かつて日本に二輪車メーカーが380社以上あった!! 戦後に誕生して、そのほとんどが姿を消した二輪車メーカーについて調査した『日本の二輪車図鑑 1945年(昭和20年)- 1965年(昭和40年)』が三樹書房から発行された。
編著者の筒井幸彦は当時の雑誌などの資料をデータ化して分析を続け、本書でその成果を図鑑形式でまとめ、4130枚余の二輪車の写真とともに紹介する。唯一無二の大著と言って言い過ぎではないだろう。三樹書房創立50周年記念出版。
日本の二輪車産業は1945年、敗戦の焼土の中でゼロから再スタートした。早くも17年後の1962年には輸出が20万台に達し、質・量ともに世界一の地位を占めるまでに急成長した。終戦からの約20年間は、全国に数多くの中小メーカーが乱立して熾烈な競争を繰り広げていたのだった。
当時の二輪車メーカー数に関しては、巻末で三樹書房の小林謙一社長が述べているように、「100社以上とか130社以上など大まかな数字で語られていたが、20年ほど前にホンダコレクションホールの人が調べた1950年代の二輪車メーカー数は278社だったから、本書はその数を大幅に超える」。
編著者は企画の理由について「激動のこの20年間について、資料が散逸しないうちに整理して記録化しておきたいと思った」と述べている。乱立した日本の二輪車メーカーは、その後1965年頃までにホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4社に淘汰される。
小林社長によると「二輪車メーカーの中には“5台(五大)メーカー”と呼ばれ、ほんの僅かな台数しか生産できなかった会社もある」。しかし、「多くのメーカーが有志によって誕生し、欧米を上回る様々な機種を世に送り出した史実は、今につながる日本のモノづくりの一片を物語っている」と言う。
メーカーの掲載は会社名の五十音順とし、各社別に排気量クラスで分けて年式順が基本となっている。仕様と型式認定番号も判明した範囲で記載されている。また「検証の裏付資料として当時の広告は重要」(編著者)なので多めに掲載された。さらに特筆すべきは、荷物運搬に利用されたサイドカーのメーカー6社についても収録されていること。二輪車の発展経過と不可分な自動車運転免許制度の変遷経過も添えられている。

『日本の二輪車図鑑』
1945年(昭和20年)- 1965年(昭和40年)
編著者:筒井幸彦
発行:三樹書房
体裁:B5判・上製・600頁(カラー32頁)
定価:1万3200円(本体価格1万2000円+消費税)
発売:4月30日
目次
口絵 カラー史料でたどる懐旧の二輪車
巻頭言
出水力(前・東京大学大学院 経済学研究科客員教授)
小関和夫(自動車史考証家)
高山正之(ライター/元本田技研工業広報部)
序
戦後20年の二輪車の発展経緯
凡例
【あ】~【わ】【サイドカー】
車名索引