新次元の快適性! コンチネンタル「MaxContact MC7」飯田裕子氏による海外試乗レポート

コンチネンタル「MaxContact MC7」
コンチネンタル「MaxContact MC7」全 13 枚

コンチネンタルタイヤのアジアパシフィック(APAC)地域戦略シティ・スポーツタイヤ「MaxContact MC6」のニューモデル、「MaxContact MC7(以降、MC7と略」が登場した。

◆コンフォート性能重視のMC7
スポーツ性能も兼ね備える新タイヤとなる

コンチネンタル「MaxContact MC7」コンチネンタル「MaxContact MC7」

ドイツに本拠地を置くコンチネンタルタイヤはグローバルな製品展開を行う一方で2004年からAPAC地域に向けた専用タイヤの販売を開始している。地域専用タイヤが生まれた背景はユーザーのニーズと交通環境によりマッチしたタイヤの提供だ。グローバルタイヤの製造要件にはドイツの速度無制限エリアのある高速道路=アウトバーンも安全に走ることが含まれるが、ほかの国ではそこまでのハイスピードを求める必要はない。一方、APAC地域のユーザーはタイヤの性能に静粛性や乗り心地などの快適性を求める傾向が強いことが分かり、専用タイヤの開発はComfort Contactシリーズから始まっている。

現在、日本で購入のできるコンチネンタルタイヤの乗用車用タイヤ(SUVタイヤ除く)全8製品のうち、APAC製品は異なる特徴を持つ4製品がラインナップされている。中でも今回登場したMC7は最もスポーツ性能の高いタイヤだ。欧州ほどの高速走行を求めずコンフォートさを取り入れたと聞くとスペックに物足りなさを感じるクルマとそのユーザーもいるかもしれないが、MC7のタイヤの速度記号はW(270km/h)またはY(300km/h)。グローバル製品のウルトラハイパフォーマンスタイヤSportContact7(18-24インチ)を「スーパー・スポーツ」と位置づけ、MC7(16-21インチ)は「シティ・スポーツタイヤ」としてラインナップする。

コンチネンタル「MaxContact MC7」コンチネンタル「MaxContact MC7」

そのような中でMC7はグローバル製品のSportContact7に近いがコンフォート性能も重視したタイヤだ。スポーツカーやスポーティなドライブフィールを求めるけれど、普段使いには快適さも諦めたくないという日本のユーザーにフィットするスポーツタイヤと言える。今回、オーストラリアはシドニーを起点にサーキットとタイヤにはかなり不利と思えるような一般道で試乗し、それが実感できた。

◆3つの特徴と4つのテクノロジーで
性能の使い分けが行われている

コンチネンタル「MaxContact MC7」コンチネンタル「MaxContact MC7」

MaxContact MC7は「スポーツ・プラス・テクノロジー」を採用し、「優れたコントロール性」、「スポーツ性能を損なうことなく高められた静粛性」、「飛躍的に進化したブレーキング性能」を特徴とするタイヤだ。コンチネンタルタイヤはこれらの3つの特徴を「CTRL」=コントロールと総称する4つのテクノロジーをハンドリングやブレーキ、静粛性などで目指す性能に対し使い分けて実現している。

C=コーナリング・マクロ・ブロック
T=2イン1 ノイズ・ブレーカー3.0
R=リフレックス・コンパウンド
L=レーザーカット・3Dサイプ

インプレッションをご紹介する前に、これらの技術を紹介したい。例えば「優れたコントロール性」には、CとRの技術が用いられている。

C:「コーナリング・マクロ・ブロック」はコーナリング時に路面とタイヤの接地面を最大化し、アンダーステアやオーバーステアが出にくい剛性を確保する。MC6よりも接地面が広く、接地面にかかる圧力もきれいに分散。その上、重視しているのがコーナリング中にタイヤの外側部分のふんばりもより効くようになっているという点だ。さらに外側の縦溝の内部にスタビライザーバー(隠れブリッジみたいな)を高頻度で採用。横からの力をこのスタビライザーバーも受け止め、あたかも一つの大きなブロックを形成するかのようにして横からの剛性に対応している。

T:「2イン1 ノイズ・ブレーカー 3.0」は溝のなかにくびれのような構造物を配置し、走行中(路面の凸凹)に発生する共鳴音をコントロールするだけでなく、まるで水ホースの出口をつまんだときのように水流を早め、ウェット路で溝の中を通過する水の排水を早める性能も併せ持つ。そこで“2イン1”と名付けられたそうだ。

R:「リフレックス・コンパウンド」は温暖な気候条件下のドライ/ウェット路に焦点を当て、優れたグリップ力/コントロール性能を発揮する。専用ブレンドの可塑剤を入れていることが特徴だ。これは樹脂や特殊なポリマーを配合したもので、近年は多くのメーカーが同様に配合を工夫し性能を向上させている。ただし研究レベルではなく大量生産するタイヤで狙った性能を出すべく分子レベルで配合をコントロールするのが非常に難しいのだ。コンチネンタルタイヤはこの配合技術、それも大量生産する際の配合技術が飛躍的に改善され可能にしているそうだ。

L:「レーザーカット・3D・サイプ」はウェット路面で制動距離を短くするためにユーザーが最も重要視するウェットグリップを高めるため様々な角度と方向からの水膜を切り裂くように設計、配置されたアクアサイプ、スターサイプ、ライトニングサイプという3つの異なるサイプを採用する。

◆試乗から感じたMC7の進化ポイント

今回、「ラッデンハム・レースウェイ」サーキットで行われた試乗はウェットコンディションに注目しMC7の特徴となる性能を確認することができた。この試乗では比較用タイヤも銘柄を隠して持ち込まれたが日本でも(個人的にも)評価の高いそれは日本からの参加者ならわかるタイヤ、とだけ記しておく。

コンチネンタル「MaxContact MC7」コンチネンタル「MaxContact MC7」

80km/hからのウェット直線フルブレーキはBMW330iで行った。MC7はABSの作動しながら接地面全体を路面にギュッと押しつけるような感覚とともに確かな制動感を得てあっという間に停止。比較タイヤもあっという間に停止する感覚などフィーリングに大きな違いはなく、安心感や頼もしさは変わらなかったが同グループの10名以上の参加者が比較タイヤよりもMC7は1m以上短く止まれ、データではよりウェット制動性能が優れることが表れたのだった。

コンチネンタル「MaxContact MC7」コンチネンタル「MaxContact MC7」

ウェットコーナリングもBMW330iにMC7を装着し、サーキットの1つのタイトコーナーで速度60km/hから意図的にアンダーステアを作り出し、アンダーステアの発生段階から発生に至る過程を確認した。リアルイメージはオーバースピード気味でコーナーに進入してしまい外側に膨らもうとするクルマをドライバーが曲げようとハンドルを慌てて切り増す操作で修正しようとする感じだ。

MC7はアンダーステアの発生過程も穏やか。そこでアンダーステアが発生する、または発生しそうな僅かな瞬間の挙動を得やすい。濡れた路面でも接地面の排水やタイヤの外側の踏ん張りが効いているのだろう。比較をしてもコーナーの外側に膨らむ速さも度合いも少ない。MC7はウェット路でのアンダーステアの発生も穏やか、かつ発生を抑えやすい性能を持つことが確認できた。

試乗の後半にはドライ路面でハンドリング走行もできたが、やはりタイヤの接地面が吸い付くように路面を捉えて走る印象が強く、なおかつサイドの踏ん張り(グリップ)も感じられるおかげで高い安定感をコーナリングで頼もしく感じることができた。ステアリングを操作する際、グリップ度合いを手応えで感じながらイメージ通りのラインをトレースでき、初めてのサーキットの走行も楽しめたけれど、時には不案内なコースゆえ、コーナリング中にハンドルを切りましたり戻したりする修正を行うような場面もあった。そんなときもわずかな修正操舵でさえ正確な反応が得られたことはリアルワールド(一般道)でも心強い。

 

コンチネンタル「MaxContact MC7」コンチネンタル「MaxContact MC7」

一般道もMC7を装着したBMW330iMスポーツで試乗した。サーキット試乗から始まった今回、移動程度の走行をしただけで乗り心地の良さを感じていたけれど、サーキットは路面のコンディションも良いためリアルロードでの試乗ではどのような印象なのだろう。同市販モデルは専用開発されたランフラットタイヤを標準装着しているのでタイヤが少し重たいがBMWはそれを上手くサスペンションで制御して安定感のあるスポーティな乗り味を実現している。その点では一般的な夏タイヤのMC7を履くBMW 330iは足下の軽快さが第一印象として新鮮だった。高速道路の直進性に優れ、走行中は全体と通して軽快でスッキリと走るが、ハンドルを握る手元の手応えや乗り心地は僅かにシットリとしている。この感覚が得られることで前後席、乗る場所に関わらずこのクルマの居心地を快適でコンフォートな印象を与えてくれた。

コンチネンタル「MaxContact MC7」コンチネンタル「MaxContact MC7」

MC7がスポーティなハンドリング性能とコンフォートライドを高いレベルで両立させていると思えたのは郊外を走行していたときだ。シドニーの街中から内陸を北上しハンターバレイに向かう一般道は排水性を考慮した目の粗い路面が特徴だった。その上、路面が剥がれた大小の穴、それらを修復箇所もあちこちにある。これに路面のうねりやコーナーもある道が延々と続くシチュエーションでMC7はうねりながらカーブするコーナーでも路面をしっかりと捉え、イメージ通りのラインを少しの路面の影響も感じさせず通過する。次々と現れる路面の凸凹もその感触はあるが当たりは滑らか。荒れた路面など路面の変化によってゴロゴロという音は聞こえるものの、乗り心地に響くようなこともなく一般的なタイヤのなかではとても良いレベルだった。車内で音楽でも聴いていたら気にならないレベルではないかと思う。ちなみに後席にも乗る機会があったがその印象は変わらない。これならドライブ中、快適な移動をしながら前後席の会話もより弾みそうだ。

MC7はドライハンドリングやブレーキ、燃費の性能向上を図っているが、今回はMC7の特徴であるウェットブレーキングと静粛性、乗り心地の良さをリアルに体験することができた。静粛性は耳で聞こえる音だけでなくゴロゴロやゴツゴツという体感できるノイズを緩和させて人間は静か=快適と感じられるものだ。MC7はハイパフォーマンスカーからセダン、ミニバン、コンパクトカー、SUVなど幅広いモデルタイプに装着可能で、今後サイズ展開も広がっていくという。

コンチネンタル「MaxContact MC7」コンチネンタル「MaxContact MC7」

マクロレベルのコンパウンド、溝やその内部に隠れた構造、性能の異なるサイプたちによってスポーティさと静粛性をバランス良く両立させている。スポーティなタイヤを好む方のなかにも、「これまで愛車の乗り心地がドライバーの自分は良いけど、家族にはちょっと硬いかな」、「路面の粗いところで音が気になるんだよな」という方にとって魅力的なタイヤではないかと思う。

《飯田裕子》

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