【メルセデスマイバッハ SL680モノグラム】マイバッハが求めるラグジュアリーさとドライビングプレジャーとは

メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ全 17 枚

メルセデス・ベンツ日本はマイバッハブランド史上最もスポーティーなクルマ、メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ』をアジアプレミアした。本国からブランド責任者が来日したので、このクルマの特徴とともにマイバッハブランドについて話を聞いた。

◆2つの特別仕様

2025年以降市場導入される際には、2つのデザインコンセプトが用意される。ひとつは「レッドアンビエンス」と呼ばれるもので、黒曜石ブラックメタリックとマヌファクトゥール・ガーネットレッドメタリックのツートーン塗装が特徴だ。もうひとつの「ホワイトアンビエンス」は、オブシディアンブラックメタリックとマヌファクトゥール・オパライトホワイトマグノのコントラストが際立つ仕様で、ひときわ鮮やかなレッドとエレガントなホワイトは、ともに官能性、美しさ、軽やかさを体現している。またその他の外装色も相談に応じるという。

走行面ではマイバッハらしい静かで快適なドライビングを実現。特にノイズを最適化したエグゾーストシステムや、広範な遮音性、快適性を重視したサスペンションセットアップ、ソフトエンジンマウントなどの手が入れられている。

585psの4リットルツインターボエンジンと、アクセルペダルの特性を調整した9G-TRONICが組み合わされ、4MATICを採用。リアアクスルステアリング(四輪操舵)も標準で備わる。

◆戦前から続く2シーターオープンの歴史

マイバッハといえばラグジュアリーサルーン、あるいはショーファドリブンのクルマを思い浮かべるだろう。しかし、その歴史を戦前まで遡ると『DS8ツェッペリン』のバリエーションにフランスのカロッセ、ソーチックが手掛けた大型2シーターオープンがラインナップしていた。そのほかにもいくつものコーチワークの手による2シーターオープンも存在した。

マイバッハD8ツェッペリンスポーツカブリオレ(写真は4シーターオープン)マイバッハD8ツェッペリンスポーツカブリオレ(写真は4シーターオープン)

そういった背景もあり、「最近では、お客様やファンから新しいオープントップのマイバッハを求める声が多く寄せられていたのです」と述べるのはマイバッハブランドの責任者、ダニエル・レスコー氏だ。

また、2017年にペブルビーチコンクールデレガンスで『ビジョン・メルセデス・マイバッハ6カブリオレ』というショーカーを公開し好評だったことも後押しとなったようだ。

ヴィジョン・メルセデス・マイバッハ6カブリオレヴィジョン・メルセデス・マイバッハ6カブリオレ

メルセデス・マイバッハSL680モノグラムのベース車はメルセデスAMG『SL63 4MATIC+』だという。それを選んだ理由はについてダニエル氏は、「マイバッハは最高のドライビングと快適性を提供するブランドです。それを踏まえお客様に提供する価値として何が大事なのかを考えると、リラックスしたクルージングやエンジンサウントなどから、AMG63 4MATIC+とV型8気筒がベストマッチだと判断したのです」とのこと。

もともとSLには小さなシートがリアにある。「それを取り除き2シーターとしました。これも最高のドライビングプレジャーと、快適性を提供したかったからです。シートの後ろにはダブルスクープと呼ばれるデザイン要素があります。これと2シーターによって、自身で運転して喜びを感じてもらえるクルマだということを表現しているのです」と述べた。

◆変わるものと変わらないもの

ダニエル氏は、2022年4月より現職に就任。その気持ちは「光栄です。マイバッハというブランドは100年を超える素晴らしい歴史を持っています。そこでチームと密に協力し合ってマイバッハというブランドを前進させていくことに全力を傾ける。そしてこのブランドの認知を上げ、より多くの人にこのブランドを目に触れるようにして、よりアプローチしやすいものにしていきたいと考えています」と語る。

マイバッハの歴史マイバッハの歴史

また、マイバッハというブランドのイメージについて、「何よりも有名であるということ。そしていろいろなエピソードがある。そういったストーリー性の多いブランドだと思います。それに伴って非常に価値も高いですし、伝統も長いというものでした。こういったことを踏まえながら品質の面でも、そして価値の面でも今後も間違いなく前進をして、そして高めていきたいのです。それが未来に向けての私たちのやり方です」とコメントし、「長い歴史の中で当然順風満帆ではありませんでした。それでもこの素晴らしいブランドの責任者でいられるのは光栄なことです」と述べる。そして、「ブランドは常に生まれ変わっていけるものだと思いますし、そういったブランドがあり続けたいと考えています」と語った。

マイバッハはいわゆるラグジュアリーブランドといえる。それを今後、どう育て、どう生まれ変わらせていくのか。ダニエル氏は、「常に市場の状況やお客様のニーズを観察し把握するようにしています。昨今のトレンドを見ていると、特に若年層でデジタル化のニーズが高まっていますし、特に環境面においてもいろいろな懸念がある。そういった大きなトレンドを踏まえながら、マイバッハというブランドにこの状況をどう落とし込んでいくかに努めています」という。

その一方で、「基本的に変わらない面もあります」とダニエル氏。それはマイバッハならではの職人技、そしてベストな素材を使っていくこと、デザインを最高峰のものにすること。この両面がありますので、両方(変わる面と変わらない面)を続けていくことが大事です。この良い例としてメルセデス・マイバッハ『EQS SUV』があります。マイバッハブランド初のBEV SUVであるだけでなく、トップエンドのカテゴリー初のBEV SUVでもあるのです。こういったアプローチを今後も続けていくことで、正しいプロダクトをお客様に提供していくのです」とコメントした。

◆専用モデルの予定はない

ここで気になるのは、メルセデスAMG『GT』のように、マイバッハ専用モデルが登場するのかだ。ダニエル氏は、次のように回答する。

「マイバッハは2014年以降、常にメルセデスベンツのトップテクノロジーと、そしてマイバッハがもたらすラグジュアリーの組み合わせをもとにメルセデス・マイバッハとして展開しています。そして、この組み合わせは、これまでもお客様に非常に好評をいただいていますので、戦略としては今まで通りの組み合わせでで進めていきます。現状ではマイバッハ専用のプラットフォームの計画はありません」と否定。

さらに、「マイバッハブランドはショーファーカーというイメージを持たれていますが、メルセデス・マイバッハSLを展開することで、ご自分で運転していただく楽しみをお届けできるようにしていきたい。そこにマイバッハが持っているスムーズさや快適性といった要素を確実に感じてもらえるようにしていきたいのです」と基本的にはメルセデスベンツのラインナップからマイバッハブランドに合うクルマをチョイスし仕上げていくようだ。

そして、他社とマイバッハブランドとのポジショニングは、「非常に良いポジションが取れているのではないか」という。具体的には、マイバッハブランドが提供できるのは、「お客様の中には非常にあまり目立ちたくない、控えめにラグジュアリーを感じたり表現したいというお客様に対して提供できる価値もある一方、少し目立ってみたいといった好みを持っているお客様に対しても、このSLでハイライトされているようにロゴがしっかりと出ているなどで少し目立たせる価値を提供もできるという幅広いラインナップを持っていることがマイバッハブランドのユニークな点でしょう」と他ブランドとの違いを語った。

メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズメルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ

◆好調なマイバッハブランドのわけ

マイバッハの日本市場の状況も非常に好調だという。2015年にメルセデス・マイバッハ『Sクラス』を導入以降、SUVのメルセデス・マイバッハ『GLS』、2024年にはBEVのEQS SUVをラインナップし、現在3車種4モデル。パワートレインもV型12気筒からBEVまで揃っている。さらに、特別仕様車なども投入。その結果として、「販売台数は順調に推移し、2021年から2023年まで前年比プラス約200台のペースで登録台数を伸ばしています」というのはメルセデス・ベンツ日本社長兼CEOノゲルティンガー剛氏だ。

これには大きく2つの背景があるという。まず販売店拠点だ。2022年12月にメルセデスベンツのトップエンドモデル(マイバッハやAMG、『Sクラス』や『Gクラス』など)を専門に取り扱う世界初の販売店、スターズ@メルセデス・ベンツ銀座をオープン。「お客様からとてもご評価いただいており、今後全国4カ所で展開」。「さらにそこで働く人材の強化を予定しています」という。この2つを合わせることで、「マイバッハの世界観を存分に体験できる専用スペースを提供するとともに、専門のトレーニングを受け、メルセデスマイバッハブランド製品に精通したマイバッハエキスパートがブランドの魅力をお客様に伝えていきます」とコメントした。

日本だけでなく世界的にも好調なマイバッハブランド。歴史を踏まえると専用モデルがないのは非常に残念だが、この名前を大切に守り続けてもらいたい。

メルセデス・ベンツ日本社長兼CEOノゲルティンガー剛氏(左)とメルセデスマイバッハブランドの責任者 ダニエル・レスコー氏(右)メルセデス・ベンツ日本社長兼CEOノゲルティンガー剛氏(左)とメルセデスマイバッハブランドの責任者 ダニエル・レスコー氏(右)

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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