嘆かわしいトヨタグループ、豊田自動織機でも不正拡大[新聞ウォッチ]

認証で不正のあったエンジンを搭載するトヨタ・ランドクルーザー
認証で不正のあったエンジンを搭載するトヨタ・ランドクルーザー全 1 枚

「数値データの正確性を軽視する風潮が社内にあり、管理職が不正行為を黙認・看過していた」。「トヨタの監督下で自動車エンジン開発を進めていたため、現場の課題を自主的に解決する力が弱い『受託体質』が染みついていた」。

豊田自動織機の一連の不正行為を調べていた外部の「特別調査委員会」が指摘した報告書の抜粋である。歴史の浅い新興企業ならともかく、トヨタ自動車の源流にあたり、しかもグループを代表するほどの中核企業での不正だけに、情けないというか、実に嘆かわしい。

◆弁明の余地がない行為

豊田自動織機では、昨年3月、フォークリフト用エンジンの性能試験でデータを差し替えるなどの不正行為を発表していたが、今回、特別調査委員会の調査でも、トヨタから一部開発を受託している自動車用ディーゼルエンジンの出力試験の不正が発覚したほか、フォークリフト用エンジンでも新たな機種で不正が判明した。

新たに不正があったことについて、豊田自動織機の伊藤浩一社長は記者会見で「弁明の余地がない行為。トヨタとのコミュニケーションが不足し、試験のプロセス、守るべき手順などの擦り合わせが十分に行われていなかった」と陳謝した。

きょうの各紙も、産経が1面トップで「トヨタ車エンジンも不正、『ランクル』出荷停止」との大見出しで報じたほか、2面の総合面には「豊田織機法規違反、トヨタ依存不正温床」。読売は1面に「トヨタ10車種出荷停止」としたほか、経済面に「トヨタG揺らぐ信頼」。朝日も「不正拡大問われるトヨタ流、ダイハツに続き織機も」。

◆上司に相談しても無駄

さらに、日経は「豊田織機、背景に『受託体質』」「上司に相談しても無駄」とのタイトルで、調査委員会の報告内容を取り上げて「開発遅れの懸念を上司に相談しても『何とかしろ』と言われる雰囲気があった」との声が記載され、不正の根本原因として「自ら問題を解決しようとしない企業体質」。さらに、「技術部長に相談しても無駄と半ば諦め、部長に報告しなかった」。「結局現場の管理職は仮定や推測を積み上げたデータを提出してしまった」とも伝えている。

日野自動車にダイハツ工業、系列ディーラーなどでも不正が相次いで発覚しており、トヨタグループ全体のガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令順守)が問われている。そんな中、トヨタの豊田章男会長が、きょう1月30日に説明会を開き、グループの「ビジョン」を語るという。口癖の「もっといいクルマを作ろうよ」も “百日の説法屁一つ”となってしまっては嘆かわしい限りだ。

2024年1月30日付

●トヨタ10車種出荷停止、豊田織機、不正新たに、エンジン試験(読売・1面)

●トヨタG揺らぐ信頼、社長「現場任せきり」(読売・7面)

●トヨタ労組ベア最高水準要求へ(朝日・7面)

●東京メトロ上場来年度にも(毎日・7面)

●リニア静岡工区知事に反論、JR東海「事実誤認多い」(産経・5面)

●月の起源岩石分析で探る、JAXA「SLIM」での観測再開(日経・2面)

●ホンダ、追加人員削減、中国本部長「EV品ぞろえ拡充」(日経・12面)

●EV部品内製化、三菱自が検討、エンジン技術生かす(日経・15面)

●GSユアサ、電池製造子会社、完全子会社に、三菱商事などから株取得(日経・15面)

●ホンダ、能登地震受け一時減産(日経・15面)

●スバル労組、賃上げ1万8300円(日経・15面)

《福田俊之》

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