【メルセデスベンツ EQE 新型試乗】高級EVはいかにして個性を演出するのか?…中村孝仁

メルセデスベンツ EQE 350+
メルセデスベンツ EQE 350+全 45 枚

メルセデスベンツのEVを「EQ」の頭文字で呼ぶのはご存じの通り。その名が『EQE』とくれば、普通は『Eクラス』のEV版だと思うのは至極当然だろう。

しかし、前回『EQS』に乗った時は少し様相が違って、確かに一番大きなセダンのEVであることは間違いないのだが、ICEの『Sクラス』のような純然たるセダンではなく、なんとテールゲート付きのいわゆるユーティリティーモデルに変貌していた。

ところが基本的に同じプラットフォームを使っているEQEの方は何故か純然たるセダンで、ちゃんとトランクスペースを持つボディとなっているから話がややこしい。さて、どう理解して良いやらというのが素直な感想であるわけだが、実際試乗してみると紛れもないEQSの弟分なのである。

◆走りに個性はあるか?

メルセデスベンツ EQE 350+メルセデスベンツ EQE 350+

例えばEQSで凄いと感じた全面ディスプレイのダッシュボートは、この「EQE350+」というグレードのモデルでは省かれて、フロントグリル同様にスリーポインテッドスターがちりばめられたダッシュボードにICE車でも見慣れたメーターパネルやセンターディスプレイが並ぶ仕様となっている。というわけで見た目はEV、中はほぼICEモデルに近いという仕様だ。

バッテリーの搭載量も兄貴分よりも少し控えめで90.6kwh。その分航続距離もやはり控えめでEQSの700kmに対してこちらは624km(いずれもWLTCモード)となる。とはいえ600kmオーバーの航続距離はICE車でもディーゼルとかハイブリッドでない限りなかなか達成できない距離だから、実用上は何の不満もないはずである。

初期のEVではやたらとその凄まじいばかりの加速力に心奪われたモノだが、実際それを試せばバッテリーはあっという間に無くなる事実も当然あって、わかってはいるけれどそれ以外に大きな走行面での特徴というか個性を見出せなかったことも事実である。

◆EVの特徴とは何なのか

メルセデスベンツ EQE 350+メルセデスベンツ EQE 350+

今となっては決してベンチャーとは言えないテスラのモデルが凄まじい加速を売りにしていたのに対して、後発の老舗メーカーたちは自動車ブランドとしての運動性能や乗り心地を全面に出して、「自動車メーカーがEVを作るとこうなります」的な発信をしていた。しかしEVがほぼ行き渡った時点で改めてEVのメーカー間の個性、特徴は何なのか考えてみると、正直答えが出ない。

EQEは少ないバッテリー搭載量や、省かれた全面ダッシュボードを除くとほぼEQSである。つまり、絶妙な乗り心地と静粛性、そして快適さを持つが、ICEのように音で五感に訴えかけたり、ミリ単位でステアリングの操作に対するきめ細やかでしなやかな車両の挙動などを表現するのは難しい。

端的に言ってしまうとどれだけ室内が豪華であるか。あるいはメルセデスの場合はエネジャイジング・コンフォートのような、いわゆる安らぎの空間を作り出すような室内空間の創出。これらは正直言ってクルマとはかけ離れた部分であって、それ以外の方法で高級車としての特徴を出すのが難しいのではないかと感じてしまったわけである。

◆EQSよりきっちり200kg軽い恩恵

メルセデスベンツ EQE 350+メルセデスベンツ EQE 350+

勘違いしていただきたくないのは、EQEの評価がそれによって下がるというものではないということ。しかもこれだけの容量のバッテリーを搭載しているにもかかわらず、EQEの車両重量は2360kgに抑えられている。EQSよりもきっちり200kg軽い。セダンだからなのか、あるいは軽量化に力を入れた結果かはわからないが、このサイズのEVだったら2.5トンを軽く超えるかと思っていたものが、だいぶ軽く感じられる。

加速感などは最近特に自動車メーカー製EVでは控えめになっている印象で、決して以前のような爆発的加速力は持たない。もっともそれで十分過ぎる加速が得られるから何の問題もないのだが、それゆえに余計、では一体EVのとしての動的特徴をどのように出し、メーカーの個性をどのように発揮していくのか?というところに行き着いてしまうのだ。

今後はハイエンドEVの個性を自動車としてどのように発揮していくか興味深いところ。それだけ高級車の演出は難しいと感じてしまう。

メルセデスベンツ EQE 350+メルセデスベンツ EQE 350+

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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