メルセデスベンツは8月29日、ドイツ・デュッセルドルフ工場の生産現場に自律型ロボット犬「アリス」を導入したと発表した。
【画像】メルセデスベンツが独デュッセルドルフ工場にロボット犬「アリス」導入
「アリス」は、圧縮空気漏れなどを検知し、早期修理を可能にすることで工場のエネルギー消費を大幅に削減している。
「アリス」はデュッセルドルフのバン工場におけるデジタル化戦略の一環。将来的には予知保全や物流において自律型ロボットシステムを活用し、従業員の日常業務を最適にサポートしてさらなる効率化を図る。ロボット犬に加えて、工場敷地内の空コンテナ計数を担当する自律型ドローンも導入され、従業員の時間のかかるルーティン作業を軽減する。特筆すべきは、両ロボットシステムが上位のクラウドアプリケーションに統合可能で、相互連携や将来的には他の工場のロボットとの協働も実現できることだ。
ロボット犬「アリス」は既にデュッセルドルフのメルセデスベンツ工場で幅広い業務を遂行しており、一部はAIの活用によってサポートされている。例えば、特定のシステムや機械のアナログ計器の定期点検を自動実行できる。データは記録され、可能な限り簡単に評価できる。さらに「アリス」は音響イメージングモジュールを搭載し、騒音異常を可視化・特定できる。これらは工場で高いエネルギー損失につながる圧縮空気漏れや、システム故障の前兆を示す可能性がある。
「アリス」の支援により、担当従業員は潜在的な漏れや欠陥により迅速に対応し、損害が発生する前に修理できる。これにより、このような漏れから生じるエネルギー損失の約60%を防止している。年間のエネルギーコスト削減額は6桁台に達する。さらに、ロボット犬の活用により、非生産時間中の的確な修理を通じて差し迫ったシステム故障を防止できる。
統合技術により「アリス」は正確かつ効率的に作業し、様々な業務や要求に柔軟に適応できる。例えば、ロボット犬は階段を登る能力に優れ、生産施設全体を完全に自律的に移動できる。その結果、将来的にはデュッセルドルフ工場で避難経路の点検や工場のデジタルツイン作成など、他の用途にも活用される可能性がある。
デュッセルドルフのメルセデスベンツ工場では、作業プロセスの最適化と従業員負担軽減のため、最新のドローン技術も導入されている。特殊ドローンの活用により、工場敷地内の空コンテナ計数をより効率的かつ正確に実施する予定だ。訓練されたAIソフトウェアの支援により、この技術は寸法、輪郭、形状に基づいて荷物運搬具を識別・計数できる。これは自動化と効率向上への重要な一歩であり、従業員がより多くの管理業務に集中できる余裕を生み出す。
デュッセルドルフのメルセデスベンツバン工場は、バンと商用車生産の重要拠点である。約32万5000平方mの生産エリアで、約5500人の従業員がメルセデスベンツ『スプリンター』と『eスプリンター』のパネルバンモデルを生産している。
同工場は地域最大の産業雇用主・企業の一つである。1999年にeスプリンターの生産を開始し、2023年には新世代eスプリンターの生産も開始した。長い伝統と最新技術により、同工場は自動車業界のパイオニアとなっている。