フェラーリは9月9日、最新のオープントップスポーツカー『849テスタロッサ・スパイダー』を発表した。ベルリネッタ(クーペ)の「849テスタロッサ」と同時に発表された、リトラクタブルハードトップ(RHT)モデルだ。『SF90スパイダー』の後継となる。
849テスタロッサ・スパイダーは、ミッドシップに配置されたV8ツインターボエンジンと3基の電動モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドで、総出力は1050cvに達する。従来モデル比で50cv増となり、さらなる高性能を実現した。
●リトラクタブルハードトップ
リトラクタブルハードトップは、45km/hまで走行中でも14秒で開閉可能。さらに特許取得の新型ウィンドストップ装置により、オープン時の乱気流を抑制し快適性を高めた。これにより、クーペとスパイダーの魅力を併せ持つモデルとなっている。
空力性能の向上も特徴だ。250km/hで415kgのダウンフォースを発生し、冷却性能も15%向上。フロントアンダーフロアやリアスポイラーを含む設計は、過去のレーシングモデルからの着想を取り入れた。アクティブスポイラーは1秒未満で作動し、ロードラッグ(低抗力)モードとハイ(高)ダウンフォースモードを切り替えることが可能だ。
●2車形のデザインを並行して開発、一貫性と個性
デザインはフェラーリ・スタイリングセンターのフラビオ・マンゾーニ率いるチームが手がけた。航空工学や1970年代のスポーツプロトタイプから着想を得た造形は、彫刻的で未来的なフォルムだ。サイドインテークやダブルテール構造が存在感を強め、フロントは1980年代の幾何学的テーマを想起させる造形が採用されている。

ルーフを閉じた状態では、849テスタロッサ・ベルリネッタと同様のボリューム感を持ち、デザインチームが、スパイダーとベルリネッタを並行して開発し、2つの車形に一貫性を持たせたことがわかる。いっぽうオープン時のスパイダーは、後部セクションが象徴的で力強いフォルムが際立つ。ベルリネッタではルーフのシルエットと融合していたダブルテール構造が、スパイダーでは絶対的な主役となっている。
リアは『512S』から着想を得たデザインを取り入れ、アクティブウィングと一体化した空力ソリューションを採用。丸型マフラーを中心にワイド感を強調する造形が組み合わされ、ディフューザーとともにスポーティな印象を高めた。
●歴史的伝統と現代的技術を融合
インテリアはベルリネッタと基本的に同じだ。『F80』を想起させる“帆”をモチーフにしたウォールが、シングルシーター的なコックピットを演出し、機能性とデザイン性も両立する。浮遊感のある水平基調ダッシュボードや、C字型エアベント、シフトゲートデザインなどが特徴。空間効率も改善され、後席や助手席周りの居住性が向上している。
また、オプションとして「アセット・フィオラーノ」仕様が用意される。標準車にはない専用装備を備え、サーキット志向のユーザーに向けた仕立てだ。
車名は1950年代のレーシングエンジンの赤いシリンダーヘッド、「テスタロッサ」に由来。1980年代の象徴的ロードカーの車名にも用いられた。849テスタロッサは、フェラーリの歴史的伝統と現代技術とを融合させた存在として位置づけられる。