EV電欠駆けつけ特約はアリか?…保険会社がEV試乗会を企画するわけ

セゾン自動車火災保険が主催するEV試乗会
セゾン自動車火災保険が主催するEV試乗会全 8 枚

セゾン自動車火災保険が主催するEVの試乗会が11月某日、東京の海の森水上競技場にて開催された。30組ほどの希望者が参加し、レクサス、BYD、BMW、ボルボカーズ、ヒョンデなどのEVを乗り比べていた。

電欠かけつけサービスのデモ風景


セゾン自動車火災保険は「おとなの自動車保険」という商品を取り扱っているダイレクト損保だ。大人の自動車保険は、LINEで保険会社と連絡がとれるといった特徴がある。契約者には4~50代、首都圏在住者が多いという。そのようなダイレクト損保の会社が、なぜEV試乗会を企画したのか。

◆次はEV、と考えている人向けに

「次はEV、と考えている人向けに、新しいサービスを提供したいという目的があります」(事業推進部 サービス開発 主任 藤田真友氏)

同社では、自動車保険以外にも事業を広げていく考えのもと、昨年に「サ・ポ・ポ」というウェブサイトを立ち上げている。ここでもEV関連の情報提供コンテンツを掲載したり、充電スポットの検索サービスを始めたりしている。さらに「エニカ」によるEVシェアカーの申し込み、オンラインのEV販売といったパートナービジネスの輪を広げている。

最新EVの試乗会も、この取り組みのひとつとして企画された。集まったのはほとんどが非EVオーナーで、EVに興味のある人だ。このような集客が可能なのは、ダイレクト損保ならではだという。代理店を介さないため、顧客の属性情報や意向のデータを直接持っているからだ。積極的に購入意思がなくとも、漠然とEVに興味を持っている層に的確にリーチできている。

◆3台のEVに試乗

試乗できる車両は、主催者が事前に割り当てる。希望の車両を選ぶことはできないが、協力5社のうち3台を試すことができる。試乗時間は30分。会場周辺の一般道(ゲートブリッジの往復)をディーラーの説明員とともに試乗運転する。3台のメーカー・車種は重複しないようになっているが、参加者の中には、試乗経験があるという理由で、希望車種への変更ができた人もいた。

参加者の声を拾ってみると、「3台も試乗できる機会はよかった」「EVへの不安はあったが、静粛性、加速のよさ、乗り心地を試すことができた」などと、快適性や走行性能に関する評価が高かった。一方「やはり地方在住だと充電設備が気になる」という声もあった。一般的な試乗会では、充電を試す機会はないため、充電、電欠に対する理解は難しいようだ。

ようは12Vバッテリーのジャンプケーブルの原理で2台のEVをつなぐだけようは12Vバッテリーのジャンプケーブルの原理で2台のEVをつなぐだけ

◆路上での緊急充電サービス

充電・電欠について、この試乗会ではセゾン自動車火災保険のもうひとつの取り組みも紹介された。まだ具体的なサービスは検討中だが、保険の特約に電欠対応サービスを取り入れるというものだ。会場には、民間ロードサービスの会社も来ており、試乗会の合間に、サービスカーによる路上での緊急充電サービスと、EVどうしをケーブルでつなぐ充電サービスのデモが行われた。

サービスカーによる電欠対応では、ベルエナジー製の定格3.45kWh・出力100Aのポータブルバッテリー(ROADIE V2)を使ったDC急速充電を行う。ロードサービスのバンに3段搭載し、現場でこれをつないでチャデモのプラグで充電を行う。目安は、30分で40kmぶんの充電が可能だという。

もうひとつのEVどうしをケーブルでつなぐV2Vの充電器は、オリジン「POCHA V2V」(可搬型EV充放電器:開発中)のソリューションだ。POCHA V2Vは、黄色い箱の両端にチャデモのプラグケーブルが2本でている形だ。バッテリーは他のEV(レスキュー車でもよい)を利用して、2台のチャデモプラグをつなぐ。スイッチを入れれば、両車とネゴシエーションを行い、残量の多い方から少ない方に充放電が始まる。手動で充電方向を切り替えることもできる。こちらは30分で30kmほどの充電が目安だ。

◆電欠ロードサービスを検討

どちらも実際のサービスを想定した実験が行われているという。セゾン自動車火災保険もこれらのソリューションを利用した電欠ロードサービスを検討しているという。

電欠の際の充電は、自宅または最寄の急速充電器までたどりつければよいので、わざわざ満充電させる必要はない。充電ポイントがわかっていれば、充電時間は10分、15分でもよいかもしれない。EVオーナーなら、実際に電欠を起こすことは稀であることがわかっているが、いざというときロードサービス特約に充電サービスが含まれるのはうれしいはずだ。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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