【ホンダ プレリュード 新型試乗】タイプRのシャシー技術で「剛性重視」の走りと思いきや…島崎七生人

ホンダ プレリュード 新型
ホンダ プレリュード 新型全 28 枚

ホンダ『プレリュード』というと、2代目が人気を博していた当時、筆者の身近なところでこのクルマのことを「プレリュ」と呼ぶ女子の友人がいた……などという昔話はさておき、FFスペシャルティカーの元祖といわれた同車も、初代から数えれば今年で実に47年となる。

【詳細画像】ホンダ プレリュード 新型の走行シーン

そんなプレリュードが、2001年の5代目終了から実に24年の空白を埋めるべく、遂に復活を果たした。

ホンダによれば、ターゲット層は若い人(=Gen-Z)だけでなく、ロイヤルカスタマー、昔プレリュードに乗っていた人や憧れていた人(=Gen-X)も含めているとのこと。訊けば「最初の企画はプレリュードを作ろうということではなかった。けれど元気でチャレンジングなホンダのイメージを取り戻すために、次の時代の先駆けになり、競合がなかなかないハイブリッドのスポーツモデルを……という役割から、そのクルマがプレリュードになった」(チーフエンジニア・車体設計・齋藤智史さん)という。

◆シンプルに仕上げられた「清涼感」

全長4515mm×全幅1880mm×全高1335mm、ホイールベース2605mm。白日の下で見る実車は、風に撫でられたようなスリークなスタイルがとにかく印象的。ここ最近でいえば現行『アコード』などもそうだが、基本のフォルム以外のディテール、グラフィックが最小限に留められ、とにかくシンプルに仕上げられた清涼感がいい。

スウッと後ろに向かって切れ長に伸び、そのままなだらかに傾斜するテールゲートのシルエットに合流するリヤクォーターウインドゥの処理も素直だ。前後のランプまわりの処理もあくまでもシンプル。ドアハンドルもフラッシュサーフェスのデザインを採用し、後部を指で押すとハンドルが迫り出す。ハッチバック式としたのはプレリュードでは初めてのことだ。

ボディカラーはムーンリットホワイト・パール(特別有料色)、フレームレッド、メテオロイドグレー・メタリック(有料色)、クリスタルブラック・パールの4色(とオンライン販売の白×黒ルーフ)の設定。基本中の基本といった取り揃えで、実車も“その通りの色のプレリュード”に見えるが、個人的には見かけて「おや!?」と思わせられるような、中間色的なミステリアスなカラーの用意があってもいいとも思う。

◆乗り込んで、ホッとさせられる上品なインテリア

他方でインテリアも、アコードなど、ここ最近のホンダ車の作風でまとめられ、実に居心地がいい。

水平基調のインパネ、Dシェイプと呼びつつもデザインが目に煩くないステアリングホイールやその向こうの素直な“弧”を描くメーターナセル、デザインに凝り過ぎずシンプルにまとまったセンターコンソールなど、乗り込んで、ホッとさせられる上品な雰囲気。

インパネ、センターコンソール、ドアアームレストなどは表皮素材が貼り込まれ、手で触れると感触が優しく、緊張感を解してくれる。空調関係など、物理ダイヤルが残されている点も好感がもてる。

また運転席の着座状態からフロントの左右フェンダーの形状が自然に視認でき、Aピラーの付け根も認識しやすい。なので車両感覚が掴みやすく、スポーティなドライビングだけでなく、(今回の試乗では未確認ながら)街中などでの日常的な取り回しでもストレスを感じずに済むはずだ。

◆走りは「剛性重視」と思いきや

一方で走らせてみると、気持よさが存分に味わえる颯爽と走るクルマだ……と感じた。

資料には“CIVIC TYPE Rシャシー技術の適用”とあり、ならば剛性重視のイメージか……と予測したのだが、実際にはクルマの挙動はごくしなやかで、非常に馴染みやすいものだった。もちろんステアリングも操舵フィールがスムースだが、切り込んでいく際、クルマがラインを乱さずより安定感を保ちつつさらに切り込んでいけるところには、アジャイルハンドリングアシストの効果の現れを実感した。

パワートレインは、2モーターハイブリッドシステムを採用しながらも、ホンダのe:HEVらしく、ハイブリッドを意識させない自然でキレのいいパフォーマンスを発揮してくれる。

ドライブモードはSPORT/GT(他モデルのノーマル相当)/COMFORTがあり、今回のプレリュードではさらに“S+ Shift”が用意され、各々のモードでこれが有効に。実際に試してみると、3つのモード各々の特性をベースに、ステップシフトやアクティブサウンドコントロールを駆使し、ダウンシフトではブリッピンッグも加えるなどし、クルマを走らせている実感が湧く制御と演出が入るのがわかった。

◆走りの楽しさと燃費のよさを両立

「歴代プレリュードも気持のいいパワートレイン、卓越したハンドリング、スタイルのよさで受け入れられていた。デートカーとして2人の特別のクルマとしても支持されていた」(前出・齋藤智史さん)

「楽しめる走りになっていて、モード燃費はシビックの24.6km/リットルに対して23.6km/リットル。普通に流れに乗って走れば20km/リットルくらい燃費も出せると思う」(チーフエンジニア・パワートレイン開発担当・齋藤吉晴さん)

話を聞いていると、開発エンジニアの、この新型プレリュードに対する思い入れの強さも伝わってきた。近く一般公道での試乗のチャンスがあるはずだが、今から楽しみにしていたい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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