「王者奪還に向けて万全の体制」三菱ラリーアート、2500kmを競うクロスカントリーラリーに向け意気込みを語る

「チーム三菱ラリーアート」の左から田口勝彦選手、小出一登選手、増岡浩総監督
「チーム三菱ラリーアート」の左から田口勝彦選手、小出一登選手、増岡浩総監督全 12 枚

今年30周年を迎えるASEAN最大規模のFIA公認クロスカントリーラリー「アジアクロスカントリーラリー(AXCR)」。その2025年大会が、8月8日~16日に開催される。3年ぶりの総合優勝をめざす三菱自動車の「チーム三菱ラリーアート」増岡浩総監督は、「王者奪還に向けて万全の体制」と意気込みを語る。

AXCRは1996年に初開催され、今年が30周年。アジア特有の荒れた路面や気候の中、山岳地帯やジャングル、海岸など刻一刻と変わる環境の中を約1週間かけて走り抜ける。毎年、通過国はもちろんコース設定も変わるため、クルマの走破性や耐久信頼性だけでなく、ドライバーやコドライバーのスキル、チームの総合力が試されるチャレンジングなイベントとなっている。

2025年はタイ国内のみがコースに設定されているが、総距離は昨年の2000kmから500km延長し2500kmに、日程も6日間から8日間へと延長され、ますます過酷さを増した。それだけにファンにとっては見どころの多いラリーとなること請け合いだ。

2025年 チーム三菱ラリーアート2025年 チーム三菱ラリーアート

そんなAXCRに、三菱はピックアップトラック『トライトン』の3台体制で参戦する。三菱が得意とする四輪制御技術や耐久性、信頼性を武器に、トライトンのメイン市場であるASEANを中心に三菱とラリーアートの存在感をアピールする。

ドライバーには、2022年大会で総合優勝を果たしたチャヤポン・ヨーター(タイ)選手を筆頭に、2024年大会で5位入賞した田口勝彦選手、初出場で完走を果たした三菱のテストドライバー小出一登選手を起用。さらにチームスタッフには三菱の開発エンジニアを起用し、過酷な環境での車両データを収集することで、車体やシャシー、エンジンなどの開発につなげるねらいだ。

参戦する2025年仕様のトライトンは、タイ向けの市販車をベースにエンジントルクの向上、競技用のトランスミッション、専用ダンパー、競技用ブレーキなどを採用するほか、大幅な軽量化を施した。2024年仕様からエンジンの耐久性向上や足回りの熟成などをおこない戦闘力を高めた。2024年は、チャヤポン選手が一時首位を走る活躍を見せたが、マシントラブルでリタイヤとなっていただけに、耐久性、信頼性の改良はマストとなっていた。

◆「3度目の正直を信じて優勝めざす」

「チーム三菱ラリーアート」の左から小出一登選手、増岡浩総監督、田口勝彦選手「チーム三菱ラリーアート」の左から小出一登選手、増岡浩総監督、田口勝彦選手

7月第一週、一部メディアに向けてチーム三菱ラリーアートとして参戦への意気込みが語られた。

増岡総監督は、「惜しい勝利を昨年は逃してしまって、悔しい思いをした。今年は限りあるチームの資源を3台に集中して、エースドライバーのチャヤポン選手と田口選手のツートップで優勝を狙って、チームの総合力を全て集中している。社員ドライバーの小出選手は今年2回目の参戦だが、この2台をクイックサポートとして、ラリーコースを走りながら何かあったらすぐ助けてというふうに、チームを勝利に導く。

昨年はかなり戦闘力を上げたが、エンジンもギリギリまで行って、ちょっと攻めすぎた感もあった。今年はそれをさらに耐久、信頼性を上げようということで、3週間前に実際に現地で耐久試験をおこない、今年はこれで十分いけるだろうという手応えをつかんできた。サスペンションの成熟と、軽量化できるところはさらに進めて、今年はもうある意味、万全な態勢で臨めると思っている。パリダカもそうだったが、(参戦)3年目で優勝と、今年は3度目の正直を信じてチーム一丸となって優勝を目指していきたい」と語っている。

昨年は5位完走という結果だった田口選手は、昨年の課題について「ミスコースが多かったこと」だったという。舞台となったタイは雨季・乾季があり、一年の中でも大きく環境が変わる。事前にオーガナイザーから提供された地形と、レース当日の地形が全く違うということも珍しくない。そのため「コースの読み違い」がさまざまな場面で頻発したことで、タイムを大幅にロスしてしまった。これを極力減らすため、小出選手とともに昨年のコースを走り対策を練った。そうしたことで、GPSの精度の問題や、現地ドライバーが“道を読む”ためのノウハウなども明らかになった。「今年はいいポジションでいけるのではないかと思っている」と田口選手は話した。

2025年 チーム三菱ラリーアート2025年 チーム三菱ラリーアート

小出選手は、三菱社員ドライバーとして2年目の参戦となる。昨年は先代トライトンをベースとした車両で初参戦したが、空調が壊れ、脱水症状になるなどのトラブルに見舞われた。今年は新型をベースに、2台とは異なる市販車に近いオートマチックトランスミッションを採用したマシンで参戦する。「テストコースで非常に厳しい試験はしているつもりだが、こういったラリーの現場、極限状態でそのクルマを使ってどんなことが起こるか、データ収集をしっかりして、それをしっかり量産車にフィードバックする。そういった役割も担っての参戦となる」と小出選手は話す。

2回目の参戦に向けては、「(昨年は)非常に大きな緊張の中走ったが、やっぱり経験もなく、サポートする位置も田口選手よりもかなり下の方でサポートという形になってしまい、あまり望ましい形ではなかった。今年は、2回目ということで、昨年の経験もあるし、緊張もやや和らいでいるので、もう少しいい位置で走れるんじゃないかと思っている」と話した。

増岡総監督は、「ライバルチームも、トヨタさん、いすゞさん、フォードさん、みんな実力を発揮してくるので、我々のトライトンも特徴のハンドリング性能を活かして、ぜひ今回も王者奪還目指して行きたい」とまとめた。

AXCRの参戦模様については、三菱の特別サイトのほか、新たに立ち上げたラリーアートの公式SNS、X(旧Twitter)とインスタグラムで随時更新される予定だ。

「チーム三菱ラリーアート」の左から増岡浩総監督、田口勝彦選手、小出一登選手「チーム三菱ラリーアート」の左から増岡浩総監督、田口勝彦選手、小出一登選手

《宮崎壮人》

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