スズキ『スペーシア・ギア』、ホンダ『N-BOX JOY』、さらには三菱『デリカ・ミニ』と並ぶクロスオーバー仕立てのモデルがこのダイハツ『タント・ファンクロス』。この7月にはADAS関連の機能を充実させた特別仕様車の“Limited”がリリースされた。
◆アウトドアシーンに馴染む適度な堅牢さ

試乗車はそのベース車となる、通常モデル。パワートレインはNAエンジン+CVTで、155/65R14タイヤを装着。車両本体価格は180万9500円というクルマだった。
レイクブルーメタリックのボディ色はなかなかさわやか系の色で、さり気なく個性もあり、ガンメタのアルミホイールとのマッチングもよく好感がもてた。
顔回りを中心としたディテールはクロスオーバー系の定番といえるデザイン処理で、アウトドアシーンに馴染む適度に堅牢な雰囲気。けれどいかにもゴツといた風ではなく、眺めていてもすんなりと目に入ってくる……そんな印象だ。
◆大開口のミラクルオープンドアはやっぱり魅力

一方でインテリアはベースのタントに準じた、すこぶる機能的な作りなのが魅力だ……とその前に、何といってもタントの売りである左側のミラクルオープンドアの使い勝手がいい。理屈抜きの大開口になり、撮影の合間に我が家のシュンもまるで縁側で寛いで庭を眺めているように(!?)その開放感に浸っていた。
改めて構造を見てみると、前席ドアは上限2組のラッチ&ストライカーでボディと結合する仕組みで、閉じ音もよく聞くと微妙な“和音”になって聞こえる。スライドドア部のラッチ&ストライカーはボディ後方にある。

昔、こんな色と柄のレカロシートがあったよなぁ……とも思わせる表皮のシートは、アレンジの多彩さがが実に有効。オプションで540mmという運転席の超ロングスライドもあるが、後席のスライド(240mm・左右独立)とリクライニングもさまざまな使い方を可能とする。ラゲッジボード、シートバック背面が防水加工になっている点もありがたい。
◆走り出せばサラッと、不思議とパワー不足は感じない
走りはサラッとしている。試乗車はノンターボのFFモデルだったが、このクルマの場合、だからといってパワー不足を感じさせることが不思議とない。日常的な街中や幹線道路、高速走行まで、走り出せばあとはエンジンの出力とCVTの制御に任せて思いどおりに走らせていられる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。