エンジン車原理主義の自分が峠道で笑った。「EVって、こんなに気持ちいいのか」

日産リーフ
日産リーフ全 10 枚

MT車の運転が楽しい。峠やワインディングのドライブが趣味、という車好きは少なくないだろう。筆者もその一人だ。だが、今はそんな車好きこそEVがおススメだと思っている。

【画像全10枚】

もちろん、個人の感想なので万人に理解してもらおうとは思っていない。エンジン車以外は車ではないという人がいてもよいと思う。だが運転好き、車好きなら、パワートレインの違いでEVを否定するのはもったいないとも思う。


◆最初のEVはレンタカー

筆者がEVを欲しい、購入しようと思ったきっかけは、車とは関係ないHEMS(PV+パワコン)の取材で沖縄に行ったときだ。2012年の夏だったと思うのだが、現地の移動にレンタカーを予約していた。日帰りだったので料金の安い軽自動車を予約していたのだが、日産が初代『リーフ』を発売した直後ということで、店頭で「軽を予約されていますが、いまなら同じ値段で電気自動車を提供できますが?」と聞かれた。

移動は那覇空港から北に30kmちょっと、嘉手納基地のあるあたりだ。初代リーフでも無充電で往復できる距離だったし、充電カードと充電器の地図も用意されていた。さらにガソリン車と違い途中充電は無料、返却時も満充電で返す必要もないという。それならば試しにEVに乗るのもいいと思い、リーフを借りることにした。

操作方法を簡単に教わり市内へと走り出すと、まず最初に感じたのはEVの「アクセルのつきの良さ」だった。馬力のない車だと、アクセル操作と実際にトルクが発生して加速が始まるまでのタイムラグが多くなる。通常のアクセル操作でも遅れる反応を見越した操作が必要となる。しかしEVにはそれがない。「ない」というのはもちろん比較論だが、足の動きに素早くトルクが反応してくれる感覚だ(古い人は、これをアクセルのつきがいい、などと表現する)。市街地のなにげない運転でもレスポンスの良さが感じられた。

このときはe-PedalはOFFだったと思う。借りるときに「慣れないうちはONにしないほうが運転しやすいです」とアドバイスを受けていたからだ。だが回生ブレーキのおかげでアクセルオフでも減速されスピードコントロールがしやすい。エンジン車でいえば低いギアでエンジンブレーキで車速をコントロールするようなイメージだ。年齢的にもMT車の期間が長かったのでエンジンブレーキのようにアクセルオフで減速Gが得られるのは安心感もある。

街中の移動だったため、低重心の恩恵はあまり感じることはなかったが、トルクフルかつアクセルのみで(一定の)速度制御ができるEVは非常に運転しやすく爽快なもので、騒音と振動が少なくカーオーディオも楽しめるし運転が疲れないのもよかった。

◆乗ればわかる「EVアリかも」

当時の充電インフラの状況を考えても「EVアリかも」と思うようになった。所有はともかく、今後レンタカーはEV一択ではないかとさえ思った。実際その後、出張や旅行でのレンタカーやシェアカーはまずEVを探すようにしている。いまのところ国内のEVレンタカーは、車両に充電カードが用意され返却時の充電も不要とするところが多い。これだけでもレンタカーの運用コストを下げられる。海外では充電は別料金と言うところが多いがEVに慣れるとあまり障害にはならない。実際、出張や海外旅行でもEVをレンタル利用している。

筆者の場合、EVのアクセルレスポンスや動力性能に惚れたわけだが、それは普段乗っている車が相当非力・低性能なだけではないか、と思うかもしれない。否定はしないが、当時自分名義で所有していた車はGDBスバル『インプレッサ』だ。趣味でラリーやダートトライアルをやっていた関係で、三菱『ランサーエボリューション』や「インプレッサSpec C」などをずっと乗り継いでいた。要はそれらに匹敵もしくはそれ以上のインプレッションをEVに感じたから(主にモータートルクの過渡性能だが)に他ならない。自分の中では、沖縄でリーフを借りた時点で、次に買う車はEVにしようと決めていた。

日産サクラ日産サクラ

◆最終的な決め手はボディサイズ

しかし現実はそう簡単ではなかった。家の駐車場の奥行が短くて初代リーフ(全長4.445m)でギリギリ。そこには国産コンパクトカー(日産『キューブ』)が入り、インプレッサは近所に駐車場を借りていた。EV購入の前提として、自宅充電を考えたかったのでキューブの代替となる。今の車が壊れたわけでもないので買い替えの必要はないと、なかなか家族の同意を得ることができなかった。

結局、キューブをEVに買い換えたのは日産『サクラ』の発売時(2022年)だ。サクラに決めた(というか家族が納得した)理由は、ひとえにそのボディサイズにある。軽自動車まで小さくする必要はなかったが、キューブやノートのサイズのEVは日本国内では『ホンダe』、フィアット『500e』、プジョー『e208』、三菱『ミニキャブMiEV』くらいしかなかった。

ホンダeや欧州車は価格で難色を示された。全長が少し伸びた現行リーフでもうちの駐車スペースでは微妙だった。自分は「入った」と主張したが、家族は「門がしまらない、壁に近すぎる」という理由で却下だった。リーフでその状態だとBYD『ドルフィン』も微妙だった。

日産サクラ日産サクラ

◆なぜ車好きはEVに向いているのか

次期車両はEVと決めたあとは、車の買い替えタイミングをみながら家族の同意を模索していた。実際購入するとなる車種は限られる。多様な選択肢がない。

しかし幸いなことに仕事柄、前述の車両をはじめ、30kWhリーフ、40kWhリーフ、メルセデスベンツ、アウディ、BMW、テスラ、BYD、ヒョンデなど、取材、広報車レビュー、ディーラーの試乗キャンペーンなど含めてさまざまなEVに乗ることができた。小型トラックである三菱ふそう『eキャンター』は、2017年のプロトタイプから試乗しており、市販モデルのレビュー・テストでは積載状態で任意のルートを150km以上走行し、経路充電の特性や使い勝手を調べたりもしている。

さまざまなEVに乗って改めて感じたのは、モータートルクの爽快さと静粛性によるストレスフリーなドライビングと、低重心が生み出す運動性能の高さだ。冒頭に車好きほどEVが合っていると述べたのはこの理由だ。車好きにもいろいろなタイプがあるが、運転して楽しいのは車が思ったとおりに反応してくれることだとしたら、EVはそれに応えてくれる。

チューニングの試行錯誤を楽しむという考えもあるが、運転を楽しみたいならEVで十分ではないのか? そう考えるようになった。事実EVの運転はどれも楽しいし快適である。サクラは軽自動車だが、家族旅行で荷物満載3名乗車でも高速道路や峠道でストレスを感じることはない。

自分はインプレッサなどをナンバー付き競技車両として所有していたが、バックの車庫入れでエンストするような(機械式センターデフ・強化LSD・強化クラッチなど)車であり、音と振動(強化エンジンマウント・競技用サスペンション)で、渋滞や高速道路はストレスでしかない。なんならエアコンレス車だ。こういう車を運用していると充電の手間などないに等しい。エアコンと静粛性、乗り心地など快適環境と運動性能が手に入るなら十分に相殺可能だ。万人向けでないということかもしれないが、その分EVは楽しい車だと思う。

ヒョンデ IONIQ 5ヒョンデ IONIQ 5

◆EV選択のポイントは?

最後にEVを選ぶときのポイントや注意点を整理しておく。筆者は現在サクラ1台で、家族の足から仕事までこなしている。EV運用に慣れていることもあり、遠征取材や宿泊を伴う旅行でもとくに不便を感じることはないが、バッテリー容量が20~30kWhのEVはセカンドカー的な用途がいいだろう。1日の移動距離が100km前後、買い物や送迎メインのセカンドカーならEVを自宅充電で運用したほうが経済的だ。

小さい子供がいてドライブや旅行によく車を使うなら、50kWh以上、航続距離で300km以上のEVがいいだろう。航続距離が300~500kmあるとバッテリー残量が20%くらいになってもまだ50~100km近く走ることができる。そこから充電場所を考えてもなんとかなる残量だ。サクラクラスだと長距離移動の場合、おおまかな充電ポイントをイメージしておく必要があるが、テスラ各車、ヒョンデ『IONIQ 5』、メルセデスベンツ各車あたりになると、必要になってから充電ポイントを探すという運用が十分可能だ。この差は大きい。

EVは季節ごとの電費の変動がある。リーフは歴史的にバッテリーマネジメントシステムで温度制御ができないので夏冬でどうしても効率が落ちる。近年のEVは改善されている(サクラは夏場に急速充電を繰り返しても熱ダレしない)が、購入時にバッテリーマネジメントシステムの温度制御の有無については確認しておきたい。バッテリーのプレコンディショニング機能(充電前の加温機能)があれば、さらに変動は小さくなる。車種ごとのばらつきがまだ大きい市場なので、分からない場合は冬場/寒冷地はカタログ値の3割減くらいで考えておけばいい。

充電と給油は、目的は似ているがまったく異なるものという認識も必要だ。どちらが便利か不便かという話でもない。充電は面倒だが、自宅でできればわざわざガソリンスタンド行く必要がない。高速道路で充電待ちはあるかもしれないが、年末や災害時、値上げごとに発生する給油行列とも無縁だ。

バッテリーの劣化やリセール価格、修理代が気になる人もいるだろう。だが経年で劣化するのはエンジンも同様だ。好きな車、ほしい車よりリセール価格を気にするのは業者か転売ヤーだ。あたりどころが悪ければ実質廃車になるのは、バッテリーだろうがフレーム・エンジンだろうが関係ない、このような切替えができない人は無理してEVを買う必要はないと考える。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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