来たる6月23日、無料オンラインセミナー「AI時代における人材育成のあり方と自動車メーカーの取り組み…PwCコンサルティング／ホンダ／スズキ／マツダ」が開催される。本セミナーの第一部で講演するのは、PwCコンサルティング合同会社のディレクターで、教育部門のSME（Subject Matter Expert）として活躍する三城雄児氏。企業におけるこれからの人材育成のあり方について講演を行い、視聴者からの質問に答えるQ&Aセッションも予定されている。また、三城氏の講演の後には、第二部としてホンダ、スズキ、マツダの人材開発部門の責任者による講演が予定されている。
三城氏の講演は、以下の3つのテーマで構成される。
1. いま求められる企業教育・リスキリングのテーマ：水平的成長と垂直的成長
2. 垂直的成長をどのように企業研修に組み込むか：中長期の教育計画づくり
3. 垂直的成長のための具体的なプログラム事例：教育研修の設計（インストラクショナルデザイン）
本稿ではセミナー開催に先立ち、「垂直的成長」とは何か、そして今、なぜそれが重要なのかを中心に、三城氏へのインタビューを通して紹介する。
時代が求める垂直的成長
「人材育成には、“水平的成長”を促す教育と、“垂直的成長”につなげる教育の2つがあります」と三城氏は語る。たとえば、パソコンに新しいアプリケーションをインストールすると、作業の幅が広がる。同様に、人間も教育によって英語が話せるようになる、論理的思考ができるようになる、生成AIのプロンプトが書けるようになるなど、スキルの幅が広がっていく。これが水平的成長である。
一方で三城氏は、「これからの時代は、垂直的成長がますます重要になる」と強調する。垂直的成長とは、一言で言えば「人間力の成長」だ。同じ事象に接しても、人によって捉え方は異なる。垂直的成長は、物事を見る視点に“深さ”を与えるという。
「結果を出せない部下を『ダメな人材』と切り捨てる上司もいますが、一方で、その背景を理解し寄り添いながら変化を促す上司もいます。この違いを生むのはスキルやノウハウではなく、垂直的成長によって得られる洞察力や人間理解の深さなのです」と三城氏は述べる。
AI時代に必要な人間の感性
生成AIの進化により多くのタスクは自動化され、専門的なノウハウの提供もAIに“任せる”ことが可能になってきた。たとえば、事業計画を立てる際も、生成AIに情報を入力すれば高精度なアウトプットが得られるようになっている。
「今後は、過去の経験から生まれる“想い”やビジネスに込めた意義など、“人間にしかできないインプット”がますます重要になります」と三城氏は語る。AI時代のビジネスでは、論理的思考ではなく“感性”が差別化の要になる。
垂直的成長を促す教育とは
セミナーでは、三城氏がPwCコンサルティングで実際に行っている垂直的成長を促す教育プログラムの設計や実例も紹介される。
水平的成長のための教育は、スキルを洗い出し、それを適切なタイミングで提供することが基本となる。「身につける成長」である。一方、垂直的成長は「手放す成長」だと三城氏は語る。従来の思考や価値観を一度手放し、先入観を捨てて自己を見つめ直す。このプロセスの中心に据えられているのが“Self-awareness”（自己認識）である。
このプログラムでは、自己を深く内省し、自らを観察する「探求の場」としてのワークショップが織り込まれている。PwCコンサルティングでは、こうした垂直的成長を目指すプログラムと、従来の水平的成長を支える研修の両方を中期的な教育計画に組み込んでいるという。
組織も変わることが求められる
人材の垂直的成長を実現するには、マネジメントスタイルや人事制度など組織全体の変容も必要となる。
「現場のマネジメントのあり方や制度設計が変わらなければ、せっかくの教育効果が定着しません。組織カルチャーの変革も並行して進める必要があります」と三城氏は語る。PwCコンサルティングでは、全社員を対象としたセルフアウェアネスプログラムを通じて、社内に“共通言語”を浸透させる取り組みも行っている。
「心」が差別化要素になる時代へ
垂直的成長を重視した教育は、個人の能力開発にとどまらず企業全体の競争力強化にもつながる。多様な人材と協働しながら価値を創出する社会においては、こうした人間力の育成が不可欠になる。
セミナーでは、教育研修の設計思想「インストラクショナルデザイン」についても紹介される予定だ。既存の枠組みにとらわれず新たな視点で仕事というものを考え直すきっかけになるだろう。
これからのAI時代において、人間の「心」や「感性」がビジネスにおける新たな差別化要素になる。このセミナーは、それを実感できる貴重な機会となりそうだ。
当日のセミナーでは、これらの内容に関して三城氏からより詳細な説明が行われる。また、視聴者からの質問に答えるQ＆Aセッションも用意されている。
セミナーの開催概要、お申込みは下記ページよりご確認ください。
