2022年に登場した4代目の日産『エクストレイル』のマイナーチェンジが発表された。そこで注目たのが追加された新グレード「NISMO」だ。

NISMOはニッサン・モータースポーツ・インターナショナルの略で、日産のレース部門のこと。近年もスーパーGTなどのレースを戦う。市販車ではNOTE NISMOやMARCH NISMOなど、既存車種のスポーティグレードとして展開が増えている。そこで今回エクストレイルに「NISMO」グレードが追加となった。
◆専用エクステリアで空力までコントロール、NISMOらしいスタイリングに

大きな変更点は見た目の外装パーツの違いと、専用サスペンション、専用チューニングが施された駆動力制御技術、装着されるタイヤとホイールの変更などとなる。

外装パーツはスポーティグレードらしく積極的にダウンフォースを狙っているのが特徴。専用ぱーつとして、フロントバンパーロアフィニッシャー、リアバンパーロアフィニッシャー、ドアロアフィニッシャー、リヤフォグランプフィニッシャーなどを採用。

いずれもフロア下に流れる走行風を整流し、cd値は基準車と同等を保ちながら、ダウンフォースは29%アップとなっている。車高が高くフラフラ感を感じやすいSUVだけに、この空力的効果は期待できる。高速移動が多い人にとって有益なパーツとなる。もちろん、見た目にもNISMOらしいレッドをアクセントに使ったエアロパーツはスポーティな雰囲気を高める。人目でそれとわかる存在感を放つ。

内装はインストデコフィニッシャーとステアリングのレッドセンターマークでこちらもスポーティさを演出。ステアリング自体やインストステッチ、コンソールステッチ、ドアトリム、シートマテリアル、シートステッチ、インストフィニッシャーモールディングなどは専用カラーとすることでNISMOらしさを高めている。

そして「より速く、気持ち良く、安心して走れる車」がNISMOロードカーの目指すクルマづくり。そのために専用サスペンションと専用駆動力制御、専用VCM(アクセル操作や回生の制御)、パワステMAPがされているのが特徴。
サスペンションはカヤバ製のSwing Valve付きを日産として初採用。非着座バルブを採用することで、極微低速域の減衰力をレスポンスよく発生させることができるのが特徴だ。この極微低速域とは走行する速度のことではなくて、サスペンションが微妙にゆっくりと沈んだり伸びたりする時のこと。つまりは街乗りや高速道路の乗り心地に関わる部分。この領域でしっかりと減衰力が発生してサスペンションの動きをしっとりと動かすことで、上質な乗り心地につながる。

専用駆動力制御は「NISMO tuned e-4ORCE」と呼ばれるもの。GT-Rで培ったアテーサE-TSは、通常時はリア駆動だがリアタイヤがスリップすると瞬時に駆動力をフロントタイヤに伝えるもの。この伝統の技術を活用し「フロントタイヤに余裕をもたせた4WD」をもとにして高い設置性とトラクション性能を持たせているという。

そのあたりは発電用エンジンが作った電気によって4輪をモーターによって駆動しているからこそできる制御。モーターはこれまでのエンジンの制御するのに比べて遥かに細かくレスポンスも良く制御できる。そこで前後駆動配分をNISMO専用にチューニング。
ECOをベーシックとすれば、AUTOはアンダーステアが抑制、SPORTはアクセルで自在に向きを変えられるような制御になっている。モーター駆動とNISMOの技術があってこその味付けである。
◆NISMOらしい走行性能の高さを実感、思ったところを走れる爽快感

実際に乗ってみることができた。今回はテストコース内で最高100km/hの高速道路を想定した走行と、コーナリングを体感した。コーナリングは一般道などを想定したもので、決して限界走行のような走りではない。
走り出してまず感じるのは、極めてしなやかなサスペンションの動き。もともと4代目エクストレイルは上質な走りの評価が高かったが、カヤバ製サスペンションはさらに1段も2段も上。サスペンションは微妙に沈んだり伸びたりを繰り返している。とくに街乗りの領域では上下に振動しているような状態だが、その領域の動きをしっかりと抑えて減衰してくれる。無駄な動きをダンパーが抑えてくれるので乗り心地が良く、フラットに感じられる。
エンジンはモーター駆動らしく想像以上に気持ち良く伸びのある加速を持つ。制御をSPORTにするとステアリングの舵角に自然と曲がっていく。しかもその性能が高い。

背が高く重心も高いSUVだけに、山道のようなS字コーナーではやや思ったラインよりも膨らんでいくのが普通だが、そこでスイスイと曲がって行けてしまう。意のままに曲がるというフィーリング。これは正直ビックリするほどレベルが高い。ベース車のXに対してNISMOは106万7000円アップとなる。決して安くはないが、この走りの性能に106万円の価値は十分にある。