北海道札幌市に日本最北のBYDディーラーがオープン、Wallbox社のEV充電器も初導入

BYDオート札幌西。オープニングイベント時は大雪だった。
BYDオート札幌西。オープニングイベント時は大雪だった。全 16 枚

BYDオートジャパンは2月17日、札幌市手稲区の下手稲通り沿いにショールームを備えた正規ディーラー「BYDオート札幌西」をオープンした。

同店のショールームには、現在発売中のミドルサイズSUV『ATTO 3(アットスリー)』と、コンパクトEV『DOLPHIN(ドルフィン)』が展示されている。前日には、メディア向けのオープンイベントが開催され、BYDオートジャパン代表取締役社長 東福寺厚樹氏や、ディーラーの運営会社であるD&Dマネージメントの代表取締役社長 村脇学氏などが挨拶を行った。

また今回、BYDのディーラーとして初めて、ユアスタンドが提供するWallbox(ウォールボックス)社製のEV充電器「Pulsar Plus」が設置された。BYD以外ではボルボの一部ディーラーにモックが設置されているが、実際に充電可能なものの店舗導入は全国でも初の事例だ。


◆2025年末までに全国100を超える店舗網目指す

オープンイベントにて登壇したBYDオートジャパン代表取締役社長 東福寺厚樹氏は、BYDについての紹介をスライドを交えて行った。BYDは1995年に中国の深センで、バッテリーの専業メーカーとしてスタート。当初はこのバッテリーを中核とし、スマホやパソコンのバッテリーのサプライヤーとしてビジネスを展開していた。そして現在では新エネルギー事業として、蓄電池をひとつの中核とし、太陽光エネルギーなど、自然を活用して得た電力を蓄電池に蓄え、電気が通っていない地域に電気を供給するといった事業も幅広く展開している。自動車事業は、乗用車ならびに商用車も含め、タイヤがついて動くものには、バッテリーを動力源としていろいろな自動車を展開。さらに都市モビリティ事業では、バスやトラックのEV技術を用いて、モノレールの車体開発や、運用システム全体も一括開発して、モビリティサービスを地域に展開するといった事業も展開している。現在では70を超える国と地域で乗用車事業を展開し、昨年1年間では全世界向けに302万台のバッテリー車を供給し、プラグインハイブリッドを含めた電気自動車では、今、世界1位の会社となっている。

新興企業のイメージが強いBYDジャパンだが、実は会社設立は2005年で、すでに20年が経っている。設立当初はソニーエリクソン、東芝などが使用するモバイルバッテリーを取り扱っていた。2015年からは電動バスの導入を始め、現在では435台のEVバスが全国で使われている。EV乗用車については、2022年に事業を開始。2025年末までには全国100を超える店舗網を作ろうと、活動を強化している最中だ。日本では、ATTO 3、ドルフィンを販売中で、登録の累計は1500台。今回オープンとなった札幌西のショールームは、全国で20番目だが、現在こういったショールームを建設中もしくは予定となっているものが31もあり、全国では51カ所で、試乗、見積もり販売などが可能だという。

最後に東福寺氏は、「この店舗をベースに、北海道での事業を大きくし、また全国にBYDの事業を大きく広げていきたい」と思いを語った。

◆震災体験、ノルウェーで得た気付き

D&Dマネージメント代表取締役社長 村脇学氏は、同社がBYDオートのディーラー運営を行うに至ったいきさつなどを語った。なぜBYDを扱うのかという質問はこれまでも受けてきたというが、それには村脇氏自身の体験が大きな影響を及ぼしている。村脇氏は2018年に発生した北海道胆振(いぶり)東部地震の際、旭川で被災し2日間電気がないという生活を過ごした。そんな不便な被災経験を得たのち、約2年前にBYDオートジャパンの東福寺社長やBYD代表取締役社長 劉学亮氏に出会い、今後BYDは乗用車の分野に進出するという話を聞いたとのこと。また、三菱自動車の益子修元社長に「これからは絶対にEVが来る、EVをやる前に北欧に行け」とアドバイスを受けていた。その言葉もあり、約2年前の12月、BYDをやると決めてからノルウェーに行ったところ、非常に衝撃を受けたそうだ。2013年頃は約5%しかなかったEVの比率が、2022年は約80%を超えるEVの比率になっているとのことで、国民の環境や自然に対する思いをすごく強く感じたという。このことから、北海道においても同じようなことが言えるのではないかという思いを抱いたと話す。

そんな村脇氏は今後について、「また北海道胆振東部地震で被災経験した時のことが、元旦に起きた能登半島の震災と重なって思い出され、このEV事業は今後モビリティだけではなく、蓄電池としてお客様の身を守ることもできるのではないかと思っている。これからも地域再生、創生を考え、一緒に成長していきたい」とした。

◆出力変更が自由にできるコンパクトな充電器を設置

BYDオート札幌西の駐車場には、Wallbox社製のEV充電器「Pulsar Plus」が設置されている。この充電器は専用アプリを使えば1.2kWから8kWまでリアルタイムで出力変更ができるのが大きな特徴。消費電力をなるべく抑えてゆっくり充電する場合は1.2kWまで下げ、充電時間を短縮したい場合は高出力の8kWで充電するといった用途に合わせた使い方が可能だ。またスケジュール充電、遠隔での充電開始・停止や、充電器の施錠・解除などもできる。BYDのクルマはもちろんのこと、ボルボ『C40』やアウディ『e-tron』、トヨタ『bZ4X』、日産『サクラ』などのBEV、三菱『アウトランダーPHEV』、トヨタ『プリウスPHEV』などのプラグインハイブリッド車に対応する。

ユアスタンドが提供するWallbox社製のEV充電器「Pulsar Plus」。ユアスタンドが提供するWallbox社製のEV充電器「Pulsar Plus」。

極寒のエリアに設置されているため気になるのが、耐久性や動作に支障がないかどうか。Wallbox Pulsar Plusを国内で販売するユアスタンドの担当者は「動作温度はマイナス30度から40度となっており、EV先進国での北欧各国など世界150カ国での実績がある。国内・他社製だと(動作温度が)マイナス10度やマイナス20度までのモデルもあるなか、安心して使っていただける充電器」と話す。また「北海道などの寒冷地や雪の多い場所では、コンセントタイプのケーブルを地面に転がしておくと、取り回しの悪さや汚れなど気になると思う。Pulsar Plusはケーブル長5.5mながら軽くて取り扱いやすい」という。ケーブルホルダーも充電器と同梱セットされているため、ケーブルを巻いて壁にかけておくことが可能だ。

担当者は、「BYDオート札幌西を訪れた方には、コンパクト、スタイリッシュという点に加えて、アプリからの制御など高性能であるところなどもスタッフの方と一緒にご体感いただきたい」と話す。ディーラーには充電器は家庭には適さないものが設置されている場合もあるが、ここでは実際に自宅に設置するものと同じものを利用できるため、購入後の使用イメージも湧きやすいだろう。店舗スタッフも紹介しやすいという利点がある。

利用者がEVを買う際に家で使える使いやすいスマート充電器をディーラーが展示、紹介することは、海外では当たり前だという。日本では車を売ることだけに終始しているため、BYD札幌西店では「ユアスタンドがスタッフに充電環境の勉強会を行い、いい充電器を紹介をするという形を作っている」(担当者)そうだ。

ユアスタンドでは今後もBYDや他の自動車ディーラー店舗への紹介・導入を積極的に進めていく予定だ。また、ヨーロッパではWallbox社とメルセデスベンツ、電力会社であるIberdrolaが協業し、EVユーザーに向けた住宅用充電ソリューションの販売を行っており、日本でも同じ枠組みができないか検討しているという。

《関口敬文》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ついにハイブリッド化! 新型トヨタ『ランドクルーザー300』の発表にSNSでは「バク売れの予感」など話題に
  2. 【スズキ ソリオ 新型試乗】乗り心地と静粛性はクラストップ、だが「損をしている」と思うのは…中村孝仁
  3. 世界最高級ピックアップトラック誕生!? トヨタ『センチュリーピックアップ』の可能性
  4. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  5. 15歳から運転できる「小さいオペル」に興味アリ!「通勤用にこういうのでいいんだよ」など注目集まる
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  3. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
ランキングをもっと見る