スバル インプレッサ 新型「不安を取り除いて楽しいクルマ」…商品企画担当者インタビュー

スバル インプレッサ
スバル インプレッサ全 11 枚

フルモデルチェンジしたSUBARU(スバル)『インプレッサ』。新型ではどういうったクルマに仕立てた方のか。商品企画担当者に話を聞いた。

SUBARU商品企画本部主査の刀祢友久さんSUBARU商品企画本部主査の刀祢友久さん

◆普通だけど個性が欲しい

---:まず初めに伺いたいのですが、インプレッサと『クロストレック』を商品化するにあたって、会社から商品担当としてオーダーが来た時にどう思いましたか。

SUBARU商品企画本部主査の刀祢友久さん(以下敬称略):クロストレック(旧XV)の方は比較的難しいながらも、道がある程度見えた企画でした。

---:それはSUVだからですか。

刀祢:そうですね。SUVであることと、先代のXV、先々代のXVからの流れがある程度ベクトルとして見えてる中での企画でしたので、比較的良かったんです。一方で、インプレッサはちょっと難しかったですね。

ただ、インプレッサは良くも悪くも普通のクルマなのです。なので勇気を出して普通のクルマを普通に進化させようとしました。ただやはり欲が出まして、普通であることに加えて、スポーティーさ、面白さみたいなところも今回は入れさせてもらいました。そういった企画を持って開発をしてきたのですが、いざ世に出すとなった時点で、どうやって市場にお伝えしようか、そこは悩みましたね。

スバル インプレッサスバル インプレッサ

---:新型を開発するにあたり先代インプレッサの振り返りもされているかと思います。まずその強みはどういったものだったのでしょう。

刀祢:先ほどもお話しましたように、インプレッサは普通のクルマなんですね。ですので、奇をてらいたくない方々にはスッと受け入れてもらえていました。あとは安全装備です。先代もそうなんですけれどこのカテゴリにしては充実させていきましたので、そちらは今回も継承しています。

---:では弱点はどういったところだったのでしょう。

刀祢:相反するんですけれど、やはり個性が欲しいというところですね。

---:それはスバル車だからこそ出た要望なのでしょうか。

刀祢:それはあるかもしれません。これまでスバルに乗って来られなかったお客様もオーナーが少し増えてきたことも要因としてはあるでしょう。クルマとしての個性をより求められていたようです。

---:では、その部分はどのように今回表現をして行ったのでしょう。

刀祢:まずスポーティさですね。そこをどうやって表現するかというのがありました。デザイン上での表現力、あとはどういうアイテムで表現していくかというのが今回の課題でした。

---:デザイナーの井上さん(SUBARU商品企画本部デザイン部主査の井上恭嗣さん)からは、伸びやかさがインプレッサのデザインのポイントと伺いました。また、フェンダー周りの塊感もスポーティーさを表現していますね。

刀祢:はい。

◆入り口は違っても求めるものは同じ

---:クロストレックもインプレッサもユーザーの使い方は近くて、インプレッサでもキャンプに行ったりする人たちも多いとも聞いています。それを商品企画的に考えると、どちらかでいいのではないかとも思えてしまいます。そういった葛藤はありませんでしたか。

刀祢:そう思ってはいけないと考えていました。キャンプに行かれる方の中では、キャンプが好きでSUV買う方と、実用的なクルマが欲しくて買って、それでキャンプに行かれる方がいらっしゃる。同じ行動でも、最初の入り口が違うと考えたのです。おそらくキャンプに行く頻度が違うでしょう。SUVを買われる方は頻繁に行かれる方が多いと思うのです。ただ、キャンプに行くという行動自体に対しては、入り口が違ってもきちんと対応すべき事柄だと思っています。

---:そうすると、楽しさの入り口も違ってくると思うのです。それをうまく企画として表現を変えていかなければいけない。それはどんな考えだったのでしょう。

刀祢:もとになったのはお客様の声をたくさん聞いたことにあります。SUVはSUVで目的を持ってお出かけになる。インプレッサは逆に目的を持たずにドライブする方が多いのですね。ただどちらも乗り込む時のクルマを見た時の喜びや、乗って運転した時の楽しさ、ファントゥドライブとは使い古された言葉ですが、そういうところに対して、見た目と運転した時の不安を払拭して気持ち良さを持ってもらいたい。ですから入り口は確かに違うんですが、クルマに求めるものはインプレッサとクロストレックとでそれほど変わらないんです。

---:そこで見せ方として、ちょっとSUVテイストがあるクルマでキャンプ行こうとか、乗用車的なクルマで街中でも楽しく乗ろうという見せ方に変わっているわけですね。

刀祢:そうですね。クロストレックはよくできたブーツ。インプレッサはスニーカーのような、それでも両方とも同じ速度で走れますみたいな。そういうイメージが私の中では強いですね。

◆とにかく不安を取り除きたい

---:刀祢さんが新型インプレッサで一番やりたかったことはなんですか。

刀祢:不安を取り除きたかったんです。うるさいと乗りたくないなとか、そんなことはないですけど、例えばブレーキが効きにくかったらちょっと怖いですよね。そういういわゆるベーシックな、スタンダードなところの不安を取りたかったのです。

---:私たちの仕事は特に操作などの説明を受けずにいきなり試乗することが多いので、実は結構緊張するんです。しかしインプレッサやクロストレックははまず車幅が掴みやすい。アクセルやブレーキのコントロール性も思い通りという素直さがあったので、安心感がとても高かった印象です。モーター駆動からエンジン始動へとつながる動きも非常にスムーズでした。

刀祢:結局意図しない動きをさせないということです。例えば電気とエンジンが切り替わるタイミングで、あれっと思って違和感を覚えることはいやですよね。e-BOXERを今回のフルモデルチェンジで初めて搭載していたら難しかったかもしれません。しかし、先代である程度熟成させてきたベースがありますので、そこからさらにということで今回、これまでの知見がすごく活かせたと思っています。

---:さらには、クロストレックからインプレッサに乗り換えても別に違和感もありませんでした。もちろんアイポイントは高いのですが、重心が高いという感じは全くありませんでした。これは一緒に開発したからこそできたものだったんでしょうか。

スバルインプレッサ(右)とクロストレック(左)スバルインプレッサ(右)とクロストレック(左)

刀祢:そうですね。結局目指すべきところは両方とも楽しさを追求したいというのは変わらなかったので。もちろんそれぞれの個性でチューニングは変わるんですけど、行き着く先は一緒になっていくという開発の進め方でした。

---:なぜ楽しさをそこまで求めたのでしょう。

刀祢:開発を始めた頃が、ちょうど新型コロナウイルスが蔓延しはじめた頃ですから、笑って仕事をしたい、作ったクルマで笑ってもらいたいという思いがすごく強くて、それがひとつのコンセプトにつながったのです。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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