テスラに学ぶ? 自社に都合よく市場環境を整えた上でインドに参入する手法【インド・新自動車大国の素顔】

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著しい成長を続けるインドの自動車市場。自動車メーカーの参入やシェア拡大のハードルとなるのが、完成車に課される100%の輸入関税だ。連載「インド・新自動車大国の素顔」の本記事では、テスラのサプライチェーン構築に関する報道を元に、インド参入手法についての成功例を分析する。

サプライチェーン構築で関税60%は相当に

6月初旬、テスラがサプライチェーンをインドに構築する、という記事を目にした。これまで完成車輸入によるインド参入を前提としていたテスラが参入方針を変えた、という報道だ。

「Tesla agrees to set up vendor base in India」(Express mobility News)
https://www.financialexpress.com/business/express-mobility/industry-express-mobility/tesla-agrees-to-set-up-vendor-base-in-india/3116141/

現状、完成車には100%の輸入関税が課されており、例えば500万円相当の車両を輸入する場合、同額の500万円分の輸入関税が課されて、値付けはこれらの合計の1000万円に更に国内外の輸送費や流通マージン、登録費用等を加味した価格とせざるを得ない。いかにプレミアム・セグメントを狙うテスラとは言え、このプライシングではインドで広く市場の支持を集めるのは難しいと考えたテスラは、インド市場への参入条件としてインド政府に対して、この関税を40%に引き下げる特別措置を講ずるよう求め続けていた。これに対して今回、両者の歩み寄りを経て、60%相当の関税に抑える措置が講じられる模様だ。

テスラと政府の最終的な妥結策となるか

テスラは世界的にコロナ騒動の真っ只中にあった2021年1月に、ベンガルール都心のシェアオフィスにインド法人登記をしているが、その数年前から国内各地の工業団地を訪れて進出先を探っている、という話は聞こえていた。これに応じて各州の政府や政治家などが誘致合戦を繰り広げ、イーロン・マスク氏が実際に訪れて視察した工業団地などは、「テスラが我が町に工場設立することを決めた!」といった政治家の勇み足での発言が話題になったりもした。


《大和 倫之》

大和 倫之

大和倫之|大和合同会社 代表 南インドを拠点に、日本の知恵や技術を「グローバル化」する事業・コンサルティングを展開。欧・米の戦略コンサル、日系大手4社の事業開発担当としての世界各地での多業種に渡る経験を踏まえ、シンガポールを経てベンガルール移住。大和合同会社は、インドと日本を中心に、国境を越えて文化を紡ぐイノベーションの実践機関。多業種で市場開拓の実務を率いた経験から「インドで試行錯誤するベースキャンプ」を提供。インドで事業を営む「外国人」として、政府・組織・個人への提言・助言をしている。

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