マツダ CX-5 が商品改良…強みを活かしてスポーツ系を拡充、個性明快なグレード体系

左からSports Appearance、Retro Sports Edition、Field Journey
左からSports Appearance、Retro Sports Edition、Field Journey全 31 枚

マツダは『CX-5』を商品改良し、9月4日から予約受付を開始した。「Exclusive Mode」、「Sports Appearance」、「Field Journey」のデザインを部分変更すると共に、特別仕様車「Retro Sports Edition」の新設定や「L Package」の廃止などグレード体系の再編も行っている。

◆スポーティ系の比重を高めた新グレード体系

左がField Journey、右がSports Appearance、奥はBlack Tone Edition左がField Journey、右がSports Appearance、奥はBlack Tone Edition

昨年はラージ系商品群第1弾の『CX-60』が登場し、『CX-8』の大幅商品改良も行われたが、『CX-5』の販売がその影響を受けることはなく前年と同じ台数を維持。なかでも「Sports Appearance」や「Black Tone Edition」というスポーティ系のグレードが、『CX-5』全体の半数以上を占めるほど好評を得た。また、これらは他のグレードに比べて他社製品からの乗り換えが多く、マツダの顧客ベースの拡大にも貢献しているという。

そこで「Sports Appearance」と「Black Tone Edition」の中間に新たな特別仕様車の「Retro Sports Edition」を設定し、スポーティ志向の需要により手厚く対応したのが今回のグレード体系の大きな特徴だ。

その一方、「Proactive」を廃止してお買い得グレードを「Smart Edition」に一本化。プレミアム系グレードも「L Package」を廃止して、よりラグジャリーな「Exclusive Mode」だけに絞った。

もともと「Black Tone Edition」は「Proactive」をベースに、外装は黒いパーツで引き締め、内装はブラック基調に赤いステッチでスポーティさを強化したグレード。続いて2021年11月に登場した「Sports Appearance」は、より充実装備の「L Package」をベースとし、基本的には同様のデザイン変更でスポーティ表現を極めた。これらが好調に売れた結果、それぞれのベースになったグレードの存在感が薄まったことは否めない。

とくに「L Package」の販売は昨22年、CX-5全体の5%以下にまで低迷した。そこでこれを廃止。上質かつスポーティなグレードを求める人には引き続き「Sports Appearance」で応えつつ、プレミアム志向の需要には上質を極めた「Exclusive Edition」で対応することになったわけだ。これまでピュアホワイト内装はL Packageだけに設定されていたので、新型『CX-5』でそれを選べなくなるのは残念だが、これも需要が少なかった結果である。

同じく21年11月に追加されたアウトドア志向の「Field Journey」は、こちらも販売シェアは5%程度だったが存続する。国内商品マーケティング部の下村周平氏によれば、「Field Journeyは4WDだけなので、数字が伸びないのは想定内だった」とのこと。そしてこう続けた。「初代CX-5のお客様に選ばれており、(スポーティ系よりも)年齢層の高い40~50代のお客様が多い」。

初代CX-5はマツダ・ファン待望のSUVだった。本格SUVとしてそれを買った人たちにとって、スポーティなグレードより「Field Journey」がフィットするということだろう。そんな需要に応えるべく、主にインテリアのデザインをブラッシュアップしたのが新しい「Field Journey」だ。

◆縦基調ブロックメッシュのラグジャリー感

Sports Appearance 従来型はグリルに赤いアクセント(初代ロードスターのクラシックレッド)があったが、新型はそれを廃止した。Sports Appearance 従来型はグリルに赤いアクセント(初代ロードスターのクラシックレッド)があったが、新型はそれを廃止した。

「Exclusive Mode」と「Sports Appearance」のフロントグリルは、太くて短い縦線を無数に並べた縦基調ブロックメッシュのパターン。従来型のブロックメッシュという基本を踏襲しつつ、横基調から縦基調に変えた。

一般論としてグリルパターンを縦基調にすると天地方向に分厚く見え、ラグジャリー感が増す。しかも上位機種『CX-8』の最上級「Exclusive Mode」も縦基調ブロックメッシュ。それと同じパターンにすることで、ラグジャリー感をわかりやすく訴求しようという作戦だ。

「Exclusive Mode」のグリル色はガンメタ塗装からピアノブラック塗装に変更し、スポーティさを強化。従来の「Sports Appearance」はポリカーボの材着で艶のあるブラックを表現していたが、新型は「Exclusive Mode」と同じピアノブラック塗装を採用し、同時に従来型にあった赤いアクセントを廃止した。

つまり「Exclusive Mode」と「Sports Appearance」のグリル本体が共用になったわけだが、シングネチャーウイングが違う。「Exclusive Mode」はラグジャリー感が漂うクロームメッキ、「Sports Appearance」は精悍な漆黒メッキ。この差異化は従来と同じだ。

「Exclusive Mode」のフロントバンパーがエアダム部分までボディ色なのも従来と同じだが、下端のセンターガーニッシュをブラックからシルバーに変更。ホイールの色もブラックからダークガンメタの塗装に変えた。黒い部分を減らして「Sports Appearance」との差異化を図りつつ、ラグジャリー感をもう一押しする細部の工夫である。

プレミアム志向の需要を一手に引き受ける「Exclusive Edition」は、内装デザインもアップデートした。従来型でセールスポイントだったインパネの本杢加飾をやめて、ハニカム柄を施したシルバー加飾を採用。シート表皮はディープレッド色のナッパレザーを踏襲しつつ、ステッチをダークレッドからライトグレーに改めてシート形状を引き締めた。ピアノブラックのグリルと同様、ラグジャリーななかにもスポーティさを醸し出す内装になっている。

◆Field Journeyからライムグリーンが消えたワケ

Field Journey 従来型はグリルにライムグリーンのアクセントがあったが、新型はそれを廃止した。Field Journey 従来型はグリルにライムグリーンのアクセントがあったが、新型はそれを廃止した。

従来の「Field Journey」には、フロントグリルにライムグリーンのアクセントがあり、内装でもシートのステッチやパイピング、ベントグリルに同じライムグリーンを配していた。アウトドア感を色でわかりやすく表現するためのライムグリーンだったが、新型はそれを廃止した。

「本格的にアウトドアを楽しむ人は、気兼ねなく使えることに価値を求める」と松田陽一チーフデザイナー。前述したように「Field Journey」は初代CX-5からの乗り換えが多く、その人たちも「遊び心よりも実際に使いやすいカラーコーディネートを志向している、という市場からのフィードバックがあった」という。

そこでインテリアはブラック基調のモノトーン・コーディネートで機能感を訴求。ステッチやパイピングはライトグレーに変更し、ベントグリルには質感の高いサテンクロームを採用した。従来型のシート表皮はメイン材がスエード調人工皮革のグランリュクス、サイド材が合成皮革だったが、新型はメイン材も合成皮革に変えた。汚れても拭き取りやすいからだ。

なお、新設定の「Retro Sports Edition」については別記事でレポートしているので、具体的な内容はそちらを参照いただきたい。価格的には「Sports Appearance」と「Black Tone Edition」の中間だが、デザインテイストは中間ではない。

「Sports Appearance」と「Black Tone Edition」が魂動デザインの王道を行くスポーティ表現だとしたら、「Retro Sports Edition」はそこから少しハズしたスポーティさを表現するもの。好評のスポーティ系グレードの幅を広げ、新たな需要を喚起するのが「Retro Sports Edition」の役割である。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 軽自動車よりも小さい! 15歳から運転できるオペル、約132万円から販売
  4. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る