世界に先駆けて、EV・PHV・FCVといった新エネルギー車「NEV(New Energy Vehicle)」の普及が進む中国では、EV整備に特化した教育や技術トレーニング分野においても抜きん出ている。
今回2度目の実施となった株式会社ジェイシーレゾナンス主催「中国自動車アフターマーケット視察ツアー」の企画のひとつとして、北京にある2つの研修機関を視察。世界各国のEV分解パーツのサンプル展示は実に壮観で、充実した教材と研修機器が揃い、EV整備教育の最先端を垣間見ることができた。
約13,000平米の広大な職業訓練校
北京郊外にある北方国際教育集団は、1993年に創設された自動車専門職業訓練校。約13,000平米という広大な敷地に、各種EVの分解パーツ展示や実習トレーニング用ブース、オンライン授業ブースなどを備える。オンラインとリアル双方をサポートする環境が整う国内有数のNEV対応専門学校として知られている。

教材の制作・販売にも注力
2014年から、別法人としてEV整備に特化した教材制作を開始。他の研修施設にも教材を販売し、中国・国内約100箇所で事業を展開している。2024年からはマレーシアと提携し、同国をはじめインドネシア、モンゴル、サウジアラビアなどからも研修生を受け入れ、これまでに10万人を超える卒業生を輩出した。視察時には多国籍の生徒たちが研修を受けている様子を見ることができた。



天吊り・壁面など圧巻のEV分解サンプル
とりわけ壮観だったのは、世界各国の自動車メーカーのEVを分解したサンプル展示だ。天吊りや壁面などにあらゆる分解パーツが展示され、中には部分的に稼働するものもあった。このほか、5Gを活用した車両遠隔運転のミニチュアモデルなどもあり、豊富な研修機材が揃う施設だった。








NEVの動力や充電システムを学べる
もう一つの研修機関は、EV整備の教材やテスターの販売メーカー・北京百科信機械設備有限公司が2014年から北京で展開するNEV対応トレーニングスクール。三階建てのビル内にはNEVバッテリーの教習用作業台が多数用意され、毎年1万人の卒業生を輩出している。
モーターやバッテリー・充電システムの研修だけでなく、教材の研究開発にも注力。中国・国内で受賞歴もあり、NEVだけでなく農機具の知見もある。





中国自動車メーカー・ジーリーとのつながり
中国の自動車メーカー・ジーリー社(吉利汽車控股有限公司)と関係が深く、同社のEV整備機器も製作。浙江省に拠点を構えるグループ会社では教育機関を有し、ジーリー社認定のバッテリー再生も手がけ、国際的な事業展開も行っている。



今回、中国・北京で視察した研修機関は、いずれもEV(NEV)に特化した整備教材の開発とともに、多くの生徒たちに研修を実施する大規模な事業を展開していた。
EV保有台数が約50%で4億台に近づいている中国では、EV整備の市場規模が非常に大きく、可能性のあるビジネス領域といえる。整備機器のみならず研修用の教材や教育システムなどが体系化され、独立系整備工場でもEV対応が進んでいく最新動向が見て取れた。EVの自動車アフターマーケットの最先端として、中国から学ぶべきことは多い。