【ヤマハ XSR900GP】結果的に「XSR900」とは別モノに、追求したハンドリングも「プレッシャーだった」

ヤマハ XSR900GP
ヤマハ XSR900GP全 25 枚

ヤマハ発動機から間もなく登場する、新たなスポーツヘリテイジモデルが『XSR900GP』(発売日2024年5月20日/価格143万円)だ。その開発者インタビュー前編(【ヤマハ XSR900GP】開発者が語る「ただの80年代オマージュやレプリカを作ったわけじゃない」)では、開発の経緯やそのねらいについて聞いた。後編では、ベースになった『XSR900』とは大きく異なるライディングポジションのことを中心に、各部に施された変更点へのこだわりを聞いてみた。

【インタビュー参加メンバー】(敬称略)

PF車両ユニット PF車両開発統括部 SV開発部
プロジェクトリーダー
橋本 直親

PF車両ユニット PF車両開発統括部
SV開発部
野原 貴裕

PF車両ユニット PF車両開発統括部
車両実験部 プロジェクトグループ
細 彰雄

PF車両ユニット PF車両開発統括部
車両実験部 プロジェクトグループ 主事
田中 大樹

PF車両ユニット 電子技術統括部
システム開発部 設計1グループ
中田 周太郎

ヤマハ XSR900GPの開発メンバーヤマハ XSR900GPの開発メンバー

◆ライポジやハンドリングの決定は、かなりのプレッシャーだった

----:XSR900とXSR900GPとの間にある差異は、カウルの有無とハンドルの位置ですが、特にアップハンドルからセパレートハンドルになったことの違いは大きいのではないでしょうか。

橋本:おっしゃる通り、上体の姿勢がまったく異なります。それに伴って、荷重バランスも変わっているため、シート、ステップ、サスペンション……といったあらゆる部分を見直し、XSR900GPとしての適合を図っています。

----:両モデルを比較したところ、おおよそですが、ハンドル位置は上下方向では下へ、前後方向では前へ100mmほど移設されているようです。またステップ位置はやや上がって後方へ引いた、いわゆるバックステップになっていて、シート高は25mmアップ。つまり、かなりアグレッシブさが増しているわけですが、実際にまたがってみると、見た目ほどきつくはないですね。

ヤマハ XSR900GP(上)とXSR900(下)のハンドルまわりヤマハ XSR900GP(上)とXSR900(下)のハンドルまわり

橋本:サーキットに軸足を置いている「YZF-Rシリーズ」とは異なり、XSR900GPは、高速道路を使って郊外のワインディングへ出掛け、そこで心地いいひと時を楽しんで頂く。そんな使い方を想定していますから、日常的な使い方でも手や躰への負担が少なく、それでいて、スポーツ性を満喫できる位置を探りました。ハンドルの垂れ角や絞り角はコンマ1度ずつ、ステップはミリ単位で調整しています。

細:レーサーをモチーフにした外観を持っていますから、その世代のお客様は思い入れも強い。当然、走りに対する期待値も高いでしょうから、ライディングポジションやハンドリングの決定は、かなりのプレッシャーでした。あの頃をリアルタイムで知っているメンバーにも積極的に関わってもらい、当時の雰囲気を感じられるかどうかも含めて、テストを繰り返しました。

ライディングポジションは「見た目ほどきつくない」。このあたりにもGPならではの開発思想が感じられる。ライディングポジションは「見た目ほどきつくない」。このあたりにもGPならではの開発思想が感じられる。

----:メインのユーザー層は、ちょうど僕(筆者・伊丹孝裕/52歳)くらいだと思います。スポーティさの中にも、シートの柔らかさ、ラバーが配されたステップバー、クルーズコントロールといった快適性が確保されていて、そのユーザーフレンドリーさが好印象です。ハンドリング的は、どんなキャラクターになっていますか?

橋本:XSR900GPのリアアーム(スイングアーム)は『MT-09』より長く、XSR900よりフロント荷重が増したポジションになっています。したがって、コーナーでは狙ったラインをスパッと気持ちよくトレースしやすく、スロットルを大きく開けても落ち着いた挙動で力強く立ち上がれる。そんなハンドリングに仕上がっています。

細:普段使いの安楽さや軽やかさ重視ならMT-09やXSR900に分があり、それぞれの特性に応じた棲み分けができています。

◆当初は必要最小限の変更に留める計画だった

ヤマハ XSR900GPヤマハ XSR900GP

----:XSR900とは、キャスター角やトレール量、ホイールベースも少しずつ変わっていますね。

野原:ベース(XSR900)のディメンジョンがしっかりしていたので、単にハンドルを換えただけではバランスを損ないます。そこで各部の調整を図っていくわけですが、手法として結構大きかったのが、フロントフォークを伸ばして姿勢を起こしたことです。いろいろと探っている中、車両実験の細に「フロントフォークを突き戻すのはどうか?」と提案され、結果的にその方向で成立させることができました。

----:サスペンションはXSR900とは別モノでしょうか?

橋本:それぞれKYB製のサスペンションを採用し、フロントはMT-09SPの倒立フォークをベースに、長さやセッティングを変更しています。リアは完全な新作で、別体タンクやリモートのプリロードアジャスターを装備する他、リンクのレバー比もXSR900GPの特性に合わせて最適化。前後ともにプリロード、伸び側減衰力、圧側減衰力(高速/低速の2WAY)の調整が可能です。

ヤマハ XSR900GPヤマハ XSR900GP

----:特性に合わせると言えば、ヘッドパイプまわり、エンジン懸架、ピボットまわりには、それぞれ剛性チューニングが施されているようですね。また、ステムシャフトの材質がスチールからアルミになるなど、車体だけでもかなりの部位に手が加えられています。

田中:CP3エンジン搭載モデルは、基本的に多くのコンポーネントを共有しています。そのため、当初は必要最小限の変更に留める計画でしたが、たとえその振り幅が小さくとも変更箇所が多岐に渡ったため、乗り味も見た目もまったく違うものになりました。

----:エンジンそのものはいかがでしょう?

ヤマハ XSR900GPヤマハ XSR900GP

田中:エンジンと排気系は、XSR900のものを踏襲していますが、吸気系は変更しています。エアクリーナーボックスの形状や吸気ダクトの本数が異なり、高周波サウンドを強調しつつ、それが雑味やノイズにならないようにチューニングしています。

----:体感しやすいシチュエーションがあれば教えてください。

橋本:たとえばクイックシフターの操作ひとつ取ってもそうですね。シフトアップのリズミカルなサウンドが心地よく耳に届き、特にスクリーンの中に身を潜り込まると、吸気ダクトとヘルメットが近づくこともあって、かなりの高揚感をもたらします。

ヤマハ XSR900GP プロジェクトリーダーの橋本 直親さんヤマハ XSR900GP プロジェクトリーダーの橋本 直親さん

◆GPシーンで培ってきた歴史や技術を現代風に仕立てた『XSR900GP』

----:電子デバイス系で新しい制御はありますか?

中田:走行モードがYRCモードと呼ばれるものになり(XSR900はDモード)、SPORT/STREET/RAINという3パターンの中から選択できる他、好みにカスタマイズできる枠として、CUSTOM1/COSTOM2の2パターンを設けています。それぞれの選択に応じて、トラクションコントロール/スライドコントロール/リフトコントロール/クイックシフター/ブレーキコントロール/バックスリップレギュレーターの数値やON/OFFが割り振られ、幅広いシーンに対応します。

----:5インチTFTメーターの採用に伴う、機能の向上はいかがでしょう。

XSR900GPの5インチTFTメーターXSR900GPの5インチTFTメーター

中田:専用のアプリとBluetoothを介すことによって、YRCモードのセッティングがスマホでもできる他、通話やメールの通知などの多機能化を図っています。また、特にこのモデルの場合、スマホをマウントすることによってコクピットビューの「らしさ」を崩したくないというお客様もいらっしゃるかと思います。それに関しても、やはりアプリとBluetoothによって、ナビゲーション画面をメーターに表示することが可能です。最新のコネクティビティがもたらす利便性とXSR900GPならではの雰囲気作りの両立に注力しました。

橋本:『The Embodiment of Yamaha Racing History(ヤマハレースヒストリーの体現者)』というモデルコンセプト通り、私どもがグランプリシーンで培ってきた歴史や技術を現代風に仕立てたモデルが、このXSR900GPです。デザインだけでなく、ハンドリングでもそれを表現できていると自負していますから、ぜひお楽しみください。

----:ありがとうございます。試乗できる日を心待ちにしています。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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