「スピーカーはいいのに音が決まらない」:その原因、クロスオーバーかもしれない[カーオーディオ・素朴な疑問…DSP編]

「単体DSP」が搭載されたオーディオカーの一例(製作ショップ:レジェーラ<静岡県>)。
「単体DSP」が搭載されたオーディオカーの一例(製作ショップ:レジェーラ<静岡県>)。全 4 枚

愛車のサウンドシステムのアップグレードに多少なりとも関心を抱いているドライバーは、少なくないに違いない。しかし、その思いを実行に移そうとするときに“分かりづらさ”が壁となる……。当連載はその払拭を目指して展開している。

◆「クロスオーバー」とは「再生範囲の割り振りを決める」機能!

現在は、「DSP」に関する“分かりづらい”事柄を解説している。で、これまではこれが何か、どんなタイプがあるのか、そしてシステムへの組み込み方までを説明してきた。それに引き続いて今回からは、これに搭載されている機能の内容を解説していく。

さて、本格的なDSPには以下の3つの機能が搭載されている。「クロスオーバー」「イコライザー」「タイムアライメント」、これらだ。今回はクロスオーバーの存在理由を深堀りする。

まずクロスオーバーとは、マルチウェイスピーカーに対して「再生範囲の割り振りを決める機能」だ。なおマルチウェイスピーカーとは、口径の異なるスピーカーユニットを用意してそれらによって全帯域をスムーズに鳴らし切ろうとするものだ。

カーではフロントスピーカーを市販品に換える場合に、「マルチウェイスピーカー」の1タイプである「セパレート2ウェイスピーカー」が選ばれることが多いが、それを鳴らすときに当機能が役に立つ。これを使えば、ツイーターとミッドウーファーに対して最適な「再生範囲の割り振り」を決められる。

「単体DSP」が搭載されたオーディオカーの一例(製作ショップ:レジェーラ<静岡県>)。「単体DSP」が搭載されたオーディオカーの一例(製作ショップ:レジェーラ<静岡県>)。

◆付属の「パッシブ」もスピーカーの一部。しかしそれを敢えて使わないのが主流!

ところで市販のセパレート2ウェイスピーカーには基本的に、「パッシブクロスオーバーネットワーク(以下、パッシブ)」なるパーツが付属している。これもまさしく、ツイーターとミッドウーファーに対して「再生範囲の割り振りを決める」ためのパーツだ。

なお各スピーカーメーカーは、スピーカーの開発においてこのパッシブの設計にも心血を注ぐ。なぜなら、パッシブも含めてスピーカーだからだ。設計・開発するツイーターとミッドウーファーの性能を十分に引き出すにはどのような「再生範囲の割り振り」を行うと良いのかも、メーカーは十二分に吟味している。

しかし、DSPを用いる場合にはこれまでも説明してきたように「マルチアンプシステム」が構築されることとなるので、パッシブは不要になる。マルチアンプシステムとは、プレーヤーの後段にて音楽信号の帯域分割を行いその上で各信号を個別に緻密に制御して、そして各信号を「パワーアンプ」の個別の出力にて増幅するというシステム形態のことを指す。

「単体DSP」が搭載されたオーディオカーの一例(製作ショップ:レジェーラ<静岡県>)。「単体DSP」が搭載されたオーディオカーの一例(製作ショップ:レジェーラ<静岡県>)。

◆クロスオーバーはマルチアンプシステム構築の必須機能! そして…

かくしてマルチアンプシステムを構築すると、信号を一層緻密にコントロールでき、スピーカーの駆動力も上げられる。そしてそのような利点を得るには、プレーヤーの後段で最初に「信号の割り振り」を行う必要があり、クロスオーバーを使えばそれを実行可能となるのだ。

ところで実は、クロスオーバーが必要である理由がもう1つ存在している。それは、「取り付け状況に応じた最適な再生範囲の割り振りを決めたいから」だ。

カー用のスピーカーは、メーカーが設計を行ったのと同様のコンディションで鳴らされることはまずない。取り付け状況は都度異なる。そうなると「再生範囲の割り振り」も都度見直すべきだ。DSPを導入すれば、それを行える。

今回は以上だ。次回はクロスオーバーについてさらに詳しく説明していく。乞うご期待。

《太田祥三》

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