CES 2024で見たAI活用と自動車技術開発の最前線…日本アイ・ビー・エム 川島善之氏×日本総合研究所 程塚正史氏[インタビュー]

PR
日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 オートモーティブコンピテンシーセンター 自動車産業担当CTO 川島善之氏(左)と日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネージャー 程塚正史氏(右)
日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 オートモーティブコンピテンシーセンター 自動車産業担当CTO 川島善之氏(左)と日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネージャー 程塚正史氏(右)全 16 枚

EV化やSDV、自動運転に加え、生成AIなど新たなホットイシューを抱え続ける自動車業界。1月9日から12日まで米国ラスベガスで開催された、先端テクノロジーイベント「CES 2024」を実際に訪れたエキスパートたちは、現地で何に注目し、次世代の変革の兆しを見ているか。

2月21日に開催されるオンラインセミナー「CES2024レビュー EVとAIから自動車産業の未来を探る」を前に、日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 オートモーティブコンピテンシーセンター 自動車産業担当CTO 川島善之氏と日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネージャー 程塚正史氏が対談を通じて、CES 2024の最新動向、そして自動車業界全体が向かわんとする方向性を読み解く。

「AIはもはや普通に組み込まれている」

程塚正史氏(以下敬称略) : 今回私は、コロナ禍を挟んで2020年以来、4年ぶりにCESを訪れました。事前情報やセントラルホール前こそ生成AIが前面に出ているのかなという印象だったのですが、実際に入ってみると必ずしもそうとは限らない。エウレカパークのスタートアップの展示ではベビーカーやベッドにまでAI、みたいな印象でしたが、逆に大手のブースはそうでもなかったですね。

川島善之氏(以下敬称略):AIを売りにしているところも無論ありますが、生成AIに限らずAIはもはや当たり前のように、普通に組み込まれています。設計段階で使われているものは見えないですしね。

程塚:モノづくりをサプライチェーン全体で支えているアイ・ビー・エムですが、今回のご出展は?

川島:2020年までは量子コンピュータを置いて…といった大々的な展示をしていましたが、今回は一応ブースを出しつつもクローズドで、招待制にしました。というのも生成AIをどういう風に採り入れるか? SDVをどうするか? はユースケースごと、個別の話だからです。OEM関係は無論、チップや通信の領域は機密性もありますし。そういう形で、モノづくりから販売サービスまで、色々な過程で支援させていただいています。

日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 オートモーティブコンピテンシーセンター 自動車産業担当CTO 川島善之氏日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 オートモーティブコンピテンシーセンター 自動車産業担当CTO 川島善之氏

程塚:エンドユーザーに様々な接点でオムニチャンネルを構築するという取り組みですね。今回CES全体を見渡して、ゲームやエンターテイメント領域からの流れですが、XREALのブースのようにスマートグラスやヘッドマウントディスプレイの進化が目立ったと感じました。

川島:生産現場やスマート化に用いられていたのが、明らかに安全の領域、車で使っていくところに踏み込んでいますね。

程塚:一部のスマートグラスのメーカーは車で使われることを目標にしていますよね。グラスやゴーグルの視覚刺激だけでなく、グローブをはめてジェスチャーコントロールするとか、ハプティクスで痛みを感じるデバイスとか。

川島:ユーザーインターフェイスがよりウェアラブルに変化しています。SKハイニクスのようにテーマパークを展示テーマにして、役者さんがデジタル操作を演じているとか。韓国勢の注力ぶりは凄かったですね。スタートアップだけでなく、ブースにいるスタッフ自体が若い。今回のセミナーをご覧になって、日本からも若手を送り込んでいただきたいですよね。

程塚:ロッテもゲーミング文脈で大規模な展示でした。若手にCESを経験・体験させて成長させるという戦略もあるのかと思いました。あとヒョンデが出展していたコンセプトモデル『ダイス(DICE)』が凄かった。

川島:ヒョンデはまずブースの規模が大きかった。水素含め顧客体験だけじゃなくパワード・バイAIで、次世代のモビリティにおける注目要素が組み込まれていましたね。

程塚:水素で駆動させる、一人乗りの小型ビークル、など個別のコンセプトは従来もありましたが、それがリビングになったりオフィスになったり、パワード・バイAIで切り替えていくという、コンセプトが重層的に詰まった展示でした。

川島:ダイスのパワートレインが水素でしたが、スマートシティや家電を扱ってきたCES自体に、エネルギーというテーマが浮上しています。今回、ポータブル電源の展示が増えて、キャンプにもっていくだけじゃなくグリッドに組み込まれているという。元々あった電池から進化してチャージングデバイスもアップデートし、要素技術から製品へと大型化している。

程塚:電源もデジタル化していくのですね。

川島:その流れで新興勢力の存在感が大きかった。ベトナムの新興EVメーカー・ビンファスト(VinFast)は全ラインナップを約束通り発表しましたし、トルコのトッグ(Togg)も気になるところです。

日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネージャー 程塚正史氏(右)日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネージャー 程塚正史氏(右)

要素技術を使いこなしつつ、価値ある顧客体験を提供する

程塚:異なるプレーヤーが、進化した要素技術によって新たな製品、領域を切り拓いている訳ですが、IT周辺の要素技術に御社はどう関わっていくのですか?

川島:それこそ、従来の一連のWatson製品によるデータベースであり、watsonxという基盤モデル・生成AI・機械学習用の開発スタジオといったワークフローを提供することですね。よりよいモノづくり、コトづくり、色々なところに使うことができたらと思います。

程塚:今回、ラスベガス市内でメルセデスベンツの試乗デモに参加したのですが、『EQE』を用いたもので、おそらくCAN情報と連携して、アクセルやブレーキ、ステアリング操作に対して、つまり走らせ方に応じて車室内の音楽が変わるんです。単なるインフォテイメントだけではなく、これは操る歓びを増幅する方向ですが、HMIの重要性が増して、顧客体験が変わる例だな、と感じました。

川島:車が知能化していくということですね。以前のCESでブリヂストンが自動運転を支える要素技術としてインテリジェントタイヤを発表していました。それにはセンサーだけじゃなくAIも組み込まれていますが、一見して分かりません。こうしたコンポーネントのスマート化が顕著になってきていて、モノづくりの仕方そのものが変わって来るでしょうね。OEMはコアとなるものを組み合わせて作らなくてはいけない。音楽が走行状態に応じて変化するとか、窓ガラスが液晶スクリーンになるとか、より自由な発想をもって要素技術を使いこなしつつ、行く先に顧客体験があるという。ただ、外れると(その影響は)大きいですよね。

程塚:お節介や鬱陶しいほどにまで行かない価値の、その良い加減をどう見定めるか。

川島:そこにもより高度な知能化や判断が求められ、AIひとつでも異なるところでしょう。

程塚:もうAIを使っているというOEMも多いですが、AIには基盤層とアプリ層がある中で、すでにオープンになっている後者を用いるという発表が多かったように捉えています。独自のアプリ層でやっていく方向性はまだ見られなかったような?

川島:ガバナンスや元データの精度の問題ですよね。そこをきちんと抑えないと誤った情報を創り出していきますから。

程塚:なるほど、だからwatsonxのように精度の高い情報源を、信頼できるソースを元に判断していくことが肝要ということですね。

川島:そうですね。特定の顧客に向けた特定のソリューションというのは、とても説明しづらいのですが、今回のセミナーではより実践的な話をしたいと思っています。

日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 オートモーティブコンピテンシーセンター 自動車産業担当CTO 川島善之氏(左)と日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネージャー 程塚正史氏(右)日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 オートモーティブコンピテンシーセンター 自動車産業担当CTO 川島善之氏(左)と日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネージャー 程塚正史氏(右)

オンラインセミナー「CES2024レビュー EVとAIから自動車産業の未来を探る」

無料オンラインセミナー「CES2024レビュー EVとAIから自動車産業の未来を探る」は、2月21日に開催。川島氏は「技術者から見たCES2024最新動向とEV開発を支える要素技術」をテーマに、程塚氏は「広がる裾野と深まる内面-CES2024に見る自動車産業の方向性-」と題し、講演を行う。

また、CES2024から見たEVの現状と今後の流れや米国、欧州、中国などの市場動向の考察、EV化におけるIT技術&AIの役割、日本のOEM、サプライヤーにとっての勝ち筋とは、といったテーマで、川島氏、程塚氏、IBM Institute for Business Value 自動車・電機・エネルギー産業リサーチ・グローバルリーダー 鈴木のり子氏が登壇するパネルディスカッションも注目だ。

セミナー申込締切は2月19日12時。

無料オンラインセミナーの詳細・お申し込みはこちらから

本インタビューは、2024年1月に顧客、パートナーとの共創を推進する目的で虎ノ門ヒルズに開設した日本IBMの新本社内、Innovation Studioで行われた。

《南陽一浩》

南陽一浩

南陽一浩|モータージャーナリスト 1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. BEVを2年間所有した、“リアルな”ランニングコストを大公開
  2. メルセデスベンツの万能車『ウニモグ』がキャンピングカーに! 数日間の自給自足が可能
  3. ベントレーの超高級住宅、最上階は「55億円」 クルマで61階の自宅まで
  4. 「見れば見るほど味が出てくる」新型日産『リーフ』のエクステリアがSNSで話題に
  5. メルセデスの名車「190E エボ2」が復刻! 限定100台の「HWA EVO」にハンコック純正装着
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  2. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  5. コンチネンタル、EVモーター用の新センサー技術開発…精密な温度測定可能に
ランキングをもっと見る