルYは数十分でフル充電完了。すべてがもとに戻り、快適走行が楽しめるモデルYが帰ってきた。そこで改めて考えると、結局、快適に走行できる距離は約200kmに過ぎないということ。もちろん今回は駐車している時間が長かったという理由もあるだろう。

ガソリン車は駐車中にガソリンが減るということはありえないが、EVは駐車しているあいだもバッテリーを消耗する。ボクは自宅駐車中はセントリーモードを切っているので、一晩で消耗するバッテリー容量は5km分程度だ。が、自宅でも近くの賃貸駐車場に停めている場合はセントリーモードを切れないオーナーもいるだろう。そういう方のテスラは、より多くのバッテリーを消耗して航続可能距離はどんどん減っていく。

そう考えると、自宅に充電設備がある人こそがEVライフを“十分に”満喫できる。そうでない方は、近くに急速充電器があるかどうかが快適に利用できるかどうかのカナメとなる。その点、テスラはほかのEVに比べて独自のSCを展開しているぶん充電ポイントが多い。またアダプターを使用すれば通常のCHAdeMO急速充電器も利用できるというアドバンテージがある。見方を変えれば、テスラ社は最初からそういった不満を見越して、当初からEV製造・販売のみならずSC設置も企画していたのだろう。

今回新たに「モデルY ロングレンジ」が発売されたが、これはRWDと比較して、WLTCモード(国土交通省審査値)で98km航続可能距離が長い。少しでも“快適”航続可能距離を延ばしたい方はこちらをおすすめする。

《田代真人》

田代真人

田代真人 福岡県出身。九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にて初代Webマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て独立。出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動後、現在は、駒沢女子大学教授、桜美林大学非常勤講師を務める。専門は「編集論」。

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