【トライアンフ スピード400/スクランブラー400X 海外試乗】爆売れ間違いなし!妥協せずに仕上げた400ccの実力は…小川勤

トライアンフ スクランブラー400X
トライアンフ スクランブラー400X全 45 枚

トライアンフの『スピード400』と『スクランブラー400X』は、どのメーカーにとっても衝撃だったに違いない。

モダンクラシックカテゴリーにまさかの400ccエンジンを搭載して登場したニューカーマーの2台は、驚くことにビッグバイクと変わらない品質を持ち、さらに新設計の単気筒エンジンは40psを発揮する高性能。「新しいカスタマーを獲得する」という重要なミッションを達成するためにトライアンフは5年の歳月をかけて、400ccカテゴリーを妥協せずに大切に仕上げてきた。

新型TRシリーズエンジン新型TRシリーズエンジン

さらに国産メーカーをはじめとするライバルと十分勝負になる戦略的な価格も用意。スピード400は69万9000円、スクランブラー400Xは78万9000円となっている。日本では少し前から予約が始まり、すでに納車がスタート。ディーラーでは試乗車も用意しているところもあり、購入キャンペーンも行われている。

僕は日本での発表会の2日後に、国際試乗会が開催されるスペインのバレンシアに飛んだ。新生トライアンフとしては初となる普通二輪免許で乗れるバイクの登場だけに、開発陣の声を聞き、欧州のステージでこの2台を堪能してこようと思ったのだ。

◆モダンクラシックスタイルにハイパワーエンジン、そのギャップが面白い

タイヤサイズだけでなくフレームも異なる2台。サスペンションのストローク量に合わせてフレームを使い分ける。スイングアームは同一だが、アクスルの位置を変えバランスを取っているタイヤサイズだけでなくフレームも異なる2台。サスペンションのストローク量に合わせてフレームを使い分ける。スイングアームは同一だが、アクスルの位置を変えバランスを取っている

バレンシアでは到着した夜にプレゼンを受け、翌日に試乗するスケジュール。試乗はバレンシアの市街地を抜け、ワインディングと簡単なオフロードを走るコース。往路はスクランブラー400Xに乗り、復路はスピード400となっていたが、撮影ポイントで2台を乗り比べながら試乗コースを楽しむ。ちなみに海外でのこうした試乗会のペースはかなり速く、400ccだと頻繁にスロットルが全開になる。

このクラスではかなり高スペックな40psを発揮するエンジンは、スクランブラー400Xもスピード400も共通。3000~9000rpmまで使いやすく、ゆっくり走ることも飛ばすことも可能。かなりフレキシブルなキャラクターで、モダンクラシックとは言いつつ想像以上にスポーティだ。

「この2台はインドで先行発売していたのですが、彼らもエンジンのスペックに驚いていました。インドでは350ccカテゴリーのロイヤルエンフィールドやホンダがメジャーですが、それらのバイクはパワーがないからです。また、パワーバンドの広さにも驚いていました。まずは40psというパワーに目がいきますが、実は低回転域から高回転まで使いやすいエンジンなんです」とトライアンフのチーフ・プロダクト・オフィサーのスティーブ・サージェントさん。

トライアンフのチーフ・プロダクト・オフィサーのスティーブ・サージェントさんと筆者トライアンフのチーフ・プロダクト・オフィサーのスティーブ・サージェントさんと筆者

確かに今の時代にこういった高性能シングルエンジンの存在は貴重。それをオーセンティックなスタイルのバイクに搭載するのが、とてもトライアンフらしい。

トライアンフは開発と設計はイギリスで行い、大量生産を実現するためにインドのバジャージとパートナーシップを結び、この生産体制と破格のプライスを実現。ちなみにインドでは高評価&高セールスのため、すでに生産体制を強化しているという。

◆世界中で盛り上がりを見せるトライアンフの400ccカテゴリー

前後17インチホイールを採用するスピード400。フレームもコンパクト設計。車両重量は170kg、シート高は790mm、ホイールベースは1377mm。価格は69万9000円前後17インチホイールを採用するスピード400。フレームもコンパクト設計。車両重量は170kg、シート高は790mm、ホイールベースは1377mm。価格は69万9000円

400ccというと若いライダーやキャリアの浅いライダーがターゲットだと思うかもしれない。しかし、いくつかの先進国からは年配のライダーからの声もかなり大きかったという。

「若いライダーからの反応が良いのは想像していました。しかし、アメリカ、イギリス、フランスなどの年齢層の高いライダーからの反応がとても良かったんです。彼らは今乗っているバイクを重いと思っているのです」とスティーブさん。

確かに、この2台は見た目の高級感があり、走りはスポーティ。エンジンは同一だが、タイヤサイズやポジジョンを変更。さらにフレームを各車専用にするこだわりで、きちんと2台を差別化している。

僕は身長165cm、体重65kg。スピード400のシート高は790mm。足つきは良好だ僕は身長165cm、体重65kg。スピード400のシート高は790mm。足つきは良好だ僕は身長165cm、体重65kg。スクランブラー400Xのシート高は835mm。足つき性はそれほど良くないものの、両足でなく片足をきちんと着けば安心だった僕は身長165cm、体重65kg。スクランブラー400Xのシート高は835mm。足つき性はそれほど良くないものの、両足でなく片足をきちんと着けば安心だった

スピード400の車格はとてもコンパクト。車重171kg、シート高790mmのパッケージはどんなシチュエーションでも扱いやすさが光る印象だった。そして、スクランブラー400Xは、重量180kg、シート高835mmとシート高は少し高めだが身長165cmの僕でも不安はなかった。もちろん取り回しもしやすく、今回は女性ジャーナリストもたくさん参加していたが、皆が簡単に取り回しやUターンを行なっていた。

そして特筆すべきはこの2台のスポーツ性の高さだろう。ワインディングではかなりのアベレージまで試したが破綻する感じはなく、サスペンションも高荷重域でしっかりと減衰力を発揮。コーナリング性能に関しては、スピード400に武があるかと思ったがスクランブラー400Xもどこまでもペースを上げることができた。もちろん、ダートではスクランブラー400Xが有利なのはいうまでもない。

◆『良いバイク』はバイク趣味の本質を伝えてくれる

エンジンはTR(トロフィーの意味)シリーズと名付けられた398.15ccの新設計。40psを発揮するDOHC4バルブの単気筒エンジンだ。低速域での扱いやすさを確保しつつ、フィンガーフォローワー バルブトレインなどスポーツバイクならではの機構を設け、高回転でのパフォーマンスも重視。最大トルクは37.5Nm、ミッションは6速エンジンはTR(トロフィーの意味)シリーズと名付けられた398.15ccの新設計。40psを発揮するDOHC4バルブの単気筒エンジンだ。低速域での扱いやすさを確保しつつ、フィンガーフォローワー バルブトレインなどスポーツバイクならではの機構を設け、高回転でのパフォーマンスも重視。最大トルクは37.5Nm、ミッションは6速

走るほどにこういった『良いバイク』がキャリアの浅いライダーにバイク趣味の本質を伝えてくれ、さらにライダーをきちんと育んでくれるのではないかと思った。そして、大事なのは僕も含めたベテランがきちんと満足できるクオリティと走りの性能を持っていること。確かに車両価格を考えると、特に足まわりのパーツは特段豪華というわけではない。しかしベテランは、そこはカスタムで補えばよい。

2023年、トライアンフは日本で過去最大の4108台(2022年比+21%)を販売。2024年、400ccの2台は間違いなく新たなカスタマーを獲得するはずだ。また試乗を終えスティーブさんに「このエンジンを使った他のモデルも期待してもいいですか?」と尋ねると、「もちろん将来のモデルも考えているよ」との回答。僕は、全世界でトライアンフの勢いが強まりそうな予感を抱きながら、バレンシアを後にした。

トライアンフ スピード400/スクランブラー400Xと筆者トライアンフ スピード400/スクランブラー400Xと筆者

■5つ星評価(スピード400)
パワーソース:★★★★
ハンドリング:★★★
扱いやすさ:★★★★
快適性:★★★
オススメ度:★★★★

■5つ星評価(スクランブラー400X)
パワーソース:★★★★
ハンドリング:★★★★
扱いやすさ:★★
快適性:★★★★
オススメ度:★★★★★

小川勤|モーターサイクルジャーナリスト
1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。

《小川勤》

モーターサイクルジャーナリスト 小川勤

モーターサイクルジャーナリスト。1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。

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