フォーミュラE東京初戦直前、アンドレッティ勢が語る魅力…「何が起きてもおかしくない」

ジェイク・デニス選手(左)とノーマン・ナト選手。
ジェイク・デニス選手(左)とノーマン・ナト選手。全 7 枚

フォーミュラEの日本初開催戦「2024 東京E-Prix」の開催が3月30日に迫るなか、有力参戦チーム「アンドレッティ」のドライバーであるジェイク・デニスとノーマン・ナトがシリーズの特徴や魅力、今季の戦況や東京戦の見どころなどについて語った。

◆好相性の新タッグ、ジェイク・デニスとノーマン・ナト

いよいよ初開催が間近となった、電動フォーミュラカーによる最高峰レースシリーズ「ABB FIAフォーミュラE世界選手権」の東京大会。レース開催週に入り、参戦チームの面々も続々と来日してきているが、日本の長瀬産業(NAGASE)をパートナー企業とするチーム「アンドレッティ・フォーミュラE(ANDRETTI FORMULA E)」のドライバーふたりが直前インタビューに対応してくれた。

ジェイク・デニス(イギリス)はアンドレッティ在籍4季目で、昨季=シーズン9のドライバーズチャンピオン。今季(シーズン10)は2連覇を目指し、前季チャンピオンの証であるカーナンバー1を背負って戦っている(今年2月上旬にもデニスにオンライン・インタビューした記事を掲載している)。

ノーマン・ナト(フランス)は今季アンドレッティに移籍してきたドライバー。日本のファンには世界耐久選手権(WEC)の日本戦(富士スピードウェイ)でも馴染みある存在だろう。フォーミュラEでの優勝経験をもち、カーナンバー17のマシンを走らせている。

デニスが1995年生まれで、ナトは1992年生まれと、3歳ほど年齢差があるふたりだが、フォーミュラEに関しては初参戦から4季目の“同期生”。新たな相棒のことを、お互いにどう思っているのだろうか。

ナト「フォーミュラEではチームとしてベストパッケージをつくることが(他のカテゴリー以上に)大切になってくる。当然、ドライバー同士がいい関係であることも大事だ。限られた時間のなかでマシンを良くしていかなければならないのだから、エゴをぶつけあっている余裕なんてない。自分はチームに新しく加入したわけだけれど、チームともジェイク(デニス)ともいい関係だと思っているよ。パフォーマンス的に望んでいるレベルまではまだ達していないと思うけど、そこにいけると信じている」

デニス「フォーミュラEの同期生で、(異なるチームに所属している間も)パドックでいろいろ話したりしてきた間柄だ。彼がアンドレッティに来てくれて良かったよ。同じ目標、同じ方向性を向いていることが大事で、僕たちはそうであると思っている。相性が良い。この良好な関係をさらに前に進めて進めていきたいね。お互いに、求めているものは良い成績だ。彼が言うように、エゴなどなしで、一体となって助け合うことが大切だね。我々のマシンを仕立ててくれているチームスタッフたちに報いるためにも」

◆東京を本格的に体験するのはレースが終わってから

デニスは2月のインタビュー時、「鈴鹿サーキットでレースをしたことはあるけど、東京は初めてになる。楽しみだ。でも、何か(特定のモノやコト)を楽しみにするというよりは、東京という街が僕にオファーしてくれるもの全てを受け入れて、楽しみたいと思っている」との旨を語っていた。

フォーミュラEは単にトップレースということだけではなく、市街地開催を基軸として、モータースポーツの新たなカタチを模索するカテゴリーでもある。その現王者らしい取り組み方ともいえるデニスの姿勢だ。

今回のインタビューは3月27日の午後、都内の長瀬産業本社で実施されたのだが、既に東京(あるいは日本)を感じる体験はあったのだろうか。

デニス「いや、まだ本格的に探索はしていないよ。それはレースの後、だね。レースまではレースのこと、そしてこうした(パートナー企業との)仕事に集中している。でも、スシはもう食べた。おいしかったよ。あと、東京スカイツリーにも登って素晴らしい景観を楽しむことができた」

寿司に関しては、ナト、チーム代表のロジャー・グリフィス、チームのメディア対応等を受けもつコミュニケーション・マネージャーのルイス・ミッチェルも同席だったとのことだが、概ね4人とも好印象だった模様(グリフィス代表はかつてホンダ・インディの仕事をするなどしており、日本には慣れている人物)。

そしてナトもデニス同様、探索はレースの後、との旨を次のように語る。

ナト「日本にはWEC富士戦で2度ほど来ているが、(デニスと一緒で)やはりその国を楽しむのはいつもレースの後、になるね。僕は仕事柄、いろいろな国に行っているし、それをエンジョイしてもいる。日本は特別な国のひとつで、その文化に興味をもっているよ。日本、東京というのはヨーロッパの国々とはかなり違うところがあると思うしね」

東京を本格的に体験するのはレース後、ということになるアンドレッティ・コンビ。デニスは天気のことにも触れ、「昨日(26日)は雨で、今日はうってかわってこんなにいい天気だ。(変わりやすいといわれる)イギリスの天気を思い出したよ」とも話している。

◆ナト「フォーミュラEは予測不可能な面が大きいレース」

フォーミュラEのシーズン10は、3月16日のブラジル・サンパウロ戦で4レースを終了(全16レースの予定)。2連覇を目指すデニスはここまで1勝してはいるが、ドライバーズランキング5位(38ポイント)、首位(57ポイント)とは19ポイント差という状況にある。1レースでひっくり返すことも不可能ではない差ではあり、上位はまだまだ混戦といえるところだが、昨季王者としては順調とも言い難い成績だ。

移籍加入初年度のナトは、ここまでの4戦で決勝最高位が6位。まだ実力を発揮し切れてはいない印象である。まずナトに今季ここまでの戦況を振り返ってもらった。

ナト「フォーミュラEは予測不可能な面が大きい。ドライバーもチームもマニュファクチャラーもハイレベルで揃っているからね(アンドレッティはポルシェのパワートレインを使用)。もちろん、我々は自信をもって戦っている。でも、他の陣営も充実しているんだ。どんなに頑張っていても負けることはあるだろう。もちろん、勝つことだってある。勝ちたいという意志はチームの皆が共有しているし、実際にチームは我々ドライバーを良く支えてくれている。我々はいいポジションにいると思っているよ」

デニスも「彼が言う通り、フォーミュラEは予測不可能な局面が多いレースなんだ」とした上で、戦況分析&展望をこう語る。

デニス「いろんなものを組み合わせていく必要があるわけだし、今季ここまでも、もちろん良くないレースもあったけど、総体的には良いパフォーマンスで来ていると思う。シリーズリーダーと約20点差というのは、今後のレース数を考えれば悲観する必要はないし、ハッピーだと思っている。前に進んでいくだけだね。リズムを保って戦っていけば、後半戦には昨シーズンのような高いレベルに達することができるはずだ」

◆デニス「東京では予選とスタートがいつも以上に重要だろう」

シリーズ第5戦、初開催の東京戦は大きな注目を集めているが、参戦選手としてフォーミュラEのどういうところをファンに見てもらいたいのか、ナトに訊いた(デニスには2月のインタビューで近い質問に答えてもらっている)。

ナト「この週末だけでフォーミュラEの全てを理解してもらうのは難しいと思うけど、まずは一日、楽しんでほしい。予選と決勝が同じ日にあったりもするからね。アタックモード(一時的にパワーレベルを上げられる仕組み)も日本のファンには新しい要素だろう。フォーミュラEは中団や後方のグリッドからでも、上がっていける可能性があるレース。ましてや初開催の場所で、どのチームも(セッティングや戦略の)明確なベースラインをもっていないわけだから、何が起きてもおかしくない」

ナトは東京での戦いに向けて、「エネルギー・マネージメントが大切なことは前戦ブラジルでもあらためて感じた。また、前戦よりは温度条件が低いだろうとも思うので、そうしたコンディション対応も重要になる」とも付け加えた。そしてデニスはこう語る。

デニス「いいスタートが重要だ。狭くてクネクネしたコースで、ましてや新コース。確かに何が起きてもおかしくないし、誰がどんなをミスするかもわからない。シミュレーターを試したりして思ったことは、いつも以上に予選が重要になるということだね。そしていいスタートも重要になる。序盤の10~12周がオーバーテイクのチャンスかもしれないから、(上位を獲るためには)2列目以内のグリッドにいたい。とにかくミスをしたくないので、まずは慎重にいって、レースのなかでリズムをつかみたい」

現在、フォーミュラEの予選は2グループにわかれて“いわゆる予選”を実施したのち、両グループのベストタイム上位4名ずつがトーナメント形式で1対1の対決をしていく独特のフォーマットで実施されている。2列目以内のグリッドを確保するためには準決勝進出が条件になってくる。

東京・有明の特設コース、その特性分析に関してはグリフィス代表もデニスと同様の意を語った。

「およそ2.5kmの間に20ターンもある。タイトなコーナーがいろいろなコンビネーションで続くだけに、ミスをする機会の多いコースといえそうだ。ステアリングワークでの頑張りも必要になってくるだろう。とにかく、誰が勝つかわからないのがフォーミュラEの特徴。不確実性こそが醍醐味だと思うよ」

グリフィス代表は「環境問題を考えること、そして地球を守りたい、という思いがフォーミュラEのDNAにはある」とも語り、このカテゴリーに長く携わる立場から、創立10季目の若いレースが成熟に向かっていることを実感している、との意も話してくれた。

待望の東京初開催は、どんな戦い模様となり、シリーズ(と地球)の未来に何をもたらすのか。フォーミュラEのシーズン10・第5戦「2024 東京E-Prix」は東京・有明の東京ビッグサイト周辺で3月30日に開催される。パートナー企業である長瀬産業の母国戦でもあるアンドレッティ勢の活躍にも大いに期待したい。


> フォーミュラE 東京初開催を振り返る
独特の予選方式は新鮮味大、やはり待たれるのは日本人選手の参戦
https://response.jp/article/2024/04/01/380827.html#google_vignette

《遠藤俊幸》

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