【スズキ フロンクス 新型試乗】価格差わずか20万円、FWDかAWDか、悩ましい選択だ…中村孝仁

スズキ フロンクス AWD
スズキ フロンクス AWD全 37 枚

スズキ『フロンクス』を、およそ3週間にわたって試した。先にAWD車を、後からFWD車に乗った。

【画像全37枚】

具体的にどちらがお勧めかと聞かれると、答えに窮する。というのもこの2台、オプションを込みにした車両価格がAWDは292万3140円(車両本体は273万9000円)と、FWDが272万5140円(車両本体は254万1000円)。僅か19万8000円の差でしかないからである。

その昔、乗用4WDという概念がアウディによって開かれて、日本国内の各メーカーも、乗用4WDの開発に勤しんだ。当初は1輪あたり10万円高なら許せるね…という考えが主流。つまり2輪駆動に対して40万円高なら許容範囲というものだった。それが今や4輪でプラス20万円を切るのだから、1輪あたりは5万円以下ということになる。まあ、40年も経てばこうなるということなのだろう。

◆AWDの恩恵と、FWDの優位性

スズキ フロンクス AWDスズキ フロンクス AWD

AWDは例えば雨の日でも安心感が高く、ましてや滑りやすい雪となれば、タイヤさえ適正なら高い走破能力を誇る。だからとりわけ雪国ならプラス20万円以下で4WD性能が手に入るとなると、多くはそちらをチョイスすると思う。

一方で1年の大半をドライ路面で過ごせる土地柄では、AWDの恩恵は少なく、フリクションの大きさや燃費の悪さなどで、FWDが優勢だと感じる。事実両車をおよそ250~300kmずつ走らせた結果、AWDの平均燃費14.2km/リットルに対し、FWDの方は16.6km/リットルと顕著に有利であった。

また、重量差60kgと、後輪を回すために必要なパーツによるフリクションもあって、どうしても走り全体がFWDに比べると、キビキビ感が薄れてしまう。パワー差が顕著に表れるのは発進時。

スズキ フロンクス FWDスズキ フロンクス FWD

AWD車を流れに乗って発進させようとすると、かなりもっさりとした印象が否めず、私のようなせっかち人間はついつい余計にアクセルを踏み込んで、それが燃費を悪化させる一つの原因になるのだが、FWDの場合はそのもっさり感はほぼ皆無に等しく、AWDだとついついスポーツモードを使いたくなるところを、特に我慢もせずにノーマルモードですいすいと行ける。正直この部分、つまり発進加速の差は大きい。また、スポーツモードを使うとアイドリングストップをしなくなってしまうから、ここでもまた燃費のロスになる。

ハンドリングに関しては取りたててフリクションを感じることはない。いわゆるビスカスカップリング式の4WDだから、ほとんどの場合ドライ路面ならFWDで走る。だから一般走行においてはハンドリングに大きな差がないわけだ。リアに多少重量物があって、車重が60kg重いAWDの方がどっしり安定した乗り心地かと言うと、実は現実的にはそれほどでもない。確かにFWD車ではちょっとハードな突き上げを食らったような場合、その突き上げ感がAWDよりもきついが、取り立てて大きな差というわけではない。

◆一瞥でフロンクスとわかるところがいい

スズキ フロンクス AWDスズキ フロンクス AWD

自動車を評価するのに、1時間ほどの試乗会ですべてを網羅するのは神様でないとあり得ない。で、じっくりと使ってみると、良い面も不都合な面も見えてくる。

両車を一週間以上使ってみて感じたことは、やっぱりウィンカーはレバーを軽くタッチすると3回ないし5回ウィンクしてくれる方がいいよなぁ…ということ。軽い車線変更や、あるいは斜め方向に出る首都高の降り口のようなところでは、カチッとウィンカーレバーを作動させないで、曲がりたい方向にレバーを傾ければそれでウィンクして来れる方が楽。でもフロンクスにはその機能がない。毎日使ってみるとそれが痛感される。スズキは他車でもこの機構を採用していないから、何らかの理由があるのだと思うが、毎回エンジニアにお話をしても、依然として付けてくれないから、わけがあるに違いない。

もう一つ感じたことは、今回スズキは初めてシャークフィンタイプのアンテナを装備したそうだが、実は感度がよろしくない。他のクルマではまず普通にラジオを受信できるところでかなり雑音が入ったり、時には聞こえなくなったりする。そんな小さなネガはあるものの、このクルマはコスパが非常に高いと思う。

スズキ フロンクス FWDスズキ フロンクス FWD

冒頭に掲げた値段も、オプション設定されているのは、特別色の外装、フロアマット、ETC車載器、ドライブレコーダー、それに、テレビアンテナの合計18万4140円。つまり、車両価格にはナビは言うに及ばず、主要なADASの安全装備やACCなどすべて込々。おまけにテレビまで…。文句なしにお買い得感満載である。

そしてこのクルマの良いところは、そのセグメントにおける収まり感が非常に良いと感じるところである。ちょっとスタイリッシュなクーペ風SUVだと、コンパクトモデルのくせにお高く留まって…的な反感を買いそうだが、実はそう見えない。ちゃんとBセグらしくしている(個人的意見である)。そしてノーズがかなり高めで、モールの駐車場などに止めていても、存在感を発揮して一瞥でフロンクスとわかるところがいい。

まあ冒頭述べた通りFWDにするかAWDにするかは悩ましい選択だ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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