【ホンダ N-BOX 新型試乗】「屈指の名作」第2世代からの長足の進歩を求めるのは酷?…井元康一郎

ホンダ N-BOX ファッションスタイル
ホンダ N-BOX ファッションスタイル全 14 枚

ホンダの軽規格スーパーハイトワゴン、第3世代『N-BOX』を短距離試乗する機会があったのでショートインプレッションをお届けする。

【画像全14枚】

2011年、ホンダの新世代軽自動車「Nシリーズ」の第1号モデルとして登場したN-BOX。昨年デビューした第3世代は角型ボディ、分厚いボンネット、広大な居住区等々、大人気を博した第1世代、第2世代の特徴を受け継いだ完全キープコンセプト型のモデルである。プラットフォームは第2世代のキャリーオーバーだが、ポール側面衝突に対応するため車体設計は大幅変更。サスペンションも改良を受けているという。

ロードテスト車は自然吸気エンジンを積む標準型のライトデコレーションモデル「ファッションスタイル」のFWD(前輪駆動)。試乗エリアは東京~北関東で走行距離は275.2km。おおまかな道路比率は市街地5、郊外路5。1~2名乗車。エアコンAUTO。

◆「屈指の名作」第2世代からの進化は

ホンダ N-BOX ファッションスタイルホンダ N-BOX ファッションスタイル

ではインプレッションに入っていこう。筆者は1年あまり前に第2世代N-BOXカスタム自然吸気の4200kmロードテストを行っており、軽自動車史において間違いなく屈指の名作という印象を抱いた。その第2世代の後継という難しいミッションを背負った第3世代N-BOXは、伸びしろの小さい操縦安定性や乗り心地、静粛性などを何とかして向上させようと開発陣が苦心惨憺したであろうことが如実に伝わってくるモデルだった。

第2世代ですでに軽自動車としてほぼ完成の域に達していた乗り心地をさらに向上させるのは困難極まりないことで、普通に走っているぶんには第3世代のアドバンテージは明確ではない。違いが比較的顕著に認識されたのは道路の陥没部分や大きな路盤の段差を乗り越えるときで、第2世代はドンと突き上げが生じていたのに対し、第3世代はその衝撃をうまく抑え込んでいた。

そのぶん普段の乗り心地は路面の細かな凹凸の拾い方が旧型よりわずかに増えた気がしたが、この点についてはその場で両者を乗り較べたわけではないので、あくまで記憶を頼りとした印象論だ。

タイヤは155/65R14サイズのダンロップ「エナセーブEC300+」。タイヤは155/65R14サイズのダンロップ「エナセーブEC300+」。

直進安定性やハンドリングについては明確に特徴を体感できるようなシーンに出くわさなかったため多くを語ることはできない。普通に走っていて不満が出るようなことはもちろんなく、流れの速い夜間の国道新4号茨城~栃木区間程度の速度域では十分な安定性を示した。第2世代が新東名を優速な流れに乗って走るのにも全然困らないほどの性能を有していたことから、直進安定性はこの第3世代も十分に確保されているであろうことは容易に想像できる。

旋回性能に関しては、江戸川沿いの河川敷道路で時折現れるシケインのようなコーナーを曲がるときの姿勢の安定感は第2世代よりいいように感じられた。第2世代が四輪を路面に練りつかせながらアバウトに走るようなちょっと昔の欧州車的フィールだったのに対し、第3世代はイメージした走行ラインをトレースして走るような性格付けに変わっているように感じられた。シャシーの特性については機会があれば長距離ロードテストを行って確認したい。

ホンダ N-BOX ファッションスタイルホンダ N-BOX ファッションスタイル

◆実測燃費は23.2km/リットル、静粛性も向上

パワートレインは第2世代からの持ち越しだが、CVTのチューニングが少なからず変わっており、少々スロットル開度を大きく取っても簡単に回転数を跳ね上げず、低回転トルクを生かして走れるようになっていた。

「S07B」型自然吸気エンジンはライバルと比較して低回転トルクが優位に厚く、1000rpm台後半~2000rpm台前半でもずいずいと車速を上げることができるだけの能力を有している。第2世代はスロットル操作がラフだとすぐに回転が上がってしまい、高効率な領域をみすみす外してしまうということがあった。第3世代はそんな微妙なスロットル操作をせずとも熱効率の高い領域を外しにくいようなシフトスケジュールになっていた。

市街路と郊外路をほとんどイーブンで224.2km走った区間の実測燃費は23.2km/リットル(平均燃費計値23.7km/リットル)。クルマの特性がつかめてくればもう少し伸ばすことができるように思われた。

前席。きわめてオーソドックスに作られている。前席。きわめてオーソドックスに作られている。

静粛性も向上しており、体感的には第2世代モデルの「カスタム」と同等。とくに良好なのはロードノイズの遮断は良好で、舗装面のザラつきがきつい道路でもカスタムよりチープな4スピーカーオーディオで音楽を楽しむのに困ることはなかった。第3世代のカスタムはこの標準型よりさらに遮音性が高められているとのことなので、機会があれば確かめてみたい。

インパネまわりのデザインが大きく変わったことからカタログスペック上の室内長は大幅に減少したが、後席の広さも健在。

◆長足の進歩を求めるのは酷だったかも

助手席側ダッシュボードを俯瞰。ダッシュトレイが設置されているが、ボックス型の収納はなし。助手席側ダッシュボードを俯瞰。ダッシュトレイが設置されているが、ボックス型の収納はなし。

第2世代に比べて後退したのは車内の小物収納スペースである。この項目については元々N-BOXはトップランナーではなかったが、第2世代はステアリングコラムとメーターパネルの間に容積の大きな収納ボックスが備えられており、それが小物を放り込んでおくのに非常に便利だった。第3世代ではメーターパネルが液晶となり、その設置場所も運転者に近くなったことから、そのスペースがなくなった。

そのかわりグローブボックスがティッシュペーパーの箱を収容可能なように改設計されていたが、ティッシュペーパーを取り出すのにいちいち大きなフタを開けるのは面倒であるし、ティッシュペーパー以外のものを入れておくのには不向きだ。その他の収納スペースも明らかに減っており、長距離ドライブでは車内に後付けの小物入れを設置したくなるところだろう。

総じて第3世代N-BOXは第2世代の正常進化形として十分な商品力を有していた。が、元が軽のディメンションという制約があることを思うと限界と言えるほど良かっただけに、そこから長足の進歩を求めるのは酷だったかもと思えたのもまた確かだった。もっとも275km程度のロードテストでは出会う道も天候もごく限られているので、知ることができていない美点がある可能性もある。いずれ再ロードテストを行い、続報をお伝えしたいと思う所存である。

N-BOX ファッションスタイルのサイドビュー。リアドアの間口が広いのはN-BOX伝統の美点。N-BOX ファッションスタイルのサイドビュー。リアドアの間口が広いのはN-BOX伝統の美点。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
エンジン:★★★★
フットワーク:★★★★
おススメ度:★★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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