「小さなハヤブサ」と「小さなYZF-R1」が宿っている…同じ250ccスポーツでも全く違う!? スズキ『GSX250R』とヤマハ『YZF-R25』を乗り比べてみた

ヤマハ YZF-R25(左)とスズキ GSX250R(右)
ヤマハ YZF-R25(左)とスズキ GSX250R(右)全 44 枚

セパレートハンドルとフルカウルを備える同じ250cc、2気筒モデルながら、スズキ『GSX250R』とヤマハ『YZF-R25』は、エンジンの特性も得意とするステージも異なっている。それぞれ、どんな使い方にマッチしているのだろう。

【比較画像44枚】スズキ『GSX250R』とヤマハ『YZF-R25』

◆「GSX250R」と「YZF-R25」スペックの違いは

というわけで、まずは主なスペックの違いを記しておこう。これだけでも、2台は別々のキャラクターを持ち、真っ向勝負のモデルではないことがわかる。

●GSX250R/YZF-R25

・車重:181kg/169kg
・軸間距離:1430mm/1380mm
・シート高:790mm/780mm
・エンジン:水冷4ストロークSOHC2バルブ2気筒/水冷4ストロークDOHC4バルブ2気筒
・最高出力:24ps/8000rpm/35ps/12000rpm
・最大トルク:2.2kgf・m/6500rpm/2.3kgf・m/10000rpm
・フロントフォーク:正立/倒立
・燃費(WMTCモード):32.8km/リットル/26.5km/リットル
・価格:63万5800円~64万7900円/69万800円

ざっくり言えば、エンジンも車体もおおらかな「GSX250R」はスポーツツアラーのイメージに近く、シャープで軽く、エンジンが回る「YZF-R25」は、しっかりスーパースポーツ的である。

◆たかが「11ps」、されど「11ps」

車重は12kgの差があり、「GSX250R」の方が重い。ただし、これが案外気にならない。ハンドル位置が高くて、よく切れることと、重量を稼いでいるはずのエンジン搭載位置がさほど高くないため、取り回しは容易だ。車体の引き起こしに限っていえば、サイドスタンドが短い(=車体が傾く)「YZF-R25」の方が、最初の「よっこらしょ」の手応えが大きい。

もうひとつ、数値上の差が顕著な部分が最高出力と最大トルクだ。最高出力は11ps、発生回転数には4000rpmの開きがあり、最大トルク値自体は僅差ながらも、やはりその発生回転数は3500rpmも異なる。

100psと111psの間にある11psの差なら気にならないかもしれないが、24psと35psでは45%以上も違うわけで、加えて「GSX250R」は車重がそれなりにあり、ホイールベースも長い。

「スポーツツアラーのイメージ」と評したのは、鈍重という言葉のすりかえと勘繰られそうだが、さにあらず。この排気量なら、街中はもちろん、ちょっとした郊外でも、6000rpmも回せば十分こと足りるわけで、一般的な実用域にちょうど当てはまるのが、「GSX250R」ならではのロングストロークユニットなのだ。

◆エンジン特性の違いはハンドリングにも

そのトルクフルな特性と扱いやすさのおかげで、「GSX250R」に乗っていて極端なパワー不足を感じるライダーは、そう多くないはず。スロットル開け始めのレスポンスは小気味よく、必要十分以上の力量で車体を押し進めてくれる。

もっとも、低中回転域が力強くて、そのまま高回転域もがんがん使える、というほど都合よくはできていない。ここで入れ違いに魅力を発揮するのが「YZF-R25」のエンジンだ。「GSX250R」のタコメーターが10500rpmのレッドゾーンを迎えてもこちらは余裕しゃくしゃくで、そこからひと伸びどころか、ふた伸び以上の14000rpm超まできっちり回り切る。

低中回転域の余裕に勝る「GSX250R」と高回転域が爽快な「YZF-R25」という図式は、ハンドリングにも当てはまる。荷重がどうとか、サスペンションの動きが云々といった理屈は抜きに、車体へ身をゆだねたまま、のんびり流せるのが「GSX250R」だとしたら、これ以上は回転を下げないというパワーバンドを自分で設定し、バンクしている時間を長く楽しみたくなるのが「YZF-R25」である。

◆「小さなハヤブサ」と「小さなYZF-R1」が宿っている

目的地まで快適に移動し、その間の景色に重きを置けるのが「GSX250R」なら、ライディングそのものに没頭できるのが「YZF-R25」と言ってもよく、乗っている時の意識がそれぞれ異なる。

これはたとえば、「GSX250R」のステップには快適性に配慮した防振ラバーが備わっていることや燃費がいいこと(計算上は満タンで490km以上走行可能)、「YZF-R25」には高荷重を受け止める倒立フォークの採用やクイックシフターの設定(オプション)にも表れており、見た目は同じカテゴリーに見えても、目指している方向が違う。

もちろん、「GSX250R」でコーナリングを追求することもできるし、「YZF-R25」でロングツーリングを楽しむライダーも大勢いるが、両モデルの美点を引き延ばすと、既述のような評価になる。

「GSX250R」の中には「小さなハヤブサ」が、「YZF-R25」の中には「小さなYZF-R1」が宿っていて、ゆとりの時間を望むなら前者が、スポーツマインドを満たしたいなら後者がそれに応えてくれる。

両モデルを突き詰めたその先に、スズキとヤマハ、それぞれのメーカーが誇るフラッグシップが見えてくる、というのはさほど大げさな物言いではない。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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