CASEに貢献するAGCの技術力を披露、「ディスプレイ」「アンテナ」「センサー」…ジャパンモビリティショー2023

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AGCブース(ジャパンモビリティショー2023)
AGCブース(ジャパンモビリティショー2023)全 30 枚

素材メーカーのAGCは、10月26日に開幕したジャパンモビリティショー2023に出展。“ガラスは一等地である”との考え方の下、CASE時代に求められる技術を披露した。

ガラスは長い間、外部と内部を間仕切る役割を果たすものとして使われてきた。しかし、それはいつしか熱や音をコントロールするようになり、今やその対象は情報までをも含んだ“マルチファンクション化”となっている。これにより、運転したい人はタッチ操作1つですべての情報を見ることができ、同乗者は全面をスクリーンとしたガラスエリアで映画やゲームなどが楽しめるようになっていく。このような例を1つとっても、 CASE時代において“ガラスは一等地である”というわけだ。

その“一等地”をフル活用すべくAGCが開発を進めているのが「ディスプレイ」「アンテナ」「センサー」の3つの領域だ。それぞれの技術や製品について詳しく紹介していこう。

高い安全性、デザイン性、視認性を実現した「ディスプレイ」

まずは「ディスプレイ」。会場にはダッシュボードを模した、左右に広がりながら緩やかに湾曲する大型のディスプレイが展示されている。実はこれこそがAGCが持つ高い技術力によって実現した 「車載ディスプレイ用カバーガラス」なのだ。

車載ディスプレイは、ナビゲーションや車内機器の操作など、人とクルマをつなぐ必要不可欠な存在だ。これから先、運転支援などの情報表示が増えることで、車載ディスプレイのさらなる高機能化・大型化が進んでいくのは必須の流れ。そうした状況下でも、ディスプレイの視認性を確保しつつ、高い安全性を持つカバーガラスを実現しているのがAGCの技術力だ。

そもそもガラスは「割れる」というイメージが強い。そんな中でAGCが提供するカバーガラスは社内で設けている衝突規格に耐えうる安全性と強度を確保して製品化されている。もちろんガラスである以上、絶対に割れないということではない。しかし、AGCが提供を開始した2012年以来、顧客からのクレームは1件も発生していないという。それは安全性について十分担保されていることを示していると言えるだろう。

もう1つ重要なのがデザイン性で、カバーガラスが大型化すればするほど欠かせないものになってくる。展示されているカバーガラスは厚みが1.3mm。その板ガラスを緩やかに湾曲させており、見た目に美しさを感じさせると同時に、乗員にも広さと圧迫感を与えないメリットをもたらしている。

湾曲した大型ディスプレイにも対応可能湾曲した大型ディスプレイにも対応可能

細かく言えば、湾曲したカバーガラスと組み合わせる液晶パネルは平面であって、貼合する上ではモールディングメーカーとのすり合わせが欠かせない。AGCが高精度なガラスの成形技術を提供できているからこそ、そのすり合わせが可能となっているのだ。

また、視認性も見逃せないポイントだ。たとえばサンルーフから差し込む強い光は、ディスプレイの視認性に与える影響が大きい。この点において、AGCはガラス表面に光を拡散させる防眩コーティングを施し、そういった状況下でもディスプレイが鮮明に見えるようにしている。他にも光を反射させない低反射、触っても汚れが付きにくいAnti-Fingerprint(指紋除去膜)処理も施している。これがガラスに対する新たな付加価値を与えているというわけだ。

安定した通信環境を提供する「アンテナ」

次に「アンテナ」である。コネクテッドが進む中でアンテナの重要度はかつてないほど高まっている。その中でAGCが最も重要と考えていることは“通信が切れないこと”だ。運転支援にとどまらず自動運転化が進んでいく中で、通信が円滑に行われている状況は大前提となる。裏返せば、通信でエラーが発生することは、自動運転において致命的とも言えるだろう。

そこでAGCは、電波を減衰することなく車内に持ち込む5G通信対応「Sub6」ガラスアンテナを開発。それらをクルマの四隅に配置することで、安定した高速通信を実現した。ガラスを貼り合わせた中にアンテナを埋め込むため、従来のポールアンテナやシャークフィン・アンテナのように車体デザインに影響を及ぼすことなく済むのが特徴で、それでいて6GHz帯(帯域幅は617MHz-5000MHz)対応の4×4MIMO(Multi-Input Multi-Output)アンテナシステムに対応。これによりLTEから5Gまで幅広い対応を可能とした。

5G-Sub6ガラスアンテナ5G-Sub6ガラスアンテナ

実際の運用としては、1枚のフロントガラスの中、もしくはフロントとリアのガラスに分散配置することを想定している。すでにこの分野では米国のレンタカー会社「Halo.car」が、顧客が乗り捨てた車両を遠隔操作で戻すサービスを2023年1月から商用化している。MaaS普及には通信の安定化・高速化が欠かせない。AGCはこのSub6対応ガラスアンテナによりその実現に貢献する。

「FIRカメラ対応フロントガラス」で夜間交通事故死者の低減へ

そして、自動運転システムの“眼”として要となるセンサー技術についてもAGCが独自の技術で対応を果たしている。それがFIR(遠赤外線)カメラ対応フロントガラス「FIR-windshield」だ。

「FIR(遠赤外線)カメラ対応フロントガラス FIR-windshield」の展示コーナー「FIR(遠赤外線)カメラ対応フロントガラス FIR-windshield」の展示コーナー

今、世界的に交通事故ゼロを目指すADASの普及が進んでいるが、こと夜間だけに絞るとADASの効力はそれほど十分に発揮できているとは言い切れない。米国の調査では歩行者死亡者数の約8割は夜間に発生しているとされ、日本でもその割合は約6割に達する。交通事故死者ゼロの実現は、夜間歩行者事故の低減抜きには考えられない。その対応に効果的とされているのがFIR(遠赤外線)カメラなのだ。

このカメラは可視光線がない状態でも温度差から対象物を検知できるもので、その検出距離は200~300mにも達する。しかし、その能力があるにもかかわらず、ADAS用としてFIRカメラの普及は思ったほど進んでいない。背景には「FIRカメラの価格が高かったことが大きいが、その活用法が十分に発揮されていない状況にもあった」と担当者は話す。

実はフロントガラスには人間の目で高い視認性を確保するために、波長が400~800nmの可視光を70%以上透過させる透明なガラス材料が使われることが車両基準として設けられている。しかし、この材料は波長が8~14µmの遠赤外線をまったく透過しない。この問題があったため、フロントガラス越しにFIRカメラを取り付けることはできず、バンパーやフロントグリル付近に取り付けられて来たのだ。特にバンパーやフロントグリルでは汚れを取り除くことが難しく、何より取り付け位置が低いため、センシング能力が低くなる。

そこでAGCは考えた。可視光を透過するフロントガラスの一部をくり抜き、遠赤外線を透過するガラスに置き換えるという新たな発想だ。これにより、従来のフロントガラスとしての使い勝手を保ったまま可視カメラとFIRカメラを並べて活用することを可能とした。この方法なら捉えられる画像がほぼ同じアングルとなるため、画像の重ね合わせがしやすくなり、高い精度の画像情報をADASに組み込むことができる。まさに素材の分野で材料と製造技術に多くの知見を持つAGCならではの画期的な製品と言えるだろう。

AGCは異なった素材を組み合わせることで発生する強度と長期にわたる信頼性の問題も、過酷な耐久試験を繰り返すことで解決。ワイパーメーカーとも協業して、ワイパーによる表面の払拭や耐久性を確認できるまでになったという。しかも最近になって、可視光を透過するフロントガラスと遠赤外線を透過するガラスの接合部の凹凸を減らすことに成功。よりスタイリッシュに仕上げる目標を達成するに至ったとのことで、量産化に向けて着々と開発が進んでいる。

近年はFIRカメラの価格も下がり、サイズもコンパクト化が急速に進んでいるという。こうした状況を踏まえると、夜間ドライブが一層安心して楽しめる日は予想よりも早く訪れるのかもしれない。

「FIR(遠赤外線)カメラ対応フロントガラス FIR-windshield」「FIR(遠赤外線)カメラ対応フロントガラス FIR-windshield」

「100年に一度の大変革」とされる中で、AGCはこれら「ディスプレイ」「アンテナ」「センサー」の技術により、次世代モビリティの市場創出をリードしていく考え。これによって生まれる新たなイノベーションは、ユーザーにとっても安全かつ快適なモビリティの体験へと誘ってくれるに違いない。ジャパンモビリティショー2023のAGCブースではそんな世界観が一足早く実感できる。

AGCのモビリティ関連の情報はこちら

《会田肇》

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