【BYD ドルフィン 新型試乗】「ロングレンジ」の乗り心地は良くできたフランス車のよう…石井昌道

日本市場専用に開発

一充電走行距離は400km

高速道路でも不満のない動力性能

さらに乗り心地の良いロングレンジ

BYD ドルフィン
BYD ドルフィン全 20 枚

9月20日に発表となるBYD『ドルフィン』は日本市場では1月31日に発売された『ATTO3(アット3)』に続く第2弾商品となる。アット3は世界中で人気の高いミドルサイズSUVでライバルも多いが、ドルフィンは身近で手が届きやすいコンパクトカーで、意外やライバルは少ない。アット3は発売から7か月で700台以上を販売したというが、それ以上の伸びが期待できそうだ。

◆日本市場専用に開発

ボディサイズは全長4290×全幅1770×全高1550mmでコンパクトカーといってもBセグメントとCセグメントの中間程度で、写真で見ていた印象よりも大きい。しかも「e-Platform3.0」と呼ばれるBEV専用プラットフォームを採用しており、ホイールベースは2700mmと長くとられているので、後席は想像以上に広々としている。コンパクトカーのBEVはセカンドカーとして選択しやすいのはもちろんだが、ファーストカーしても使えそうだ。

BYD ドルフィンBYD ドルフィン

オリジナルのドルフィンは全高が1570mmとなっているが、日本仕様は立体駐車場への対応として1550mmに改められている。どこで20mm下げたかというと、アンテナを作り直したそうで、サスペンションなど走りに影響が出る部分は変わらないという。その他、CHAdeMO対応、右ウインカー対応、日本語音声認識対応、誤発進抑制システムの追加など、日本市場専用に開発されている。

◆一充電走行距離は400km

BEV専用プラットフォームは効率良くバッテリーを搭載できるのもメリットだが、エントリーモデルのドルフィンはバッテリー容量44.9kWhで一充電走行距離400km(WLTCモード)、上級グレードのドルフィン・ロングレンジはバッテリー容量58.56kWhで一充電走行距離476km(WLTCモード)となっている。

BYD ドルフィン(左)とドルフィン ロングレンジ(右)BYD ドルフィン(左)とドルフィン ロングレンジ(右)

BYD独自のブレードバッテリーは、一般的な三元系リチウムイオンバッテリーに比べるとエネルギー密度が低くてBEVには不向きと言われたリン酸鉄リチウムイオンバッテリーだが、車両搭載状態では三元系とさほど変わらない密度となっている。三元系は、バッテリーの最小単位のセルをいくつかまとめてモジュール化し、さらにそれをいくつかまとめるとともに冷却系などを含めたパックとして車両搭載するが、ブレードバッテリーは熱安定性が高いという利点を活かしてモジュールを省いてセルから直接パックに。冷却系も三元系ほど大げさにする必要がないので、実用的なバッテリー容量を搭載可能となるのだ。

◆高速道路でも不満のない動力性能

BYD ドルフィンBYD ドルフィン

まずはエントリーモデルのドルフィンで街中を走り出す。モーター駆動の常で、発進時から十分な力があるとともにレスポンスもいいから、じつに運転がしやすいのはBEVならではだ。モーターは最高出力70kW(95ps)、最大トルク180Nmで驚くほど速いというわけではないが、高速道路でも不満のない動力性能で、NAエンジンのコンパクトカーなどに比べればずっと力強くてドライバビリティもいい。それでいて、低回転・大トルクのモーターらしさを強調しすぎていないところにも好感がもてる。あくまでドライバーフレンドリーで、誰もが普通に運転できる特性を目指しているようだ。

乗り心地に硬さはなく基本的に快適ながら、BEVらしい低重心感があって安定性の両立も果たされている。高速域で大きな凹凸を乗り越えたときには、多少のドタバタ感もあったのだが、日本のコンパクトカーと比べても平均以上ではある。

◆さらに乗り心地の良いロングレンジ

BYD ドルフィン ロングレンジBYD ドルフィン ロングレンジ

ドルフィン・ロングレンジに乗り換えると、乗り心地がさらに良くて驚いた。スタンダードモデルはリアサスペンションがトーションビームなのだが、ロングレンジはマルチリンクを採用しているとあって、大きな凹凸でもストロークが豊かでドタバタ感が見事に消え去っている。しかも低速域からしっとりと潤いのある乗り味で、良くできたフランス車のようなのだ。

さらに、モーターも150kWと倍近い出力になっていて、明確に力強い。発進時にアクセルを踏みつけてみるとフロントタイヤを軋ませながら加速していくが、ステアリングがとられることはなく、上手にトルク制御されている。80km/h以上でも加速の頭打ち感がなく伸びやか。価格差はそれなりにありそうだが、高速ロングドライブの機会が多いのならロングレンジをチョイスしたいところだ。

気になる価格は9月20日の発表まで明らかにされない。ライバルを探すと、日産『リーフ』の一充電走行距離400kmのモデルは408万1000円~444万8400円。プジョー『e-208』が一充電走行距離395kmで469万4000円~512万4000円。アット3が440万円なので、けっこうな競争力のある価格を期待できそうだ。

石井昌道氏とBYD ドルフィン(左)、ドルフィン ロングレンジ(右)石井昌道氏とBYD ドルフィン(左)、ドルフィン ロングレンジ(右)

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

石井昌道|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストに。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイクレースなどモータースポーツへの参戦も豊富。ドライビングテクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

《石井昌道》

石井昌道

石井昌道|モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストに。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイクレースなどモータースポーツへの参戦も豊富。ドライビングテクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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