【ヤマハ XSR125 試乗】排気量に縛られて価値をはかる時代ではない…伊丹孝裕

ヤマハ XSR125
ヤマハ XSR125全 28 枚

ヤマハが「スポーツヘリテージ」と呼ぶネオクラシックカテゴリーに、『XSR125 ABS』(以下、XSR125)が加わった。これによって、『XSR900』と『XSR700』に次ぐ、3モデル体制が完成。その走りの実力を試してみた。

ヤマハ XSR125 詳細画像

◆間口の広いキャラクター性

ヤマハ XSR125(左)とMT-125(右)ヤマハ XSR125(左)とMT-125(右)

『XSR125』の発売が、2023年12月8日から始まっている。同年10月の『YZF-R125 ABS』、11月の『MT125 ABS』に続く125ccモデルで、このクラスへの大攻勢を開始。その中でも、XSR125は年間の国内販売計画台数を3000台としていることから、期待値の大きさが分かる。ちなみに、YZF-R125は1000台、MT-125は800台という数字がヤマハの想定である。

XSR125の台数が多く見込まれているのは、やはりその間口の広さだろう。オーセンティックなデザインとアップライトなライディングポジションは、年齢層やスキルを選ばず、誰がどんなシーンで使っても、バイクならではの自由な感覚を味わえるに違いない。また、カスタムパーツも豊富に用意され、機能性と同時にファッション性も楽しむことができる。

◆XSRらしくレトロで125ccらしくないゆとり

ヤマハ XSR125ヤマハ XSR125

XSR125を前にして印象的なのは、ディティールへの配慮と質感の高さだ。灯火類やメーター、シート、燃料タンクカバー、ハンドル、マフラーエンド&カバー、エンジンのアンダーカバーといった外装パーツのほとんどすべてが専用に誂えられ、YZF-R125やMT-125が放つシャープさとは真逆のクラシカルさを纏っている。

実際、その佇まいは落ち着いたもので、塗り分けられたヘッドライトナセル、それを支持するアルミステー、3つのパーツで構成されるフロントフェンダーなどが上質さに貢献。また、フロントブレーキのキャリパーは、構造自体はYZF-R125やMT-125のものと同じながら、あえてサプライヤーのロゴ(BYBRE)が無いタイプに換装するなど、こだわりは細部にまで及ぶ。

タックロールの入ったシートの高さは810mmを公称する。このクラスのモデルとしては、やや高い位置にあり、両足のかかとで踏ん張ろうとすれば、成人男性の平均的な体格は必要になる。ただし、ハンドルに手を添えても上体はかなり起きているため、足をまっすぐに降ろしやすく、137kgに留められた車重のおかげで、扱いにはプレッシャーを感じないはず。

また、シート形状は見た目通りにフラットで、前に乗ることも、後ろへ荷重ポイントをずらすことも許容。車重は125ccの範疇にありながら、ライディングポジションにはクラスを感じさせないゆとりが確保されている。

ヤマハ XSR125ヤマハ XSR125

エンジンを始動させて走り出す。クラッチレバーの操作力は軽く、ミートポイントも分かりやすい。ストップ&ゴーを繰り返すような場面でも神経を注ぐ必要はなく、低回転域でもスムーズな加速感を得ることができる。だからといって、実用に徹しているわけでもない。スロットル開度やギアポジションによって、吸気側のカムが低速域と高速域で切り替わるVVA(Variable Valve Actuation)を装備しているからだ。

これは、7000~7400rpmの間で作動するもので、その領域に達するとメーター内のインジケーターが点灯すると同時に、スロットルレスポンスがダイレクトなものへと変化。回転フィーリングは一段と爽快になり、クローズドコースなら悠々と100km/hを超えていく。

◆軽快で安定した乗り味

ヤマハ XSR125ヤマハ XSR125

ハンドリングは、その見た目とリンクし、とても落ち着いたものだ。車体の姿勢や荷重をことさら意識しなくとも、前後タイヤが終始一定の接地感を伝えてくれるため、シートに身を預けたまま、ラインをトレースすることができる。MT-125がコーナーで見せる、軽やかなフットワークとは異なり(試乗記は後日掲載予定)、XSR125が発揮する旋回力は、しっとりとしたものだ。

装備を見た時点では、少しダルなハンドリングをイメージしていた。なぜなら、YZF-R125とMT-125がフロントに100/80-17サイズのタイヤを装着するのに対し、XSR125は、110/70-17を選択。ワンサイズ太く、そのトレッドパターンは不整地もカバーするもの(IRC製GP211TRAIL WINNER)だったからだ。したがって、アスファルト上ではレスポンスやグリップ感に物足りなさがあるかと思いきや、いずれもなんら不足はなく、軽快感と安定感がバランス。それでいて、水たまりや砂地のような場所でも躊躇なく通過できる安心感があった。

そうした路面において、いい仕事をするのがABSだ。ブレーキレバーを意識して強く握り込んでも介入は早過ぎず、また介入時のキックバックも必要最小限に抑制されている。このクラスのABSは装備の有無が優先され、実際の作動フィーリングは二の次になりがちながら、XSR125のそれはきちんと作り込まれていることが分かる。

◆排気量に縛られて価値をはかる時代ではない

ヤマハ XSR125ヤマハ XSR125

XSR125の車体価格は、50万6000円である。一定の世代はこれに対し、「125でそれは高い」、「そんなに出すなら250が買える」、「俺たちの時代の125は……」と批判するが、そうやって排気量で括り、それに縛られて価値をはかる時代ではない。価格が安いプロダクトにはそれだけの理由があり、高いものもまたそうである。その意味で、XSR125を見て、触れて、乗った時に感じられる満足度は、きちんと価格に寄り添ったものになっている。

■5つ星評価
パワーソース ★★★★
ハンドリング ★★★★★
扱いやすさ ★★★★
快適性 ★★★
オススメ度 ★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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