2000年代の『カーシアター』ブームを回顧する[車載用音響機材変遷史]

2007年に発売された、カロッツェリアからリリースされた最後の「AVメインユニット」、『AVH-P900DVA』。
2007年に発売された、カロッツェリアからリリースされた最後の「AVメインユニット」、『AVH-P900DVA』。全 3 枚

クルマ社会が成熟していく中で、車内での音楽の楽しまれ方も時代とともに変遷した。当連載では、その移り変わりを振り返っている。今回は、2000年代に起きた「カーシアター」のブームについて、その栄枯盛衰を回顧する。

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◆90年代に「5.1chサラウンド」が誕生し2000年代にはそれがクルマの中でも…

さて、前回までの記事にて触れてきたように、90年代に「カーオーディオ」が流行し、カー用のステレオ再生機器とそれを扱う技術とが進化する。

なお90年代までのカーエンタテインメントのメインは音楽だったが、2000年代に入ると映像コンテンツも楽しまれるようになる。そして2000年代の初頭より、カーシアターがブームを迎える。

ちなみに、このきっかけは90年代の中頃に起きている。その頃、映画において「5.1chサラウンド」と呼ばれる音声の出力システムが取り入れられたのだ。

そして2000年代に入る頃には、5.1chサラウンドはDVD作品にも採用されるようになり、であるならそれを家庭でも楽しみたいと考えるユーザーが増え、「ホームシアター」システムが一般家庭でも組まれるようになっていく。それがカーにも飛び火したのだ。

◆5.1chサラウンドに対応する「AVメインユニット」もさまざま登場!

なお5.1chサラウンドとは、音声を5cn+0.1chに分けて収録する方式のことを指す。5cnとは、センターch、フロントの左右ch、後方の左右サラウンドch、これらから成り、重低音が0.1chとカウントされた別chにて収録される。

で、5.1chサラウンドの再生が上手くいくと、映画等を臨場感の高いサウンドで楽しめる。例えば上空をヘリコプターが旋回するようなシーンでは、その動きをリアルに感じ取れるようになる。

こうして2000年代には、5.1chサラウンドに対応した再生機器(AVメインユニット)がいくつかリリースされ、それに対応するスピーカーシステムがクルマの中でも組まれるようになる。ダッシュボードの中央にセンタースピーカーが埋め込まれ、そしてサラウンドスピーカーがリアトレイやCピラーやDピラーにカスタムインストールされ「カーシアターシステム」が完成された。

◆カーシアターは一世を風靡し、しかしブームは次第に終焉へと向かう…

かくして、2000年代の前半から半ばにかけて、カーシアターは愛好家の間で大流行した。カーオーディオの専門誌にはカーシアターシステムを搭載した車両が多々登場し、全国各地で開催されていたカーサウンドコンテストでもカーシアター部門が設定され、5.1chサラウンドサウンドの再現性の高さが競われた。

しかし……。

この流行は2010年代に向かうにつれて次第に失速する。そうなった理由は主には2つが考えられる。1つは「運転中に映像コンテンツを楽しみにくいから」で、もう1つは「システム構築が大がかりになるから」だ。

というのもカーシアターはあくまでもドライバーのためのものだった。同乗者のためのものではなかったのだ。しかしドライバーは運転中にモニターを注視できない。そこに矛盾があったのだ。

そして機材を多く必要とし、それらのインストールにも手間がかかり出費がかさむ。結果、ブームは徐々に終演へと向かい、2000年代の終盤には「AVメインユニット」の新作の発売も潰えた……。

今回は以上だ。次回は200年代に起こった別の新たな潮流について説明していく。お楽しみに。

《太田祥三》

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