EV充電インフラの“稼働率”をアップさせる施策とは…エネチェンジの見解

アップデートにより「空車通知」が可能になった専用アプリ。空き待ちの人数表示があれば、充電が終わればすぐに出庫するといった行動が促され、充電待ちをするユーザーのイライラが解消される可能性は高い。
アップデートにより「空車通知」が可能になった専用アプリ。空き待ちの人数表示があれば、充電が終わればすぐに出庫するといった行動が促され、充電待ちをするユーザーのイライラが解消される可能性は高い。全 9 枚

エネチェンジ(ENECHANGE)は3月6日、EV充電エネチェンジアプリの既存機能をアップデートし、「空車通知」の表示を追加した。

この機能は、これから充電器を利用したい人には「登録したスポットでの充電利用終了(利用可能)のお知らせ」を、充電利用終了した人には「充電器を利用したい人の数」が表示されるというもの。これにより「利用したいEV充電器の空き待ちストレス」の軽減など、充電器の円滑な利用が期待される。

これまでも、EV充電エネチェンジの充電器の満空情報がアプリのマップ上でリアルタイムに確認でき、あらかじめ登録した充電スポットで充電器が空いた場合にお知らせ通知を送信する機能はあったが、さらに「空車通知」機能が追加され、充電が完了したユーザーに対し、「充電スポットが空くのを待っているユーザー」がいることを伝えることが可能になった。エネチェンジによると、次の利用者の存在がわかることで、充電完了後の速やかな車両の移動が促されることに期待しているとのこと。ただし、充電完了後に車両を速やかに移動するかの判断はユーザーに委ねられており、強制されるものではなく、あくまでも「充電器の円滑な利用のためにご協力をいただきたい」としている。

また先日エネチェンジは、メディアラウンドテーブルを行い「EV充電インフラ 令和6年度予算への見解」を述べた。その詳細も合わせて紹介する。


◆入札審査受付を1年間に複数回実施すべき

ラウンドテーブルの詳細については、同社執行役員の千島亨太氏に話を聞いた。

まずは、政府の令和5年度予備分と令和5年度追加募集の比較について。大きな変更はなかったが、追加募集については、募集対象施設に「サービスステーション、空白地域、目的地(ディーラー、商業施設等)」といった場所が追加された。サービスステーションはENEOS(エネオス)などのガソリンスタンドへの設置を指し、空白地域というのは、各インフラ事業者が設置していない場所のこと。たとえば、北海道の人里離れた場所や、福岡から鹿児島まで行く途中の超長距離の道で充電スタンドがないといったところが予想されるという。千島氏によると、空白地帯があったら、そこに急速充電器を置きたいといった考えがあるのではないかとのことだった。ディーラーの追加については、CEV補助金のポイント加算に関係している。ディーラーが充電インフラならびに水素の供給網を普及することを手伝うことで、CEV補助金のポイントを加算し、1台あたりの補助金額を増やすという制度があるためだ。商業施設については、急速充電器も普通充電器も置きたいというニーズ、利用者への間口を広げ利便性も上げる目的がある。交付決定の方法については、令和5年度予備分と同じく入札制が踏襲されているが、年に一度の審査受付ではなく、稼働率の向上や早期自立化を目指すエネチェンジとしては、審査受付を複数回実施することを提案しているとのことだ。

新たな場所が追加されたのが大きな違い。

◆補助金額倍増も充電器をただ設置すればいいというわけではない

昨年度に比べ補助金額については前年比206%と倍増している。2030年の設置目標については、急速充電は3万口だが、普通充電については27万口と増加。これを実現するためには、普通充電については年間で3万1000口の設置が必要となる。ところが、令和5年の追加・令和6年1期2期を合計しても普通充電は目標に対して1万2800口、金額ベースで約109億円が不足している。つまり目標達成にはさらなる予算の増額が必要とのことだ。

これに関して千島氏は「ただ予算をください、予算を増やしてくださいという話ではなく、どういった予算額、補助額・補助率で、インフラ整備を進めていけばいいのかを考えているのではないかと思う」と語った。ただ口数だけ増やすのであれば、予算をどんどん増やしてどんどん設置すればよい。しかし今回の件については、稼働率を求められていると予測できる。充電器を設置するのであれば、しっかり使われるところに設置しなければならない。7~8年後のリプレイスの時にまったく使われてないところは、利益を生まないため事業者としても交換できないことになりうる。事業者としてただ充電器を設置して儲ける工事事業者ではなく、インフラ事業者として利益を出さないといけないため、充電される充電器を設置しなければならない。そういった部分をチェックしながら予算を組んでいるため、目標値に対して満額の予算を出すということではないと推測できる。

前年比206%と大きく予算が増額された。

◆インフラの整備には充電器設置施設の協力や理解が必要

今後の充電インフラ政策への課題と見解についても、エネチェンジは様々な提案をしているとのこと。

たとえば目的地充電の最低出力の設定は、6kW以上にすることや、充電器のある駐車スペースは「EV優先車室」というルールを義務化し、エンジン車の駐車スペースと差別化を図る。またEV充電器の近くによく見かける案内標識だが、200Vや100Vといった表記ではなく、出力値(kW)の表示を義務化することで、利用者が判断しやすい環境にするといった内容も含まれている。目的地充電の最低出力の設定を6kW以上にすることについては、千島氏自身の実体験も交えながら解説。視察などで色々な充電スポットを見に行く中、目的地充電にもかかわらず3kWの施設が増えていることに気付いたという。充電施設が増えることはよいが、目的地充電施設で3kWの出力だと、3~4時間充電しても充電量は少ない。このような点もふまえ、「総出力」増強の目標実現のためには、目的地充電は最低出力を設定すべきだと強く提言している。


《関口敬文》

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