実用化に向け進化し続ける、ヤマハの小型低速EV「DIAPASON」

ヤマハの小型低速EV「DIAPASON C580」
ヤマハの小型低速EV「DIAPASON C580」全 29 枚

2月28日に東京ビッグサイトで開幕した「第15回国際スマートグリッドEXPO 春」、ホンダブースでは着脱式可搬バッテリー「ホンダモバイルパワーパック e:」を活用した様々なモビリティの提案が見られたが、注目は共同出展となったヤマハ発動機の展示だ。ホンダのバッテリーを搭載したパーソナル低速モビリティ「DIAPASON(ディアパソン)」のコンセプトモデル2台がホンダブースに並んだ。1月の「東京オートサロン」で初公開されたモデルからさらに進化。「ビジネスの可能性を広げていく」とアピールする。

ヤマハの小型低速EV「DIAPASON」ヤマハの小型低速EV「DIAPASON」

展示されたのは、研究開発中のパーソナル低速モビリティの汎用プラットフォームを採用した2機種の電動モビリティ、「DIAPASON C580」と「DIAPASON C350」。これまでヤマハの汎用プラットフォームは「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」と呼ばれてきたが、今回の発表に合わせ「DIAPASON」と新たに名付けられた。車体の基本は東京オートサロンに展示された車両と同じだが、デザインが装備がアップデートされた。

このDIAPASONは、ヤマハ製の電動モーターと、ホンダの着脱式可搬バッテリーを搭載するもので、このプラットフォームをベースに、多様な低速モビリティへの展開を想定している。様々な企業や自治体とのコラボレーションにより、地域や用途に合わせたモビリティを追求するプロジェクトだ。バイクメーカーであるヤマハが、カスタムカーの祭典である東京オートサロンに初出展した理由も、そうしたパートナー探しの一環で、「小型低速EV領域での汎用プラットフォームの市場機会探索と、その実現性やビジネスの可能性を調査することが主な目的」としていた。実際、「大きな反響があった」とプロジェクトを主導するヤマハ発動機の大東淳氏は語る。

◆2025年の実用化に向けアップデートし続ける

ヤマハの小型低速EV「DIAPASON C580」ヤマハの小型低速EV「DIAPASON C580」

「DIAPASON C580」と「DIAPASON C350」もパートナーとの連携により誕生したコンセプトモデルだ。「DIAPASON C580」は、ヤマハが海外で販売する四輪バギーの小型版といったスタイルで、オフロードなど様々な路面環境でも俊敏に走破できる性能やスマートな使い勝手を提供する2人乗りの電動モビリティを提案するもの。実際に農業の現場で実証実験をおこない、「気軽に農地に入っていける乗り物が欲しい」「軽トラックよりもかっこいい乗り物に乗りたい」など、農家の声を汲み取り形にした。軽トラックよりもトレッド幅を狭くし、安全な低速領域でも“楽しく”乗れるようトルクを重視したセッティングとなっているという。100mmの段差も楽に乗り越えられる足回りも備えている。

今回の展示車両は、クルマファンにも馴染みあるTRUST、トーヨータイヤ、WORK、SKIPPERとのコラボレーションによりアップデート。WORKのホイールにタイヤはオープンカントリーを組み合わせた。シートもイエローのステッチが入ったものに置き換えられており、より趣味性の高いデザインとなっているのが特徴だ。また車体後部にはホンダモバイルパワーパック e:が搭載されていることがひと目でわかるよう、クリアパーツが装着されているのもポイントだ。

ヤマハの小型低速EV「DIAPASON C580」とホンダモバイルパワーパック e:ヤマハの小型低速EV「DIAPASON C580」とホンダモバイルパワーパック e:

「DIAPASON C350」は、50年以上にわたり会員制リゾートホテルを運営してきたリゾートトラストとの共創により生まれた、リゾート地向けの1人乗りスモールモビリティだ。「何歳になってもリゾートではアクティブでいたい」「1人で自由に移動を楽しみたい」「趣味の道具を載せたい」といった声を形にしたもので、自分の部屋からゴルフ場までをシームレスに移動できるような使い方を想定している。今回の展示車両は、ハンドルの塗装をブラックにし上質感を高めたほか、シート下に収められたバッテリーの着脱を実際に体験できるようにした。また、さまざまな地形をもつリゾート地での走破性をさらに高めるため、より幅広なタイヤを装着することも既に想定しているという。

今回展示された2台のほかにも東京オートサロンでは計7台を見せたが、これらすべてのモデルを進化させて続けていく計画だ。

ヤマハの小型低速EV「DIAPASON C350」ヤマハの小型低速EV「DIAPASON C350」

前出の大東淳氏は今後の展開について語る。

「モジュールプラットフォームという発想はこれまであまり周知できていなかった。レゴのようにいろんなコンポーネントを組み合わせたらできるという発想なので、新しい話とどんどんつながっていく。今回の展示の後でも様々な声、要望が出てくると思う。今回は(東京オートサロンから)1か月の中でしかアップデートできなかったが、これまでモビリティメーカーがあまり使っていなかったような、シミュレーターやデジタル技術を開発に取り入れると、もっと早く、少人数で作れるようになる。ただ、実際に乗ってナンボ。今年は試乗会を積極的にやって改良して、そして実販売に向けて進めていくフェーズだと思っている。すでに色々なところで試作車に300人くらいに乗ってもらっているが、今年は最終製品の形で500人くらいには乗っていただけると思う。そうすることで、もっとリアリティのある課題が見えてくる」

ヤマハが計画する2025年の実用化に向け、プロジェクトはすでに最終コーナーに差し掛かっている。

《宮崎壮人》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 日産『マイクラ』新型、“SUV風デザイン”の小型EVになって登場
  2. トヨタ『RAV4』新型を世界初公開、3つのスタイルで進化 日本発売は2025年度中
  3. アルピーヌ『A390』発表直前プレビュー! マカンよりかなり小さいボディから600馬力!?
  4. メルセデスベンツ『Cクラス』新型、量産仕様のプロトタイプがついに出現! 変更点を完全解説
  5. 【スズキ ハスラー タフワイルド 新型試乗】“クラシック・ミニ”の面持ちを思い出す…島崎七生人
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 【学生向け】人とくるまのテクノロジー展 2025 学生向けブース訪問ツアーを開催…トヨタ、ホンダ、矢崎総業、マーレのブースを訪問
  2. BYDが「軽EV」の日本導入を正式発表、2026年後半に
  3. 地域再エネ活用の収益を還元、ホンダ N-VAN e:を茨城県神栖市へ無償提供
  4. シェフラーがヴィテスコ合併後初の出展、ポートフォリオ拡大と顧客対応力をアピール…人とくるまのテクノロジー展2025
  5. トヨタ「GRファクトリー」の意味…モータースポーツのクルマづくりを生産現場で実現【池田直渡の着眼大局】
ランキングをもっと見る