「縦割り」では勝ち目がないEVビジネス、「再生可能エネルギー」が横串となる…SMART GRID EXPO春~第15回【国際】スマートグリッド展~2月28日開幕

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「縦割り」では勝ち目がないEVビジネス、「再生可能エネルギー」が横串となる…SMART GRID EXPO春~第15回【国際】スマートグリッド展~2月28日開幕
「縦割り」では勝ち目がないEVビジネス、「再生可能エネルギー」が横串となる…SMART GRID EXPO春~第15回【国際】スマートグリッド展~2月28日開幕全 2 枚

◆EVビジネスにおける自動車メーカーの収益性

世界生産の合計シェア4割を誇るグローバル自動車メーカー各社が加盟する、モビリティに特化した世界最大のブロックチェーン国際標準化団体『MOBI(モビリティオープンブロックチェーンイニシアチブ)』の理事を務める深尾三四郎氏は、電気自動車(EV)ビジネスで日本の自動車メーカーはこのままではいずれ衰退せざるを得ないと警鐘を鳴らす。

深尾氏は「伝統的な自動車メーカー、いわゆるテスラやBYDのようにEVを本業とするメーカー以外の、ずっと昔からいる自動車メーカーは原価低減を含めたコスト削減の戦いで利益を生んだところが非常に強い。ところがEVビジネスでは、サプライチェーンの川上にあたる電池メーカーや、バリューチェーンである川下でEVを活用したサービスを提供する企業と比べて、EVを組み立てて売切り型の伝統的な自動車メーカーの収益性は極めて低い」とみる。

EVビジネスの収益性はサプライチェーンの川上、バリューチェーンの川下の両側が高く、真ん中が低いスマイルカーブ(図表参照)になっているというわけだ。

「典型的な例でいうと電池で躍進しているのはBYD、サービスではテスラになる。その“真ん中”は、どう考えても利益がでないビジネスになっている」と深尾氏は指摘する。

「これはスマートフォン業界で起きたことと全く一緒。日本の携帯端末メーカーも“真ん中”でしか存在意義を見出すことができなかったが、川上の電池や液晶パネルといった部材メーカーは韓国や台湾、中国を中心に躍進していった。川下のサービスはプラットフォーマーとしてiOSやアンドロイドのサービスを提供するアプリケーションが利益を稼いで大きくなっていった構図と全く同じ状況にある」

EVエコシステムの「スマイルカーブ」(資料提供 深尾三四郎氏)EVエコシステムの「スマイルカーブ」(資料提供 深尾三四郎氏)

◆資源を握られている日本の武器となるものは

これはEVや電池に関わる技術力や生産能力だけではない。重要なのは「資源」だ。

「BYDやテスラ、電池メーカーのCATLやLGエナジーソリューションも、先回りして電池の資源まで囲い込んでいる。資源を輸入しないことにはモノが造れない日本は圧倒的に不利。スマートフォンで勝ってきた多くの企業がまさに今、EVの世界市場に参入しているが、過去の成功体験にならって同じパターンで攻めてきている。資源を握られているという状況で、日本は“同じ土俵で戦わない”という方法、すなわちEVで勝負しない戦略も必要だし、もしくはその土俵の中で戦うけれども違った攻め方を考えていかなくてはいけない」

では、日本の自動車産業が立ち向かう術とは。深尾氏は、こうした状況を打破するためには「横串を刺す必要がある」として、それが「再生可能エネルギー」であると語る。

「再生可能エネルギーを使うことや運ぶことに脱炭素化としての価値が見出されている。EVに搭載されていた使用済み電池は再生可能エネルギーを蓄えるための調整力としてのニーズがこれから大きく増えていく。再生可能エネルギーを貯めて運ぶ蓄電池が、横串で価値を獲れる新しい技術、製品でありサービスになっていく。ここにどうやって携わっていくのかということを自動車メーカーないし自動車産業は考えていかなければいけない」

そのためには市場のニーズを把握する必要がある。深尾氏は、「EVの使用済み電池を再生可能エネルギーの調整力として、蓄電池を求める需要家がいればそこに対して売ることもできるので、そうした市場を開拓していく。蓄電池を必要としている人たちのニーズをちゃんと把握することも自動車メーカーやディーラーは求められる。まさにこれまでの縦割りとは違う発想、横串で再生可能エネルギーを扱っているという新しい価値を、新しい資源に価値を見出している人たちに対してサービスをしていくことが必要」だとした。

◆地域完結型の再生可能エネルギーとEVを結びつける

その一方で深尾氏は、「再生可能エネルギーは地産地消できる地域完結型で、循環型モデルを造るためのインフラになる」と語る。これから、秋田の風力発電や、熊本を中心とした九州における再生可能エネルギーを活用した新産業の議論が進むという。

そうした地域完結型の再生可能エネルギーとEVを結びつけた新しいビジネスモデルとして深尾氏は、「食と農業」を挙げる。

「おらが町の旨いモノや、農業は日本が強い。訪日客がわざわざ日本まで来て味わったり、体験したりしている。これを売上創造の機会としてとらえて、日本が得意な軽自動車や農業用機械をEV化して再生可能エネルギーを使って動かすことで地場の農産品の脱炭素化を進めればブランド力強化にもつながるし、何よりも訪日客が増える。また、欧州が農産品も国境炭素税の対象とするようになれば、脱炭素化された農産品の輸出競争力が高まる」

コロナ禍による影響は収束を見せ、インバウンド需要は再び高まっている。そして日本におけるEV化の波もいよいよ本格化を見せようとしている。2024年、日本の自動車産業、そして再生可能エネルギーを取り巻く環境はどのようになっていくのか。

「2024年はそうしたEVと再生可能エネルギーに絡む地域で重要な首長選挙がある。次の首長が何を政策提言に、また何を産業振興の核として据えるのが良いかと考えた時に、間違いなく再生可能エネルギーと、それに絡むEVを活用した何かになる。2024年は各地方で新しい価値を生み出すことを議論する非常に良い機会になる」

◆いかに地の利を生かした戦い方をするか

そう話す深尾氏は、2月28日に東京ビッグサイトで開幕する「SMART GRID EXPO春~第15回【国際】スマートグリッド展」の最終日3月1日に行われる特別公演で「選挙イヤー2024 エネルギー×モビリティでの『縦割り』打破による地域経済の活性化」をテーマに登壇する。

深尾氏は講演に向けて「これまでのモノ造りでは、縦割りや最新技術で勝負しても日本の勝ち目はあまりない。いかに地の利を生かした戦い方をするかということを考えると、地方に行けば実はいろんなネタがあるということを知って頂きたい。また、自動車産業における「脱・縦割り」の世界的な取り組みとも言える、MOBIの「電池パスポート」の技術標準化に向けた取り組みも紹介する。」と語る。

本講演の詳細・申込はこちら

■SMART GRID EXPO春~第15回【国際】スマートグリッド展~
会期:2024年2月28日(水)、2月29日(木)、3月1日(金)
会場:東京ビッグサイト
主催:RX Japan 株式会社

SMART GRID EXPO春 公式HPSMART GRID EXPO春 来場事前登録はこちら

《小松哲也》

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