インドEV市場が日本企業に求める価値とは?…大和合同会社 大和倫之氏[インタビュー]

インドEV市場が日本企業に求める価値とは?…大和合同会社 大和倫之氏[インタビュー]
インドEV市場が日本企業に求める価値とは?…大和合同会社 大和倫之氏[インタビュー]全 1 枚

来たる7月6日、オンラインセミナー「今のインド」モビリティの実態セミナー(第5回)新EV大国の素顔~現地事情を踏まえたビジネスの戦い方~」が開催される。

セミナーに登壇するのは、ベンガルール在住の大和合同会社 代表 大和倫之氏。レスポンスの連載「インド・新自動車大国の素顔」で、急速に発展するインド自動車市場の動きを伝えており、セミナーでは、インドで注目のスタートアップの講演をモデレートしている。

今回のセミナーでは、「インドのEVを取り巻く現地の最新事情」について解説してもらう。

セミナーのテーマは以下の通り。

1.四輪以外・自動車大手以外が主導するインドEV市場
2.業界構造、設計思想、技術動向
3.インドEV市場で生き残る条件
4.EV普及を加速する革新的な政策とその出来方
5.日本企業の新EV大国での戦い方
6.質疑応答

セミナー当日はQAセッションも設けられ、大和氏に現地の最新事情を聞くことができる。セミナーの詳細・申し込みはこちらから。

インタビューではセミナーの見どころを聞いた。

■先行する二輪スクーターと三輪貨物車

インドでは2021年が「EV元年」となりました。まず背景から教えてください。

「インドEV市場は、EV元年を迎えた2021年を機に、2022年は100万台を超え、2023年は5月末時点で既に60万台超を記録しています。直近の販売台数に関しては補助金スキームFAMEの改正に伴う反動が懸念されていますが、南インド・ベンガルールの街中の様子をうかがう限りでは、電動化の流れはますます加速するばかりだと感じています。」

「内燃機関車と比較した場合の初期投資の大きさや航続距離、充電インフラなど諸々の問題は指摘されつつも、これを補い余りある日常的な運用やメンテナンスコストの安さ、二酸化炭素や排気ガスといった環境性能が評価されています。これらの各種メリット・デメリットをバランスさせられる用途・業界・プレイヤーから導入が進み、その結果の表れが二輪スクーターや三輪貨物車の電動化となっています。」

■韓国・中国勢がシェアを広げる理由

クルマ(四輪)ではなく二輪、三輪の電動化だと、日本の自動車業界とは直接関係のない話と思われる方も多いと思います。もう少し詳しく教えてください。

「まず、日本企業の方から見ていきますと、手掛けている多機能・高精度な付加価値型製品は、車両価格の安い新興国の二輪スクーターや三輪貨物車などは対象になっていないでしょう。また、日本を始めとした先進国市場を対象とした高性能化が求められる製品群の中から、ドンピシャでインドのニーズに合致するものを探し出すのも困難だと思われます。さらには、日本企業が期待するような価格感がインド市場で受け入れられるとは考えづらいです。」

「しかし、インドのニーズが遅れているのかというと、必ずしもそうではありません。常に世界中の最新情報に触れ、何か使えるアイディア・技術・機会はないかと探っているのがインド人経営者です。いったん興味を惹かれるものが目につけば、相手が誰であれ自らの主張・要望を明確にしたメッセージを送って協業可能性を探り始めます。例え商売にはならなくても、彼らが今、欲しいもの、インド市場で今、売れるものは何かを知ることは、市場の来し方行く末を理解するのにはとても有用です。」

「韓国・中国勢はこのような今のインドの要求に応えてシェアを広げています。インド・新自動車大国の素顔でも繰り返し伝えている通り、頑なに日本の常識にこだわっているように見える日本勢を尻目に、世界的な疫病騒動・経済停滞下で韓国・中国OEMが大きくシェアを伸ばしたのもその一例です。特に電動化については、中国勢がインドOEMを全面的に支援する姿勢を見せつつ、母国の強力なサプライチェーンを活かした柔軟かつ、したたかな戦略・戦術の巧みさが目立っています。」

■日本企業にとっての事業機会とは

日本企業はこのインドEV市場をどう捉えたらよいのでしょうか?

「最大の機会は、OEMを始めとした業界プレイヤーも消費者も行政さえも、大いに「未成熟さ」を残していることです。そもそもEVに限らず何事においても、キッチリかっちり規定され、それを少しでも外れれば訂正を求められたり社会的な批判を浴びる、という環境とは程遠いインドです。もちろん、消費者の安全性や詐害的な行為に関しては当局を始めとした厳格な姿勢が示される一方で、そうでない事項に関しては広く柔軟により良い提案が聞き入れられる余地があります。」

「世界随一の繊細な国民性でもある日本市場で培われた経験・知恵・技術こそが今のインドが求める価値であり、今後、世界に広がっていくEVエコシステムの基礎固めに最も貢献が期待される要素でもあります。」

「新EV大国のどの分野に、日本のどのような経験・知恵・技術を持ち込む余地があるか、その成り立ち・動向を知ると同時に的確にアプローチすることがとても重要です。」

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このインタビューで取り上げた話題のほかにも、セミナーでは大和氏の幅広い見識を聞くことができそうだ。QAセッションも行われるので、今のインドに興味のある方はぜひ参加の検討をされたい。

セミナーの詳細・申し込みはこちらから。

《レスポンス編集部》

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