海外で便利なアプリといえば、Uberなどの配車アプリももはや手放せない存在だ。筆者のスマートフォンにもUber、Grab、Gojekの他、LimeやTireといったシェアバイクのアプリが入っている。各国のカンファレンス、メディアイベント、モーターショーなどに参加する場合、これらのアプリが活躍する。
インドネシアではタクシー移動がデフォルトに
そして今回、2月に開催された「インドネシア国際モーターショー(IIMS)」の取材時にタクシー配車アプリをかなりヘビーに使わせてもらった。たとえばドイツやパリなら地下鉄やバスが発達しているので、タクシー利用は空港往復など限定的だが、タイやインドネシアは日本や欧州ほど地下鉄やトラムが発達していないので、ちょっとした移動はタクシーがデフォルトになる。
タイはトラムなどの都市交通が発達しているが、日本の地下鉄や私鉄のように急行や快速列車がなく、基本各駅停車する。主要なエリアを直接つなぐ列車がなく中距離移動となると車(タクシー)なら15分のところ電車利用だと、各駅停車+乗り換えなどで1時間以上ということが多い。そして、近年、これらのエリアでも都市部の開発が一巡して、カンファレンス会場やオフィスエリアが郊外に広がっている。安いホテルと思ってダウンタウンなどに宿をとると、移動ロジが大変なことになる。
インドネシアと中継地のタイでGrabとGojekをどのように活用したかをレポートする。タイは2024年のモーターショーでも訪れたが、インドネシアは10年以上来ていなかった。久々の訪問とあって、とくにタクシー事情が大幅に変わっていたのであわせて報告したい。
15年以上前は黒塗りのSilverBird一択だった
15年以上前、インドネシア(ジャカルタ)を訪れたときは、調査案件がメインで媒体取材はその合間だった。当時、インドネシアには地下鉄がなく中央ジャカルタの幹線道路は信じられないくらいの渋滞をしていた。片側4車線くらいあって、主要交差点は信号のないラウンドアバウトになっているのだが、5から6列の車両が入り乱れるカオス状態だ。このときも移動はもっぱらタクシーだった。
ジャカルタはBlueBirdタクシーという文字通りブルーのタクシーが一般的だったが、旅行者や出張者は原則乗ってはいけないとされていた。同じ会社でSilverBirdという黒のメルセデス(一部BMWなどもあった)のタクシーを呼べ、郊外に行くならSilverBirdをチャーターして仕事が終わるまで待ってもらえ、とアドバイスされた。そのほうが料金を含めてトラブルが少ないからだ。なお、郊外の大学や工場などに行くと、そもそも現地でタクシーが拾えない。
あれから15年以上経っており配車アプリが一般的になっているので、状況は変わっているだろうと思いながら、スカルノ・ハッタ国際空港の出口を出た。ライドシェアのピックアップポイントを探す。多くの空港では、一般的なタクシー乗り場とUberやLyftなどのライドシェアの乗り場(呼べる場所)を分けている。タクシー乗り場に行ってもUberやGrabは来てくれない。
空港からはe-BlueBirdのアイオニック5を手配
スカルノ・ハッタ空港では、タクシー乗り場の近くにGrabやGojekの予約カウンターが設けられていた。スタッフも常駐しているようで、車両も周辺に待機している。その2社のカウンターの間に「e-BlueBird」という表示のカウンターを発見した。みると、ヒョンデの『アイオニック5(IONIQ 5)』が何台か待機している。

GrabかGojekで安くホテルまで移動しようと思っていたが、アイオニック5を発見したのでe-BlueBirdを使ってみることにした。このときe-BlueBirdのアプリをインストールしていなかったが、カウンターのスタッフが手配してくれた。支払はその場でクレジットカード決済となった。アプリをインストールしていればおそらくその操作でいけただろう。
空港から予約したホテルまでは約28km。Grabアプリに表示された料金は、スタンダード25万IDR(インドネシアルピア)。日本円で約2500円弱だ。e-BlueBirdのアイオニック5の料金は46万IDR(約4400円)GrabやGojekならばプレミアムカークラスの料金だ。
筆者はマイカーもEVだが、タクシー、レンタカーこそEVにすべきと思う。同じ料金なら乗り心地や快適さはEVのほうが間違いがない。大きなスーツケースもあったので、ホテルまではなるべく快適な大型のEV(アイオニック5)を頼むことにした。
最近は減っているが、海外だと、「これは公道を走ってはいけない車なのではないか?」という整備状態のタクシーに遭遇することがある。20年前のイエローキャブや海外のプリウスタクシーはなかなか味わい深いものがあったのを思い出す。
インドネシアのタクシーは7人乗りでMTが基本
ホテルはモーターショーの会場のすぐ近くで、歩いて行ける距離にある。ショーの取材にタクシーは必要ないが、現地のディーラー取材はもっぱらタクシーを使うことになる。GrabとGojekを何度か使ってみた。
取材移動は、原則として最安値料金のスタンダードクラスを手配していた。アプリで目的地を入れると候補となる車両のうち最初に表示される。車種で多いのは、トヨタ『アバンザ(AVANZA)』だった。スタンダードクラスで予約すると、ライドシェアではなく普通のタクシーがやってくることもある。アプリでは予約したドライバー、車種、ライセンスプレートナンバーが表示されるが、到着すると車両がBlueBirdのタクシーだったということもあった。
アバンザは、トヨタがダイハツと共同開発した新興国向けの7人乗りミニバン。インドネシアで生産されている。BlueBirdタクシーにもこの車種が多い。他の車両では、ホンダ『シビック』、ダイハツ『アイラ(AYLA)』のようなコンパクトカーのGrabも見かけた。なお、タクシーやライドシェアの車両は、ICEの場合、ほぼ例外なくMT車だった。
配車される車両に、GrabとGojekの違いはあまりなかった。調べると、現地では7人乗りのミニバン(MPV)が人気で、タクシーも7人乗りが多く走っていた。調べるとBYD『M6』のタクシーも走っている。BYDは、インドネシアでは『ATTO 3』『シール』『ドルフィン』の他、M6というATTO 3を大きくしたような7人乗りMPVを販売している。
配車アプリで中継地を設定してみる
GrabやGojekの配車アプリは、出発地と目的地だけでなく経由地をいくつか設定できる。予約時に目的地を追加していく形で、中継地を複数設定可能だ。配車アプリの場合、路上で客待ち待機ができないため、ピックアップポイントが指定される場合があるが、中継地や目的地は任意の地点を指定できる。
今回、ジャカルタ市内のEV充電ステーションを2か所ほど取材のため周ったときに、この機能を使った。滞在ホテルを起点に、検索した充電ステーションをいくつか設定し、最終的にホテルに戻るルートを設定する。
中継地点で長時間待機をお願いする場合は、事前に待機料金や追加のチップなど確認をとる必要がある。また、中継地点は短時間でも車両が止められる場所を選ばなければならない。あるいはドライバーに待機できる場所を探してもらう。
ジャカルタ市内の道路は、あまり徒歩での移動が考えられていない。中央分離帯がある片側2車線の道路も多く、歩行者用の横断歩道も少ない。道路の反対側に移動するだけでも大変なのである。また、歩道があっても整備がされていない、屋台が並んでいて歩道を歩けないといった状態もある。ちょっとした移動でもタクシー(や乗り合いバイク)になる所以だ。
中継地設定で出張の機動力をアップ
今回の出張は、往復ともにタイ・バンコク経由ジャカルタの便を利用した。帰国便は待ち時間が長かったので、市内に食事と買い物にでた。このときもGrabを使ったのだが、バンコクのGrabは昨年よりもEV率が上がっていた。3回利用したうち、とくに車種指定をしなかったのに2回がAION『Y』(GAC)だった。

じつは、このとき荷物をショッピングモールのカフェに置いてきてしまった。空港に戻ったときに気が付いた。まだ時間があったので、急遽Grabで空港とモールの往復を手配。片道ずつ手配してもよかったのだが、渋滞などがあるとモールからの予約に時間がかかる可能性もある。1回の手配で済ませられれば、そのほうが便利と考えた。
忘れ物は無事回収できた。往復の時間は約40分。便の搭乗開始時刻より前に空港にもどることができた。海外では、配車アプリをうまく使うことで、移動の機動力を上げることができると、あらためて感じた。
