[初めてのスピーカー交換]「デッドニング」はどこまでやるべき?

インナーパネルに「制振材」が貼られたところ。
インナーパネルに「制振材」が貼られたところ。全 4 枚

純正のカーオーディオシステムのサウンドクオリティに不満を抱いているドライバーは案外多い。なお、それを改善するための方法はさまざまあるが、もっともスタンダードなアプローチは「スピーカー交換」だ。というわけで当特集では、それを行う上でのコツを解説している。

◆「スピーカーを作る」作業の主体となるのは、「デッドニング」!

さて前々回と前回の記事にて、「スピーカー交換」を行うにあたっては「スピーカーを作る作業」が必須となることを説明した。とはいえ、そこのところにどれだけ手をかけるかはそれぞれの考え方次第で調整可能だ。しかし、最終的には手厚く行った方だ良い。そうすることでスピーカーとしての完成度が高まるからだ。

で、「スピーカーを作る」作業の中心となるのはズバリ、「デッドニング」だ。今回はこれが何なのか、どう行えば良いのかを深掘りしていく。

最初に、「デッドニング」という言葉の意味から解説していこう。「デッド」とは、音響的な観点で使われる場合には「響きにくいこと」を意味する。ちなみに対義語は「ライブ」で、こちらは「響きやすいこと」を意味する。そしてカーオーディオでの「デッドニング」もまさしく、「ドア内部を響きにくくする作業」という意味合いが強い。しかしながら、行われることはそれのみではない。響きにくくすることの他にもすべきメニューがいくつかある。

なので、「ドア内部の音響的なコンディションを上げるための作業」と捉えた方が、実情に即している。ちなみにいうと、「デッドニング」とは敢えて呼ばずに「ドアチューニング」と称しているメーカーもある。この呼び方も言い得て妙だ。

「デッドニング」用の部材の一例(フェリソニ・C-1)。「デッドニング」用の部材の一例(フェリソニ・C-1)。

◆「デッドニング」にて最初に行われる作業は、「背圧」の処理!

続いて「デッドニング」ではどのようなことが行われるのか、その内容を紹介していこう。さまざまなやり方が有り得ているが、フルメニューで行われる場合には、以下のような順序にて実行される場合が多い。

まずは、「背圧の処理」が行われる。ちなみに「背圧」とは、スピーカーの裏側から放たれる音エネルギーのことを指す。スピーカーは振動板を前後させて空気を震わせ音を伝えるが、その営みはスピーカーの裏側でも行われている。そしてその音エネルギーがさまざまな悪さをしでかす。なのでまずは、その音エネルギーを吸収したり散らばらせたりするために、「吸音材」や「拡散材」が貼られることとなる。

そしてその次にはドアの外側の鉄板(アウターパネル)への「制振」作業が行われる。ドアの鉄板は案外薄いので、背圧によって簡単に共振する。共振すれば異音が出て、スピーカーの音を濁す。なので鉄板に「制振材」を貼り、共振しにくくするのだ。

次いでは、ドアの内側の鉄板(インナーパネル)に開いている「サービスホール」を埋める作業が施される。これが行われるのは、背圧が表側(車室内)に回り込まないようにするためだ。

アウターパネルに「制振・吸音材」が貼られたところ。アウターパネルに「制振・吸音材」が貼られたところ。

◆サービスホールを塞ぐことで、「キャンセリング」を防止可能に!

背圧を表側に回り込まないようにしたいその心は以下のとおりだ。スピーカーの裏側から放たれる音は、耳で聴く分には表側の音と同一だ。しかし、音波としては真逆の関係にある。なぜなら振動板の動き方が表側と裏側とでは真逆だからだ。表から見て振動板が前に出ているとき、それを裏側から見ると振動板は奥に引っ込んだ状態となっている。

で、耳で聴く分には同じ音でも、音波として真逆の関係にある音が同一空間で混ざり合うと「打ち消し合い(キャンセリング)」が引き起こされる。それをできる限り防ぐべく、サービスホールが塞がれる。

その上でインナーパネルの「制振」も施され、さらには内張りパネルに対しても「制振」や「吸音」処理が行われ内張りパネルの共振や音の回り込みの抑制が目指される。

ここまで行えば、ドアのスピーカーとしての完成度はかなり高まる。

ただし「スピーカー交換」を実行する段階では、施行内容を絞っても良い。そうすることでコストを抑えられる。しかし、その後で予算ができたときに一気に、または段階を踏んで徐々に進めていこう。なおお薦めなのは段階を踏んでの施行だ。そうすることで、それぞれの作業の効果を実感できる。そして都度音が良くなる感動を味わえる。参考にしてほしい。

今回は以上だ。次回以降も「スピーカー交換」のコツや注意事項の説明を続行する。お楽しみに。

《太田祥三》

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