フィルム装着車の車検・整備は、基準に則った可視光線透過率の測定が重要

ARCネットワークサービス研修会にて、可視光線透過率の測定に関する実演を行った
ARCネットワークサービス研修会にて、可視光線透過率の測定に関する実演を行った全 5 枚

アフターマーケット事業者の地域連携を促進するARCネットワークサービスにおいて東北研修センターを務める株式会社山形部品(代表取締役:五味健一)は、5月に開催したARCネットワークサービス研修会にて、可視光線透過率の測定に関する実演を行った。

今回の実演は、今年1月13日に国土交通省 自動車局整備課から各地方運輸局および沖縄総合事務局に向けて、指定自動車整備事業における着色フィルム装着車の指導内容に関する通知が行われたことを受け、独立行政法人自動車技術総合機構の検査場が使用する「可視光線透過率測定器PT-50、PT-500 (光明理化学工業製)」と、簡易的な測定器では計測値にどの程度の差が生じるのかを知ることで「あらためて透過率の判断について一考頂くキッカケになれば」との想いで企画された。

測定結果は以下の通り、担当者によると最大で6%差が生じるケースもあるという。つまり、簡易的な測定器では70%以上であったとしても、検査場が使用する可視光線透過率測定器で計測すると70%未満になることも起こりえるのだ。

※ 今回測定に使用した機材は、左:PT-500(光明理化学工業製)、右:TINT METER TM2000(日本仕様のTM2000JPとは異なる)

カーフィルムには、遮熱効果や紫外線をカットする効果があり、特に夏場の日差しが強く暑い時期には心強いアイテムである。但し、規定の値を少しでも下回ればそれは“違法改造車”となってしまう。そうならない為にも、フィルムの施工及びフィルム装着車の車検については、保安基準の要件を満たす可視光線透過率測定器のあるところで行うことをお勧めする。

光明理化学工業に聞いてみた

では、何故このような違いが発生するのだろう?

この疑問について、参考品として例示された「可視光線透過率測定器PT-50、PT-500」の販売元である光明理化学工業株式会社に伺ってみた。開発を担当した小林康晃氏(特販部)は分厚い資料の中から、ポイントとなる部分をピックアップし説明をしてくれた。

小林氏によると、そもそも本件に関する法律は、道路運送車両の保安基準 第29条(窓ガラス)3項に記載されている「自動車(被牽引自動車を除く。)の前面ガラス及び側面ガラス(告示で定める部分を除く。)は、運転者の視野を妨げないものとして、ひずみ、可視光線の透過率等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない」という記述に該当し、その中にある“告示で定める基準”というのが、細目告示 第117条 / 第195条「貼り付けられ、透明であるもの、可視光線透過率が70%以上であること」「運転者が他の自動車、歩行者等、交通信号機を確認できるものは透明であるとされるものとする」という部分にあたるという。

ここまでは広く業界に周知されていることなのだが、問題となるのはこの先「可視光線透過率試験」について、その詳細が周知されていないことを指摘する。要点としては、可視光線透過率測定は国連による自動車の協定規則第43号に則りJIS R3212 「自動車用安全ガラス試験方法」の基準に準拠していなければならないが、その中の「光源は、色温度2,856±50 Kに点灯した白熱電球、又はこれと同等のものとする」と「受光器はJIS Z8781-3に規定するXYZ表色系に基づく等色関数(λ)に対応する感度をもつ」に簡易的な測定器が則しているか確認が必要だと言う。

つまり確認が出来ない限り、国土交通省の定める“基準に適合する可視光線透過率測定器”にあたるかどうか分からないということだ。

いずれにせよ、可視光線透過率が70%以上である証明には基準に則った測定が必要である以上、フィルムの施工を行う事業者や継続検査を行う事業者には、ぜひ保有していて欲しい機材である。

しかし実際には、近年注目を浴びているとはいえフロントガラスへのフィルム装着はまだまだ少数派であり、可視光線透過率測定器の普及は進んでいないそうだ。現在は、公的機関(運輸支局や軽自動車検査協会)以外では、一部のディーラーやフィルム施工店が保有しているようだが、独立系の指定整備事業者で保有しているケースは稀だという。

フィルム装着車の車検・整備には、基準に則った可視光線透過率の測定が重要

《カーケアプラス編集部@市川直哉》

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